障害者を理解する姿勢が自分の生き方を楽にするという考え方

私には疑問に思っていることがあります。それは、障害者との“距離”はどのようにすれば変わるのでしょうか。

皆さんは、障害者という存在をどのように認識しているでしょうか。大きく2通りのパターンで見たいと思います。

家族や友人など、近しいところに障害者が居る人にとっては「身近な存在」「関心のある存在」「自分と切り離せない存在」という感じでしょうか。逆に、ほとんど接することがなかった人にとっては「未知なる存在」「関わりのない存在」「想像できない存在」ではないでしょうか。

障害者が近しいと感じている人たちにとっての“存在感”は理解ができます。では、障害者が遠いと感じている人たちにとっての“存在感”はなぜこのように距離のあるような表現になるのでしょう。なぜ障害者が遠い存在だという人たちには理解されないことが多いのでしょうか。

ここで少し脱線して、私の特徴をお話しします。性格や特徴は、
a.「慌て者で、思い付きで動くことが多い」
b.「好きなことには時間を忘れて没頭しやすい」
c.「テレビやレコーダー、エアコンのリモコンが綺麗に並べてないと嫌」

これらのような特徴を見て、どうお感じになられましたか。皆さんの中には「自分もそうだ」とか「別に普通だな」と思われませんでしたか。私も人と違い大きく特異なところはないと思います。

次に、私は発達障害を持つ人達とお会いし、お話しをすると自分に共通するところがあると感じることがあります。例として発達障害の特徴を抜粋してみると、

  1. 「衝動的で落ち着きがない」
  2. 「人とのコミュニケーションが苦手」
  3. 「優先順位をつけることが苦手」
  4. 「集中して物事に取り組むことが得意」
  5. 「片付けが苦手」
  6. 「想像やイメージすることが苦手」
  7. 「こだわりが強い」

などです。この1~7の特徴のうち、私の特徴aには1、bには4、cには7が当てはまります。

発達障害の特徴を表現する際に挙げられる点は、一般的な人の特徴と比較すると大きく掛け離れていないことが分かります。一般的に考える範疇を大きく逸脱した行動や言動が目立つために周囲が理解に苦しんだり、そもそも理解をしないという行動から遠い距離を作り出しますが、実は一般的な人に見られる特徴の延長線上でしかありません。

精神障害や発達障害は身体障害と比べ、目に見えて明確な特徴がないために周囲は理解に苦しみます。周囲が理解できないために取る行動や言動が、障害を持つ人たちを苦しめます。これってすごい悪循環になっていると感じませんか。

新たに障害を持つ人材を採用し、職場に配属する際にその方の特徴や配慮の説明を周囲の従業員に向けた勉強会の実施を勧めています。これは、障害者本人が職場で長く働き、能力を最大限に発揮してもらうためには従業員の理解と協力が不可欠だからです。その一方で、この勉強会は配慮や協力をしていただく周囲の従業員のためでもあります。

一緒に働く上で、新しく配属される方がどのような人なのかを知っておくことは決しておかしなことではありません。その人が障害者であれば尚更ですが、雇用定着が上手く機能していない企業はこの点がしっかりと取り組めていないことが多いと感じます。お任せすることになる従業員のことをもう少ししっかりとサポートしてあげることが雇用定着の大切なポイントです。

但し、採用した方が精神障害や発達障害の場合はどのような勉強会にすればよいのかと頭を悩ませる担当者のお気持ちもよく分かります。この場合、実施する勉強会だけですべての理解や協力が職場で実施されると思わないことが重要です。

この時の勉強会では、まず難しすぎる内容にしないことです。専門的な用語を使用したり、学術的なことも必要ありません。参加される方が分かりやすく、興味のひかれる部分を説明する方が頭にも入りやすいです。その次に、障害者本人を表す特徴やそれに伴う配慮を説明することで十分です。詳細は説明しても構いませんが、参加者の頭に残らないでしょう。それ以降は、勉強会で説明を受けた配慮を実施しながら、「こういうことだったのか」と従業員個々で理解を深めていきます。例えば、「聴覚過敏」という特性のある障害者が配属されました。その人が入力業務に就いているときに周囲では電話応対をしているのですが、もしかするとその声が気になって集中できない可能性があります。そのような時は勉強会の内容をもとに本人に相談を持ち掛けることが良いかもしれません。「聴覚過敏」にも程度の差があり、電話応対の声が気にならない人であれば気にせずに業務に就くことができます。

この時に大切なのは、“〇〇かもしれない”と気にする点です。障害者への理解や配慮が最初から100%の形で実施できることが理想ですが、現実はそうではありません。雇用定着が機能している企業であっても、最初は手探りから徐々にピントを合わせていくのです。

皆さんの身近にも珍しい特徴や癖の強い人が居たりしませんでしょうか。もしかすると、本意とは違いその特徴や癖が原因で周囲との関りが出来ない人も多いと思います。自分がそうかもしれません。こう考えると障害の有無は関係ありませんよね。その人の特徴や癖が業務上の作業や日常生活に不便なのではないかと気にすることで心の渋滞が解消されることがあります。その“〇〇かもしれない”が周囲とつながる自分の生活を楽にしてくれると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (イルネス障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・採用コーディネート、また障害者人材を活用した事業に関するアドバイスを実施。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。講演のご依頼や雇用に関する相談は、当サイトお問い合わせからお願いします。