1つでも当てはまると見直しが必要な自社の障害者雇用[1/2]

皆さんは、自社が取り組んでいる障がい者採用や雇用がこれからの時代にマッチした方法でなかったと知ったらどう思うでしょうか。今現在、「障がい者法定雇用率が達成されている。」「雇用している障がい者の離職もほとんどない。」「ハローワークから定期的に採用している。」といった安心材料があれば、焦って障害者雇用の見直しをしなくていいと感じていることでしょう。

ご存知のように、20184月から「精神障がい者の雇用義務化」が施行され、それに伴い法定雇用率も現行の2.0%から2.2%(その後すぐに2.3%)へポイントがアップすることになっています。

既に、ここ数年で企業による障害者雇用が進んでおり、取り巻く環境が大きく変化してきました。おそらく、来年以降はこの変化の速度がもっと早くなっていくと思います。今の状態に安心できたとしても、あっという間に取り残されてしまうかもしれません。(ハローワークで取り扱う障がい者求人の特性比率が、この56年の間に精神障がい者が最も多くなりました)

採用担当者が求められる障がい者の採用や雇用は、これまでの“時代遅れの形”から“時代に適した形”へ変化させていてくことだと思いませんか。

今日は、自社で取り組んでいる障害者雇用がこれらにひとつでも当てはまるようであれば、早急に見直しをしないと手遅れになるかもしれない“時代遅れ”な5個の障害者雇用事例をお話しします。

① これまで身体障がい者の雇用しか経験したことがない

精神・発達障がい者の雇用数が伸びてきている現状にあっても、障害者雇用 = 身体障がい者という企業は非常に多いです。身体・知的・精神障がい者の全障がい特性を採用の対象としているのではなく、「身体障がい者しか採用の対象としていません。」という企業です。

障害者雇用が拡大していく将来、身体障がい者のみ採用をするということが実現できるのであれば良いのですが、よほどの理由がない限り継続して実施するのは非常に難しいでしょう。

かろうじて、身体障がい者の採用ができる今のうちに、知的・精神・発達のいずれかを持つ人材の採用を想定した準備に入ることをお勧めします。身体障がい者を希望する企業間の採用競争が激しいために、思うように雇用が進んでいないのが現状です。身体障がい者以外の採用へと徐々に舵を切っていくためには、今から障がい者に関する情報収集(他社の取組み、障がいの特性、適切な業種など)や専門機関との連携(身体障がい者以外の雇用定着にはより専門的な知識が必要)を取る準備を始めてください。

② 同一部署、同一業務のところに障がい者を配属している

現状、規模も大きくなく障がい者の採用人数(~10人)も抑えられている企業であれば大丈夫だと思います。また、製造や検品などの大人数よる大量生産・大量処理といった業種の場合も該当しないと考えます。

それ以外の業種・業態となる企業であれば、雇用数が一定数を超えてくると同一部署や同一業務だけで障がい者を抱えるのも限界がやってきます。確かに、これまでの実績として、ある程度の障がい者を雇用し、職場でも成果を上げているのであれば、敢えて他の部署や業務といった職域開拓をする必要性も感じられないのではないでしょうか。(協力を依頼する部署からは協力的な反応をもらえないと余計に頑張る気を失くしてしまいますし)でも、これからの障害者雇用環境をご存じなのであれば、限界値に到達してしまう前に新たな一手を講じていただきたいと思います。

このような同一部署だけで障害者雇用をしている企業に見られる特徴があります。一定数の障がい者を雇用している割には企業内の理解があまり進んでいないという点です。不思議なのですが、他の部署には障がい者がひとりも配属されていなかったり、障害者雇用に対する従業員の認識が低いと感じる時があります。協力的でないという感じです。

同一部署で雇用し続けた弊害ですが、障がい者と一緒に働いていない従業員にとっては、自社のことであっても障害者雇用は他人事と感じているからです。「自分には関係のないこと」なのです。

これまでもこのコラムでお話ししましたが、これからの時代、企業にとっての障害者雇用は軽減されることはなく、義務化がもっと厳しいものとなります。「法定雇用率の上昇」「精神・発達障がい者の雇用促進」「雇用企業の増加」はもちろん、もしかすると、罰則規定など今より厳格化されることも予想されます。

このようなことが想定されるため、企業における障害者雇用は人事部や決められた部署だけで進めるのではなく、会社全体で取組む必要があります。そのためには、従業員に対して障がい者の雇用定着に必要な理解と協力を得るための普及活動を実施していくことが求められます。

障害者雇用を上手く実現している企業は、こういった取組みにしっかりと時間と労力を割いているのです。

次回は、残りの3個の障害者雇用事例をご紹介します。

③ 社外にハローワーク以外で相談できる専門機関がない
10年近く新たな障がい者採用をしていない
⑤ 都心部での障がい者採用しか経験がない

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム