わかりやすく教える技術

障がいのある人に仕事を教える時、皆さんはどんな風に教えていますか?

また、その教え方は、相手にとってわかりやすく理解することができ、スムーズな業務遂行につながっているでしょうか?

私も、部下に仕事を教えたり、障がいのある人のサポート場面で教える・伝えることが仕事柄多いですが、「相手にわかりやすく伝わったか?」と言われると「もちろん!」とは言えず、いつも悩ましさと難しさを感じています。

でも、教え方にはコツがあると思っています。そのコツを知り、意識することでわかりやすく教えることができる…、はずです。今日は、そんなお話です。

わかりにくい教え方

まずは、わかりにくい教え方から考えてみましょう。

皆さんは、こんな風に教えていないでしょうか?

・教える人が手順を理解していない
・手順がころころ変わる
・人によって教え方が違う
・否定的な言葉が多く、褒めることが少ない
・たくさんの口頭指示で情報が多くなり、相手が混乱してしまっている

これらの教え方で一番問題なのは、「教える人が中心」で教えているということです。

「とりあえず教えないと…」と言った気持ちが先行してしまうと、情報整理することなく場当たり的に教えてしまい、たくさんの口頭指示が混乱を招いたり、後付けで情報を追加したりと結果的にわかりにくい指示になっていることが考えられます。

また、忙しさや慌ただしさ、情報整理の不十分さなどの状況が重なってしまうと教える対象者(相手)の立場に立って教えることが難しくなり、「雑な教え方」がわかりにくさの要因となっています。

相手にわかりやすく教えるには、それなりの準備が必要です。

準備に多くの時間を割くのは難しいかと思いますが、障がいのある人に教える場合には障がいゆえの理解のしづらさや働きづらさがあるため、担当業務における後々の独り立ちなどを考えると、それらを理解した上で事前準備をしてから教えたほうが効果的です。

わかりやすい教え方

次に、わかりやすい教え方についても考えてみましょう。

障がいのある人にわかりやすく教える場合、障がいの特性や理解力の度合い、情報の伝え方など一定の配慮をする中で教えていき、いずれは業務遂行能力や生産性の向上につなげていく必要があります。

その際、以下のことがポイントとして考えられます。

・言葉やジェスチャーに加え、視覚的な情報(実物、絵、イラスト、写真、動画など)を上手に組み合わせて教える
・教える側が業務マニュアルや業務手順を習得してから教える
・相手の理解度に合わせて教える
・障がいの特性を考慮し、教えるときの周囲環境も考える(例えば、聴覚過敏の方なら個室や静かな場所で教えるなど)
・相手が混乱しないよう情報は時系列にして伝え、ゆっくり教えていく(情報は、小出しにして伝えていく)
・言葉かけは必要最小限の具体的指示に限定する(ひとつの声かけにひとつの情報でシンプルに伝え、できるだけ具体的な情報を伝える)
・否定的な言葉は使わず、上手くできたらストレートに褒める(評価する)

ここでの注意点としては、「教える」側と「教わる」側では業務遂行上の必要な知識や経験に差異があるため、「教える」側のほうが優位になるということです。(障がいの有無にかかわらずですが…。)

ですので、教える側が教わる側の目線を意識し、教わる側の立場に立って教えることがとても大切となります。

最近は、インターネットやSNSなどの発展により、写真や動画を目にする機会が多くなっています。(調理レシピを動画で簡潔に紹介するサイトなんかもありますしね。便利な時代になりましたね。)

写真や動画といった視覚的な情報は、普段の日常生活で慣れ親しんでいることもあるため、「視覚的な情報を活用した教え方」は有効であるように思います。もちろん、業務マニュアルや取り扱い説明書のような詳細な文字情報も必要ではありますが、視覚情報のほうが具体的にイメージしやすく、視覚で端的に情報を得ることで業務の進め方やゴールなどに見通しが持て、詳細な文字情報への理解もよりスムーズになります。

私の職場であるジョブジョイントおおさか(自閉症や発達障がいのある人の就職支援の事業所)でも、業務を教えるときに「ipad」を活用していて、写真や動画をできるだけ多く活用して業務手順を伝えています。そうすることで視覚的に理解できて分かりやすくなり、結果的に業務のパフォーマンスも上がっていると感じています。

わかりやすく教えるには、コツがあります。

そのコツのひとつは、「視覚的に教える」ということ。

教える前に、少しだけでも時間を取り、教えるための準備(情報を写真や動画といった視覚的なもので情報を整理する、時系列にまとめるなど)をすることで、相手にとってのわかりやすさが増すと思います。

わかりやすく教えることは、ただ単位に指示通り業務を理解して担当業務の独り立ちを目指すだけでなく、「わかりやすさ=信頼関係」でもあるため、わかりやすく教えることで人材が育ち、信頼関係の構築による組織力の向上にもつながるように思います。

まずは、教えられる側(相手)の立場に立って、教えてみてはいかがでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

▼プロフィール:
京都生まれ京都育ち。児童福祉の専門学校を卒業後、長野市にある社会福祉法人森と木で障害のある人の就労支援(企業就労の支援、飲食店での支援と運営管理等)に限らず、生活面(グループホーム、ガイドヘルプ等)の支援、学齢期のお子さんの支援などに従事。2013年に帰阪し、自閉症・発達障害の方を対象に企業就労に向けたトレーニングをする2つの事業所ジョブジョイントおおさか(就労移行支援事業・自立訓練事業を大阪市と高槻市で実施運営)にて勤務。2014年より所長(現職)。また、発達障害のある大学生に向けた就活支援プログラム(働くチカラPROJECT)の運営にも力を入れており、2016年より大阪にある大学2校のコンサルタントも務めている。

▼主な資格:
社会福祉士、保育士、訪問型職場適応援助者(ジョブコーチ)

▼主な略歴:
長野市地域自立支援協議会 就労支援部会 部会長(2011〜2013)淀川区地域自立支援協議会 就労支援部会 副部会長(2015〜)高槻市地域自立支援協議会 進路・就労ワーキング 委員(2016〜)日本職業リハビリテーション学会 近畿ブロック代表理事(2017〜)NPO法人ジョブコーチネットワーク、NPO法人自閉症eサービスが主催する研修・セミナー等での講師・トレーナー・コンサルタント等(2013〜)