人事担当者が気になる今後の障害者法定雇用率はどうなるの?[1/2]

人事担当者の皆さんは、「障害者法定雇用率はどこまで引き上げられるのだろう。」と一度は考えたことがあると思います。確かに、何%が着地点で、それはいつ頃になるのでしょうか。

法律として障害者の雇用が義務化され、先ずは身体障害者の雇用を前提とした雇用率が定められたのが1976年のことで、当時の法定雇用率は1.5%という数値からのスタートでした。今から40年以上も前に設けられた雇用率ですが、その数値と比較してみると、2018年度の2.2%で言えば1.0%にも満たない0.7%の上昇にしかなりません。良いか悪いかというよりも、実際の数字を見た時に毎年、前年比増といっている割には、全体的にはそんなに伸びていないんだなというのが率直な感想でした。国は障害者雇用数が14年連続増加と言っていますが、企業がもっとメリットを感じるだけの施策を実行してもらいたいと思います。罰金を科すだけでは良い施策とは言えませんから。

ご存知のように、2018年度から障害者法定雇用率が2.0%から2.2%へと引き上げられることになっていますが、その後の雇用率はどうなっていくのでしょうか。

当然のことながら、企業が存続する限りは障害者の求人や雇用定着を維持していかなくてはなりませんから、人事担当者としてはこれからの動向が気になると思います。

結論から申し上げると、法定雇用率は「3.0%」まで引き上げられるのではないかと考えます。

現状決定している点としては、2018年度に引き上げられた雇用率2.2%は2021年度を迎えるまでに2.3%となり、2023年度には新たに引き上げられた雇用率(現状は何%になるか不明だが、おそらく2.5%程度)が義務化されるということです。

一旦、ここまでは決まった路線通りに進むことになりますが、その後も定期的に引き上げが検討され、「3.0%」が到達地点になるのではないでしょうか。

理由として、下記の3点を挙げました。

① 障害者の人口割合

日本の人口が約1億2,000万人。そのうち身体障害者が約394万人、知的障害者が約74万人、精神障害者が約392万人という数字(あくまでも、障害者手帳取得者の数字ということではなく、手帳を取得できる程度である)が公表されています。この数値から見た場合、障害者の人口の割合は障害の重複も含めて考えると5~7%程度になるでしょう。併せて、欧米などの研究結果でも人口の5%程度が障害者だと言われています。

これらから、半分の数値を少し上回る「3.0%」という雇用率が考えられます。

② 障害者労働力に対する認識

2018年4月の施行を前に、障害者求人の担当の方々とお話しする機会が増えています。その中で自分自身の参考にしたい思いから「最近の採用事例」について伺ったりするのですが、3~5年前と比べて明らかに「精神障害者」の雇用が増えてきていることを感じました。雇用を後押ししてくれる助成金や外部資源を有効的に活用したことも一因だと思います。一方で、その先にある重要な目標である「精神障害者の職場定着の実現」から見た場合、各企業ともまだまだ試行錯誤といった印象ではありますが、これまで頑なに「身体障害者」のみの求人活動しかしてこなかった企業ですら、この1~2年は「精神障害者」の雇用を具体的に進めています。これは、15年近く企業における障害者雇用の状況を見、肌で感じてきた私にとって考えさせる出来事のひとつです。今はまだ小さいですが、ようやく歩み始めた一歩といったところです。

ここから見えてくるのは、障害者雇用の中でも一番取り掛かりが難しく、企業内でも理解がされにくい「精神障害者」の採用が増えてくることで“障害者も労働力”という感覚が企業に浸透してきたと感じています。

忘れてはいけないのが「障害者雇用は義務」や「障害者=邪魔な存在」といった考えを持つ企業や従業員もいますし、その考えを頭から否定することはできません。しかしながら、少しずつ障害者に対する認識は進んでいることだと証明しています。

③ 精神障害者と発達障害者が増加

上記「①」にも記載しました障害者の人口ですが、前回の統計から精神障害者の人口が大きく増加しています。以前からメディアでも大きく取り上げられているので関心事としている方々もいらっしゃると思いますが、職場(厳密にはプライベートも含みます)で受けるストレスや疲労の蓄積によるメンタル不調から発症すると言われる「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」などの精神疾患患者が年々増加傾向にあります。一般的には、「うつ病は100人に2~4人」「双極性障害と統合失調症は100人に1人」は発症していると言われているように、それだけ珍しい疾患ではありませんので、これら精神疾患が原因で障害者手帳を取得される方が増えると考えられます。

それに加えて、発達障害の診断を受けた人の数も増えています。これは、近年発達障害に対する情報が増え、周囲の認知が進みました。その結果、自分での気づきや家族からの指摘がきっかけで受診する人が増えてきているためです。

おそらく、この傾向は今後も継続されますので、今よりももっと多くの発達障害者が出てくると思われます。

但し、発達障害者と診断された方たちの全員が障害者手帳を取得するということではありません。中には非常に軽度で、発達障害の気配はあるが日常生活や周囲で困っていることがなければ手帳の取得はしなくても大丈夫という方もたくさんいますので、その人たちも含まれています。

いずれにしろ、精神障害者や発達障害者の人口はこれからも増えていくことになります。理想としては、精神障害者や発達障害者の方たちの採用を後押しするような助成金などが増えてくることを期待します。一度でも雇用定着につながれば、彼らのような人材の活用メリットを大きく感じる事でしょう。

人事担当者が気になる今後の障害者法定雇用率はどうなるの?[2/2]

2018.03.06

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。 ▼アドバイス実施先(一部抜粋) ・opzt株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・株式会社神戸製鋼所 ・沢井製薬株式会社 ・株式会社セイデン ・日本開発株式会社 ・日本電産株式会社 ・株式会社ティーエルエス ・パナソニック株式会社 ・大阪富士工業株式会社 ・株式会社船井総合研究所 ・株式会社リビングプラットフォーム