「本当に障害者なの?」なんて言われると正直辛い

「本当に障害者なの?(困難なことなんてなさそうだけど…)」

これは僕が障害者職業センター、就労移行支援に通っている間、幾度となく言われた言葉です。

この言葉は僕に限らず、自分の障害について理解していて、困難なことに対して対処できている人、もしくは障害の程度が比較的軽い人であれば、言われたことがあるかもしれません。障害の当事者を見て、「本当に障害者なの?」と口に出てしまうのは、第三者目線で見ても当事者の振る舞いや行動、言動にそれほど困難を感じないからだと思います。

では、当の障害者からすると「本当に障害者なの?」と言われることはどんな気持ちなのでしょうか?今回は「本当に障害者なの?」と言われてきた僕の心情について綴ってみようと思います。

「本当に障害者なの?」と言われると嬉しくもある

「本当に障害者なの?」と言われると、辛さもありますが、一方で嬉しくもあります。

というのも、自分では悩んではいるものの、周りからすればそれほど悩んでいるように見えない、特性(苦手なこと)もそれほど表立っていないということなので、「本当に障害者なの?」と言われると嬉しくもあります。

その裏にどれだけの努力やもがきがあっても、表面上、第三者目線ではそういった努力やもがきを感じられず、いたって普通に感じてもらえるのはやはり嬉しいものです。

「本当に障害者なの?」に辛さを感じるのは、これまでの努力を見過ごされているように感じるから

「本当に障害者なの?」という言葉には嬉しさを感じますが、個人的には辛さの方が強く感じます。

というのは、「本当に障害者なの?」という言葉には、これまでの苦悩や辛さ、乗り越えるための努力を見過ごされているように感じてしまうからです。

これは障害に限ったことではないのかもしれません。

たとえば、学校でテストの点数が高い人に対して「君は頭が良くていいね」なんて言ってしまうのも同じだと思います。もちろん、中には教科書を読んだだけで、授業を聞いただけで、テストで高得点を獲得してしまう人もいます。ですが、多くの人は授業や宿題以外にも、塾に行ったり、自宅で予習や復習をするなど努力を重ねています。

なので、「君は頭が良くていいね」なんて言葉は、その人のこれまでの努力を見過ごしている、もしくは踏みにじってしまう言葉なわけです。

これまで生きづらさや息苦しさを感じ、周りと違った感覚を持つことで「変わった人」とレッテルを張られた僕にとって、「本当に障害者なの?」と言われるのはたしかにうれしいです。ですが、これまでの苦しみや辛さを乗り越えるために積み重ねてきた努力を考えると、「本当に障害者なの?」という一言は、どこかこれまでの努力をないがしろにされているように感じてなりません。

もちろんだからといって、「すごい努力をしてきたんですね!」とか「これまで大変だったでしょ(共感)」みたいな感じは求めていなくて、目の前の現状だけを見て軽々しく「本当に障害者なんですか?」みたいに言われるのが辛いんです。

「本当に障害者なの?」と言われると、もっと努力しないといけないと思ってしまう

これまで少なからず努力を重ね、今の“いい状態”を作り出してきたわけですが、「本当に障害者なんですか?」なんていわれてしまうと、「もっと努力しないといけないのかな…?」なんて思ってしまうわけです。

僕は発達障害、吃音症という障害だけではなく、糖尿病という病気も抱えています。そのため、障害への対策や対処だけではなく、病気の治療にも気を使わなければなりません。それも風邪のように完治する病ではなく、死ぬまで関わっていく糖尿病なので、治療も一生です。

「本当に障害者なんですか?」なんて言われるくらい周りからすれば、障害の特性も感じさせず、振る舞いも言動もまともな感じがするのかもしれないですが、僕としては水面下で足をバタつかせることはもちろん、それに加えいろいろと努力をしていないと、今の現状を保てません。それは訓練をすることはもちろんのこと、食事に気を使い、運動を習慣化し、睡眠の質を保つなどです。

なので、「本当に障害なんてあるんですか?」なんて言われると、「もし、これで健常者と同じ土俵で戦うとなると今以上に身を削らないといけないやん…」と考えてしまうわけです。

今以上の努力というと、食事の制限度合いを厳しくして、運動量も増やし、夜更かしなんてもってのほかです。自己管理をさらに徹底しなければいけないので、ストレスは溜まる一方です。これでは会社勤めしていなくても、ブラック企業で働いているようなものです。

「本当に障害者なの?」という言葉は決して褒め言葉にはならない

僕のことを見て、「障害なんてあるんですか?」「私(僕)にも同じような症状ありますよ!」みたいなことを言う人は、決して悪気があるわけではないと思います。僕の状態を見て、心の底からそう思っているのかもしれませんし、褒め言葉としてそういってくれているのかもしれません。本心は僕にはわかりません。

ですが、そういった障害を疑うような言葉は僕にとっては褒め言葉ではなく、今の自分をさらに追い込んでしまう重荷のような言葉になってしまいます。それが褒め言葉とはわかっていても、「もっと頑張らないといけないのか…」と感じてしまうわけです。

なので、「本当に障害者なんですか?」という言葉は一時的に嬉しく感じますが、結果としては嬉しさよりも辛さや苦しみをさらに生み出すだけになってしまうということです。

さいごに

「本当に障害なんてあるんですか?」「本当に障害者ですか?」

障害の症状が軽度の人や、ある程度克服している人に対して、支援者であれば言ってしまうことがある言葉かもしれません。この言葉ではなくても同じような言葉は言っているかもしれません。

支援者としては褒め言葉として使っているのかもしれませんが、もしかしたらその言葉が当事者を傷つけている、追い込んでいる可能性があるということを知っておいていただければ幸いです。

まぁ障害の当事者としては、褒め言葉を励みにして更に頑張るくらいにならないといけないんでしょうけどね…。

ABOUTこの記事をかいた人

中村 祐基 (大手電機メーカー勤務)

就労移行支援を経て、大手電機メーカーに障害者として就職。診断名はADHD(注意欠陥多動障害)。吃音症と糖尿病も併せ持ちます。集中力のなさと、物忘れが多い半面、情報処理は異常に速い。言ってはいけないことを言ってしまい怒られることもしばしば。ミルマガジンでは、障害者として就職活動をしたこと、就職している実体験について主に書いています。