こんな時だからこそ、行政の障害者関連機関は就労系福祉事業所を応援しなさい!

昨今の中央省庁による障害者雇用の水増し問題をきっかけに、地方自治体でも同様の水増し問題が発覚し、大きくニュースでも取り上げられています。

中央省庁などの行政機関は助成金の受給資格がない代わりに、罰金となる納付金の支払い義務がないことについては理解するとしても、チェック機能がないというのは真剣に障害者雇用に取り組む企業に対して非常に失礼な行為だと感じます。
一方で感心の低かった世の中に『「障害者」×「働く」』というキーワードとして注目されたことは、個人的には「うん」といえることでした。

世間を騒がせた出来事にかこつけて、せっかくなので言わせてもらいたいと思うことがあります。
「こんな時だからこそ、行政の障害者関連機関は就労系福祉事業所を応援しなさい!」

「企業」の取り組み

現在、法律によって常用雇用労働者数45.5名以上の企業に義務付けられている法定雇用率
企業が達成を実現するためには障害者の「採用」にとどまることなく、その先にある「雇用定着」への取り組みを考える必要があります。

更に障害者雇用の経験値が浅い企業の人事担当者が、「雇用定着」の実現を成功させるために取るべき行動のひとつとして専門機関(家)からの協力を得るというものがあります。

障害者雇用における専門機関といえば、

  • 「障害者就業・生活支援センター」
  • 「障害者職業センター」
  • 「ハローワーク障害者求人窓口」
  • 「就労系福祉事業所(就労継続支援A型・B型、就労移行支援事業所)」

といったところでしょうか。

私が特に企業人事担当者にお勧めしたい専門機関は、各地域にある「就労系福祉事業所」です。
全国にある「就労系福祉事業所」の数は約16,000事業所(2016年3月の国保連データより)となり、年々事業所数は増加しています。但し、地域によっては企業が相談できるところに事業所がないために、障害者採用の協力を得られないという問題があるのは、今後の大きな課題ではないでしょうか。

しかし、その問題よりももっと重大なことと捉えてもらいたいのが、企業が障害者の採用ルートとして「就労系福祉事業所」という存在を認識していない点です。

私は企業からの相談のひとつとして新たな障害者の採用を進める場合、必ずといっていいほど採用をする地域にある「就労系福祉事業所」からの協力を第一に検討します。なぜなら、これから目指すべき障害者の「雇用定着」には、専門的な知識や経験からくるアドバイスが欠かせないものであり、大きなメリットになるからです。
現在の障害者雇用を見てみると、これまでのような身体障害者が中心となっていた障害者求人から知的や精神・発達障害など、企業側の理解や協力がより一層必要な障害特性を持つ人材へとシフトチェンジしています。

このコラムを読まれる人事担当者の皆さんにとっては難しい取り組みだと感じておられることでしょう。しかし、身近な存在である「就労系福祉事業所」からの専門的サポートを受けることで、自社の「雇用定着」の実現に大きく近づけることが可能です。

では、なぜ企業は「就労系福祉事業所」の存在を認識していないのでしょうか。

「行政」の取り組み

仮に人事担当者が障害者雇用に関する相談に来た時、「就労系福祉事業所」を知らない担当者であれば、役割や活用方法の説明をしているはずなので、企業がその存在を認識していないというのはなぜでしょう。行政機関での窓口でそのようなことができないのであれば、市区町村やハローワークのHPなどで助成金の案内と併せて各事業所の特徴を説明するページを用意しても良いのではないかと思うのですが、そのようなものも存在しません。(WAMネットで検索ができますが、各事業所の特徴を知ることができません)

一般企業である私の感覚からすると、本来の義務である行政機関は何もしていないのに等しいと思っています。
窓口やHPで地域にある事業所を案内することで企業が抱える課題の解決となり、その後の実習や採用に向けた取り組みにつながることがあるはずです。おそらくですが、「特定のところにメリットになる協力はできません」「前例がないので協力できません」といった理由で断ってはいないですか。中立な立場ですから確かにそのように対応するでしょう。
しかし、その言葉には「でも、ひとりでも多くの障害者に就職をしてもらいたい!」という意味は含まれているのでしょうか。立場としてできないが、「〇〇のようなご協力ならできます」といった話にもならず、ただただ断られるだけだと疑った感情で申し訳ないですが、どうしても「就職させたい!」といった思いを感じることができないのは非常に残念です。

今だからこそ、行政機関に取り組んでいただきたくお願いしたいことがあります。
それは、「企業」と「就労系福祉事業所」の橋渡しとなる交流の場を設けてください。
これは、年に数回実施される「合同面接会」や「障害者雇用セミナー」ではない、「企業の担当者」と「就労系福祉事業所の担当者」がひざを突き合わせて意見交換ができる場
をいいます。

実は、私が障害者の雇用関連の仕事に関わることになった頃から強く感じていたことですが、「企業」と「就労系福祉事業所」の距離というのが大きく開いた状態で、現在でもその距離は縮まっていないと思います。これも、冒頭でお話ししました「企業が就労系福祉事業所の存在を認識していない」ことによる結果だと考えます。
この距離を縮めるための取り組みとして行政機関には「交流の場」を設けていただくことはできないのでしょうか。

実際、私はクライアントである企業と採用地域の就労系福祉事業所との交流の場をいつも協力していただいている団体担当者にセッティングいただき、これから大きな成果として実を結ぼうとしています。こういったことが「企業」も「就労系福祉事業所」も望んでいることであり、障害者の雇用促進となる具体的な取り組みではないでしょうか。

企業向けの「障害者雇用セミナー」も大切な雇用促進活動のひとつだというのは私も同意です。但し、主催している行政機関は企業の人事担当者の抱える課題や悩みをどの程度の深さまで把握できているのでしょうか。
立場が目的を邪魔するのであればそのような立場を我々は必要としていません。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。 ▼アドバイス実施先(一部抜粋) ・opzt株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・株式会社神戸製鋼所 ・沢井製薬株式会社 ・株式会社セイデン ・日本開発株式会社 ・日本電産株式会社 ・株式会社ティーエルエス ・パナソニック株式会社 ・大阪富士工業株式会社 ・株式会社船井総合研究所 ・株式会社リビングプラットフォーム