まだ間に合う!知っておくと損をしない障害者雇用を助けてくれる3つの活用術

あっという間に2018年度も半分が過ぎましたが、皆さんの会社での障がい者人材の採用計画に関する進捗度合いはいかがでしょうか。

おそらく各企業では年末から年明けに掛けて次年度の計画準備に入るころだと思いますが、最近では障害者雇用に関しても採用計画を立てる企業が増えてきました。ここ数年の間に法律の改正やそれに伴った障がい者法定雇用率の見直しにより、企業による障がい者求人の件数は年々増加傾向にあります。

その一方で、求人の対象が身体障がい者から精神障がい者・発達障がい者へと移行したことにより、「分からない」ことが多いまま、取り急ぎ採用活動をしてしまった企業での職場トラブルの発生や離職率が上昇。そういったことが影響した結果として、障害者雇用の難しさを改めて感じる人事担当者が増えているのも事実です。

私は、企業向けの研修やセミナーでお話しをする機会では必ずといっていいほどお伝えしていることがあります。それは、『障がい者の求人活動に必要な準備』についてです。

障害者雇用で失敗しないために必要な準備とは


例えば、障害者雇用で失敗をする企業にはいくつかの共通する特徴があります。
上記にも少し書きましたが、採用活動の中心となる人事担当者が『障がい者の求人活動に必要な準備』をせず、「分からない」ことが多い状態のまま進めてしまったために様々なミスマッチが起こり思うような成果を上げられず、社内からも理解や協力が得られていない企業がとても多いということです。

精神障がい者・発達障がい者の離職率が身体障がい者や知的障がい者に比べて高いと言われるのは、一方的に精神・発達障がい者に原因があるだけではなく、『障がい者の求人活動に必要な準備』のひとつである「理解」や「情報共有」となる行動を企業が実施していないからだと考えています。新しく採用された障がい者と一緒に働く従業員が、その方たちの障がい特性や特徴、それに伴う配慮と理由を共有されていないならば、安心して協力をすることができるでしょうか。

それ以外にも『障がい者の求人活動に必要な準備』として人事担当者が知っておくことで雇用の助けとなる活用術を記してみました。

① 助成金

障がい者の採用や雇用定着をアシストしてくれる助成金制度というものがあります。この助成金の申請先には大きく分けて「労働局」「独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構」のふたつがあります。
それぞれは、

『「労働局」の助成金』
「新たな採用をするときに受給できるもの」として、障がい者の新規採用時の給与を助成してくれるものや両者のミスマッチ軽減を目的とした試用期間内に活用できる助成金などがあります。
・特定求職困難者雇用開発助成金
・トライアル雇用助成金       など

『「高齢・障がい・求職者雇用支援機構」の助成金』
「雇用の継続や定着に関連した設備導入の際に受給できるもの」として、スロープや障がい者用トイレの設置に掛かる費用の一部助成や手話通訳者などの介助目的とした人材に掛かる費用の負担などがこれにあたります。
・障がい者作業施設設置等助成金
・障がい者介助等助成金        など

に区別されています。

受給するための要件などもありますので、取り組みの際の障がい者の新規および中途採用や設備設置・人員配置があるときには、必ずそれぞれの所管窓口に問合せすることを義務付けておくといいかもしれません。
ちなみに障がい者関連の助成金は、法定雇用率未達成による納付金(罰金)の支払いをしている企業であっても受給資格があります。

② 就労系支援事業所

これから新たに障がい者の採用をするのであれば、就労系支援事業所(就労継続支援A型・B型、就労移行支援事業所)との連携や協力は企業にとって大きなメリットとなるのですが、企業の人事担当者が就労系支援事業所の活用方法やその存在すら認識されていないところが多いことにショックを受けてしまいます。
これからの障害者雇用の形というのは、一緒に働く従業員の方々への負担や不安の軽減についてしっかりと考えた取り組みをする必要があります。

例えば、新たに精神障がい者・発達障がい者を採用する場合、ご本人さんの特徴や望む配慮などを受け入れ先となる部署の従業員に共有することで、どのような対応を取る必要があるのか、コミュニケーション方法などを知っておいてもらうことができます。障がいについての「理解」があることで、これまで障害者雇用を邪魔していた不安や心配は大きく軽減されます。そのための「従業員向けの研修」「実習による社内理解」「求人対応」など、就労系支援事業所は企業の知識や経験に合わせて対応をしてくれます。

③ 精神障がい者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置

この特例措置も該当するのであれば是非活用してもらいたい制度となります。
簡単に申し上げると「短時間労働(週20~30時間未満)で雇用している精神障がい者を1人とみなす。」となります。これは、2018年4月より施行されました「精神障がい者の雇用義務化」に伴い障がい者法定雇用率が2.2%に引き上げられましたのを受けて、精神障がい者手帳を取得している障がい者の雇用促進のために設けられました。

ご存知のように、精神障がいを持つ方の特徴として安定した就労が困難である人が少なくありませんので、可能であれば短時間による勤務からスタートできる選択肢があるのが望ましいといえます。一方で企業にとってもこれから初めて精神障がい者・発達障がい者を雇用する場合、適正かどうかの様子を見る意味合いも込めて短時間から雇用したいというのが本音ですから、本来0.5人分のカウントなのが1人分のカウントなるというのは大きなメリットではないでしょうか。

[ 活用の要件 ]

① 精神障がい者である短時間労働者(障害者雇用促進法における短時間労働者)であること

② 次のa又はbのいずれかに当てはまる者であること
a 新規雇入れから3年以内の者
b 精神障がい者保健福祉手帳の交付日から3年以内の者

③ 次のa及びbのいずれにも当てはまる者であること
a 平成 35 年 3 月 31 日までに雇い入れられた者
b 平成 35 年 3 月 31 日までに精神障がい者保健福祉手帳の交付を受けた者

となります。該当する採用がありましたら、是非管轄の労働局へお問い合わせください。

【厚生労働省ホームページ】
精神障がい者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置 Q&A

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム