人事なら知っておくべき”障がい者の職場定着を支援するアレコレ”(採用活動編①)[2/5]

人事なら知っておくべき”障がい者の職場定着を支援するアレコレ”(準備編)[1/5]

2017.02.21

前回のコラムでは職場定着を実現する障害者雇用【準備編】をお話ししました。

企業が利益を上げるために戦略を立て、実行するのと同様に、障害者雇用もしっかりと準備することで結果に繋がります。

今回は【採用活動編】ということで実際に求人や採用活動をする際に必要となるポイントをご紹介したいと思います。

1.ハローワークの活用と連携

これから障がい者の採用を始めるのであれば、出来るだけハローワークを活用していただきたいと思います。

障がい者を支援する会社や機関が増える現在でも、求職者が最も相談に行くところはハローワークです。ハローワークは、障害者雇用の義務のある企業に、助成金をはじめとした各種制度・法律の説明や支援を行っており、人事担当者が頼れる施設ですが、それは求職者も同じです。仕事に関する情報や支援、サポートなどの情報が集約されるのもハローワークで、障がい者を雇用したい企業と求職中の障がい者の双方にとってメリットある場となっています。従って、手始めにハローワークに行くことで、求職中の障がい者に関する情報提供はもちろん、雇用定着の実現に必要な支援機関からの協力を受けるにはハローワークに相談しているかということも関係してきます。また、障がい者の雇用に関連した助成金制度を受けるためにもハローワークとの連携は不可欠となります。地域にもよりますが、足繫く通うことで親身な対応をしていただけます。

障がい者の雇用を管轄しているのは労働局です。仮に、障がい者法定雇用率が達成していない状況で、結果として採用が進んでいなくてもしっかりと採用活動をしているというアピールにもなりますので、地元のハローワークの活用と連携されることをお勧めします。

2.採用条件の作成

次に障がい者の採用条件に関する点についてお話しします。

この時点では会社側が業務を遂行する上で必要するスキルや仕事内容、雇用形態を考えるところから始めます。障がい者を職場の邪魔モノとしない為にも、しっかり必要な能力などは整理してください。

「就いてもらいたい仕事」「入力作業、検品業務 など」「雇用形態(正社員、契約社員、パート)」というところです。

どうしても障がい者の採用となると「採用したい障がいの特性」から考えてしまいます。「精神障がい者ではなく身体障がい者」「障がいの程度が重いではなく軽い」とか。確かに受け入れる職場の管理者や従業員のことを考えるとサポートに負担の掛からない障がい者の採用を望んでしまいますが、ほとんどの企業が同じ考えで求人を出しているために競争が激しくなり、よっぽど魅力のある企業や業務内容・雇用条件でないと求職者からは選んでもらえません。私に言わせれば、障がい者種別で雇用メリットは決まらず、それよりも障がい者本人の性格を含めた特性が職務に合っているかの方が大事です。

また、この段階で障がいの特性を決めてしまうのは、その障がい特性でないと業務が務まらないということになりますので採用範囲が限定されてしまいます。役職経験や業務的に判断が必要な職種ならともかく、一般的な業務程度の仕事内容であれば、先ずは会社としてやってもらいたい仕事の抽出から始めるようにしましょう。

想像してください。即戦力が欲しい状態で「業務経験のないミスマッチとなる身体障がい者」と「経験豊富でベストマッチな精神障がい者」であればどちらが会社にとって必要な人材でしょうか。

それともうひとつしっかり決めておかないといけないことが「雇用形態」です。

例えば、責任や判断の伴う業務にもかかわらずパート採用で募集をしても希望するような人材は集まりません。また、正社員と同じ就労時間を厳守するような雇用条件であってもエントリーする人材は少なくなります。障がいを持っている以上は何かしらの制限があるわけです。本来であればフルタイムでの勤務なのを、0.5人分の業務担当として2人の採用(2人で1カウント)を募集したりなど、少し工夫をした求人に変えることでエントリーする人数も増えると思います。

人事担当者の声として「障がい者であっても一般従業員と区別せずに同じような働きをしてもらえる人材を採用したいと考えています。」といったことをよく聞きます。給料を払うわけですし、周囲の従業員のことを考えても当然の考え方だと思うのですが、どこか言い訳をしているように感じてしまいます。

健常者と区別せずに働いてもらいたいという表現には「身体障がい者でなければ採用したくない。」と言っているように感じるのは私だけでしょうか。なぜ企業は、努力が必要ですが人材が豊富な「精神障がい者」よりも採用が困難で結果に結びつきにくい「身体障がい者」を相変わらず採用対象として捉えているのでしょうか。従業員には利益や結果を出せと指示する一方で結果の出にくい障がい者の採用活動を続けているのはなぜなのでしょうか。

一般従業員と区別せずに同じように働いてもらうというのはどういうことを指しているのでしょうか。

企業は障がい者には一般従業員とは区別なく成果を求めるのに、障がい者を採用する立場になると、一般従業員と同じではなく契約社員や出世のないポジションとしての雇用をしているところが多いのは上記に挙げた疑問を含め、企業が置かれている環境をしっかりと把握できていない証拠だと感じます。

障がい者の雇用が難しくなっている現在、そろそろ企業にとっての労働力としての障がい者の存在を改めて考える時に来ているのではないでしょうか。

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ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム