取材レポート:(高知県)テレワークによる障害者雇用支援[1/2]

障害者の求人を担当している人事の皆さんは、自社がどのような課題を抱えているかというのをしっかりと把握していると思います。

2018年4月の法律改正以降、企業の障害者雇用で見られる動きとはどのようなことが考えられるでしょうか。企業の採用活動はこれまでと違い、義務感だけで取り組むのではなく、法定雇用率の上昇に合わせて新たな枠組み作りが進むのではないかと感じています。

2018年2月に厚生労働省から発表された「障害者雇用対策基本方針の改正」を見てみると、障害者の雇用義務のある企業が雇用を満たしていない際に厳しい姿勢で採用を促していくという部分と精神障害者や発達障害者・難治性疾患患者の雇用を対象とした助成金の支給延長などが明記されています。

中小規模事業者への働きかけの強化

企業の従業員規模ごとの法定雇用率の達成率は、小さい企業規模ほど低い数値となっています。これは、現在の法定雇用率2.0%で見た場合、従業員が100名以下の企業は不足に応じた納付金(罰金のようなもの)の支払い義務がありません。罰則規定がない状態ですから、進んで障害者を雇い入れようという企業は少ないでしょう。また、大企業と違い中小企業にとっては障害者を採用する人的な余裕もなかったり、わざわざ採用にいたるような考えを持つことも難しかったりするのが現実です。

各地域の労働局は、そのような企業に対してこれまで以上に障害者の採用を進めていくことになります。

障害者人材の獲得競争激化

次に、中小企業まで障害者の雇用が進んでくると、人材の採用自体が活発化してくるために求人の市場が更に枯渇化してきます。特に都心部のある東京都や大阪府、愛知県(この3つの地域は47都道府県の中でも法定雇用率の達成が低いという統計が出ています)のような大都市を持つ地域ではもうすでに障害者人材の採用競争が激しくなっています

では、多くの企業はこのまま過当競争状態となっている障害者の採用環境に身を置くことしかできないのでしょうか。

そのような中、高知県はテレワークによる障害者の雇用を促進させようと様々な取り組みを始めています。その推進に協力している「株式会社テレワークマネジメント」様からご連絡を頂戴しました。「テレワークによる障害者の雇用促進」とは、特に東京や大阪、愛知などの大きな都心地域に本社を置く企業の障害者雇用について、地方在住の障害者を採用してテレワークを用いた就業を実現しようとするものです。

テレワークマネジメント社からは、障害者をテレワークで雇用することに関心のある多くの企業に協力を要請しており、今回協力企業のひとつとして、積極的な障害者雇用の取り組みを実施している「阪和興業株式会社」様に帯同という形で参加してきました。取り組みのお話しをする前に、企業のご紹介をしたいと思います。先ず、「阪和興業株式会社」様ですが、1947年4月1日設立、鉄鋼の取り扱いを中心とした商社で本社は大阪と東京にあります。従業員は約1,300人、グループ会社も併せると3,000人を超す企業規模となります。近年は、精力的に障害者の採用活動を実施し、特定の障害特性に偏らない障害者の雇用と職場定着に力を入れています。

参加企業  阪和興業株式会社

次に株式会社テレワークマネジメントは、「テレワーク」という働き方をもっと広めるために、企業への導入コンサルタントをしています。自社の従業員のほとんどがテレワークによる勤務を実践し、近年は厚生労働省からの事業を受託し、企業の「障害者」と「テレワーク」を掛け合わせた雇用を実現させています。

高知県内では、就職したい障害者の数に比べて、採用を希望する企業の数が少ないため、障害者失業率の改善と障害者雇用を積極的に進めたい企業の双方のメリットを実現したいという考えを持っていました。

高知県に到着後、阪和興業株式会社の人事担当である辻様と小原様の3人で会場に足を運びました。

会場となる教室には4名(のちに2名が合流し合計6名)の就職を目指す障害を持つ方たちが、私たちの到着を待っていてくれました。

彼らはみな、テレワークで働くことに関心がある方や、実際にテレワーク就労を目指している方々でした。

1日目のプログラム

  • 「企業説明」:阪和興業株式会社の概要、企業紹介[60分]
  • 「模擬面接」:阪和興業株式会社が参加者ひとり一人と面接[各15~20分を6名]

先ずは「企業説明」を阪和興業株式会社の人事担当の辻様からお話しいただくところからスタート。辻様は自社のことだけを話すのではなく、業界のことや歴史などにも触れながら、極力理解をしてもらいやすいような工夫をしながら進めていらっしゃいました。会場はとても和やかな雰囲気で、時折参加者からも質問があり、就職に対する意識の高さを強く感じることができました。

続いて、参加者各自との「模擬面接」です。本来の面接とは違い、他の参加者が横にいる状態での模擬面接は、自分では気づきにくい点を周囲から見られることで欠点や癖を指摘してもらうメリットがあります。

各自がそれぞれご自身の経験や希望をお話しします。当然ですが、自分の持つ障害についてもしっかりとお話をしていただきました。

私がこれまで障害者の面接のときに、一番気にする点はこの「自分の持つ障害」についてです。「自分の障害の理解度」「生活リズムの状態」「障害の強みと弱み」などを基本的には確認をしています。その中でも、「弱みのセルフケア」ができているのかが特に重要だと思っています。障害の有無に限らず、人は自分の中に強みと弱みを持っています。特に弱みの部分を把握して、それを補うためにどのようなことを工夫として取り入れているのかが、障害者を雇う企業にとっては非常に気になる点だと思います。中には自分の弱みに目を向けず(腹落ちさせていない)、「臭い物に蓋をする」場合、実は就職の邪魔をしてしまっているように感じてしまいます。

今回の参加者の皆さんは、自分のウィークポイントを直視して、それを補うための工夫を理解されていました。当然、社会経験やビジネススキルなど、不足している部分も見られましたが、もし彼らが都心部に住んでいたなら、企業への就職の機会は今よりも多かったのではないだろうかと思えました。

一通りの面接後は、参加者同士でフィードバックです。

それぞれの立場はライバルのはずですが、お互いのことを思い、面接での良い点と悪い点を指摘し合っていました。

次回は、2日目の模様をお届けします。

取材レポート:(高知県)テレワークによる障害者雇用支援[2/2]

2018.05.22

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。 ▼アドバイス実施先(一部抜粋) ・opzt株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・株式会社神戸製鋼所 ・沢井製薬株式会社 ・株式会社セイデン ・日本開発株式会社 ・日本電産株式会社 ・株式会社ティーエルエス ・パナソニック株式会社 ・大阪富士工業株式会社 ・株式会社船井総合研究所 ・株式会社リビングプラットフォーム