職場見学シリーズ:第1回「東京海上日動システムズ株式会社」

私は仕事柄、たくさんの企業とお会いします。お会いする企業の共通点は「障害者の雇用」についてです。

その多くが、現在障害者雇用が上手くいっていない企業になります。

「募集しても集まらない」「採用してもすぐに辞めてしまう」「どのような仕事をしてもらったらいいかわからない」などなど。障害者を雇用するためにクリアしないといけない課題を各社が抱えています。

反対に、障害者への理解と工夫をしながら雇用を実現している企業も存在します。

では、上手く雇用を実践している企業はどのようなことをしているのでしょうか。実際の職場を紹介することで見えることがあると思います。

今回は、一般企業でありながら法定雇用率2.0%を大きく上回る障害者雇用を実現している「東京海上日動システムズ株式会社」のレポートをお送りしたいと思います。

場所は東京都多摩市。最寄り駅は多摩センターで駅から徒歩約10分で到着。

受付を済ませると早速、社内をご案内いただきました。

まず最初はオフィスフロア。数十名単位の従業員が働いているフロアが複数階に分かれています。

フロアには事務用品を収めているキャビネットがあり、引出しの中には何が収納されているのかが一目でわかるようにラベルが貼られています。

この事務用品を管理しているのが障害を持っている従業員たちです。

ホワイトボードの作業スケジュールに合わせて、定期的に各フロアを巡回し、それぞれの事務用品の数量を確認。足りないモノは補充。多いものは回収をして常に一定の数量が収納されているようになっています。

本格的に障害者雇用を始めるまでは各フロアで事務用品の管理をしていましたので、在庫や発注なども個々で行うためたくさんの無駄が発生していましたが、現在は事務用品の在庫もしっかり管理されているということです。また、コピー機やプリンターのカートリッジの交換・用紙の補充も障害者の方々が行っています。

続いてご案内いただいたのが、地下にある駐車場スペース。ここでは、従業員が業務で使用している椅子のメンテナンスを障害者の方々が行っています。毎日使用するモノなので傷んだり汚れたりします。

こちらも障害者雇用を始めるまでは、故障したり傷んでくると新しいものを購入していましたが、今ではクリーニングや補修をすることでなるべく使い続けるようにしたことで年間の大きなコスト削減につながったということです。

それから、次に案内していただいたのが総合受付の横にある食堂兼打合せスペースに設置されている「SMILE CAFÉ」です。

こちらでは、ドリンクや軽食を購入することができ、毎日朝からたくさんの従業員が利用されています。この「SMILE CAFÉ」では知的障害者の方々が勤務されています。健常者が管理者としていらっしゃるのですが、業務のほとんどは障害者の方たちでこなしています

当初はお金の計算が出来ないのではということで券売機を設置し、利用客はチケットを購入してから商品と引き換えるという形式をとるようにしたとのことです。

でも、それも取り越し苦労だったようです。

今では午後から各フロアを巡回してコーヒーのワゴン販売もしているのですが、購入する側の従業員が計算を手伝ってくれるのでほとんど間違うことなく接客をしているということです。

他にも視覚障害者が勤務する「リラクゼーション室」が設置されており、従業員がマッサージの施術を受けることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。この見学レポートでわたしがお伝えしたいことは周囲の理解と工夫で障害者雇用は実現できるということです。

今回見学にご協力いただきました「東京海上日動システムズ株式会社」は従業員数1,000名以上の大企業で、建物も自社ビルとなっています。

ご覧いただいた方々の中には「うちでは無理だ」「大企業だからできることだ」と感じられたのではないでしょうか。確かに「SMILE CAFÉ」なんて中小企業では実現できないような設備です。

例えば、設備や業務ではなく、考えや取組みに目を向けていただくと参考になるモノがあります。障害者の業務を生み出すことで無駄がなくなりました。できないと思っていた計算が周囲の協力で問題のない業務にすることができました。細かい作業やコツコツと続ける作業、時間は掛かるが覚えるとしっかりと成果を出してくれる。

こういった部分を周囲が理解すると障害を持つ人たちの役割ができます。

今までの経験で成果の出る障害者雇用を実現するには「百聞は一見に如かず」が非常に大切だと思っています。実際に障害者が働いている職場を見ることで雇用の可能性を感じることができます。

経験がなかったり、間違った捉え方をしているとイメージできない部分があります。ぜひ、自分の目で障害者の働く姿を見てみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (イルネス障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・採用コーディネート、また障害者人材を活用した事業に関するアドバイスを実施。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。講演のご依頼や雇用に関する相談は、当サイトお問い合わせからお願いします。