職場見学:株式会社エルアイ武田

今回、ミルマガジン職場見学シリーズでご紹介するのは、武田薬品工業株式会社様の特例子会社である「株式会社エルアイ武田」さんです。

厚生労働省の発表では2017年6月現在、全国には464社(前年は448社)の特例子会社があります。最も多い都道府県は東京都(143社)で、その次が神奈川県(47社)。職場見学のご協力をいただきました「エルアイ武田」さんのある大阪府(37社)は全国で3番目に多い地域となっています。

こちらのエルアイ武田さんは、製薬会社を親会社として持つ企業では全国で初めて特例子会社の認定を受けました

見学会を通して感じた「エルアイ武田」さんが培ってこられた障害者雇用に対する姿勢は、義務だけでは実現することができないと思えるものでした。

お忙しい中、ご対応いただきましたのは「エルアイ武田」の設立から担当されている人材開発室室長の大森 千恵様です。設立からこれまでのご経験は、障害者雇用の役割を担っている人事担当者にとっても非常に参考となる内容でした。

場所は武田薬品工業株式会社・大阪本社のある大阪市中央区道修町。古くから製薬会社の集まっている地域です。

エルアイ武田さんの障害者雇用は「聴覚障害者」と「知的障害者」からスタートしました。

そのため、平成7年に設立されてから現在でも障害者雇用数115名中聴覚障害者が31名、知的障害者40名と両方で半数を上回っています。(他精神16名、肢体8名、内部1名)

特に聴覚障害に対する取り組みが非常に活発で、日常会話はもちろん部署内で行われる朝礼や打合せなどは聴覚に障害を持っていない従業員も、出来るだけ発言は手話を使い、会議等は手話通訳の委嘱を行っています。

「エルアイ武田」さんは主に親会社から委託された業務を、本社地区を始め5つの事業所に分かれて仕事にあたっています。

各地域での主なお仕事は以下の通りとなります。

本社地区

  • 道修町グループ:印刷、組版、データ入力業務、包装補助、メール業務
  • 清掃グループ:清掃、塵芥業務
  • 御堂筋グループ:会計精査、コピー業務

吹田地区

  •  吹田グループ:武田薬品研修所・寮の清掃業務及び客室清掃(ベットメイク含む)

十三地区

  •  十三グループ:武田薬品大阪工場内の洗濯・清掃業務

湘南地区

  •  湘南グループ:武田薬品研究所内の洗濯・清掃業務

光地区

  •  光グループ:廃棄書類の回収及び仕分け・緩衝材作成業務

今回私たちが見学させていただいたのは、大阪本社内にある「本社地区」の業務でした。

本社内にあるそれぞれの担当部署にお邪魔し、各業務の説明や紹介をお聞きするのですが、それら説明は各部署で働いている障害を持った従業員の方たちでした。こちらでは、障害を障害として見るのではなく、その人の持つ「特徴」や「癖」だという捉え方をしているというお話しを聞きました。

それは、前述したとおり従業員の中で占める健常者の数が圧倒的に少ないため、障害を持つ者同士で助け合うことが当然なこととして求められます。自分が障害者だからと言って何でも周囲が助けてくれることを前提にしていては人は育たない。立場や役割が人を育てるんだという考え方が根底にあります。

例えば、支援学校や就労系の福祉事業所などから、毎年多くの実習生を受け入れていらっしゃいます。その際にも、実習生に仕事や社内のルールなどを教えたりするのは職場のリーダーではなく、各業務の担当者が付き添って対応するということです。

なるほどと思いました。それは、各部署で業務説明をしてくれている従業員の方たちの口から出る言葉を聞いたときに「プロ意識」を感じたからです。障害者であっても、仕事に対して高い「プロ意識」を持つことで、与えられた役割をしっかりと全力で勤め上げようとする思いが感じられました。言葉だけで実行することはとても難しいでしょう。おそらくですが、たくさんの経験と時間を掛けることで、社内文化として「プロ意識」を根付かせることができたからではないかと思います。そうすることで、新しく雇用された障害者も徐々に「プロ意識」を持って働くようになるのだと思います。これは、所内を案内していただいた大森さんからも、「今のかたちはひとつひとつがこれまでの失敗・苦労の積み重ねから見付けることができたものだ」というお話しの通りでした

また、実習についてのお話しも聞かせていただきました。

「エルアイ武田」さんでの雇用はフルタイムが原則です。従って、実習やトライアルにおいてもフルタイムで来てもらうことを前提としていらっしゃいます。

実習を受け入れている企業の多くは、短時間やその方の希望に合わせた時間設定をするのとは逆の発想です。それは、フルタイムを前提とすることで体調が悪いときは自分から申し出て途中で帰ることも良しとしているとのこと。本当に短時間しか働けないのか、早い時期に自分の適性を見極めることができますし、前述の「プロ意識」についても実習時からしっかりと感じることで、健常者よりも経験値の少ない障害者が強く自立に向けて進むための後押しなるのではないかと感じます。

障害者の雇用定着は各企業様々な方法で取り組んでいらっしゃいます。100%同じものをマネするというよりも、各取り組み企業の参考となる部分を自社用にカスタマイズしていくという方が伝わるでしょうか。

「エルアイ武田」では、随時会社見学を実施しています。詳しくは下記ホームページをご参照ください。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。 ▼アドバイス実施先(一部抜粋) ・opzt株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・株式会社神戸製鋼所 ・沢井製薬株式会社 ・株式会社セイデン ・日本開発株式会社 ・日本電産株式会社 ・株式会社ティーエルエス ・パナソニック株式会社 ・大阪富士工業株式会社 ・株式会社船井総合研究所 ・株式会社リビングプラットフォーム