厚生労働省が毎年公表する「障害者雇用状況の集計結果」というものをご存知でしょうか。
企業がどれだけの障害者雇用を実施しているのかを集計して年末にHP等で公表しています。ここで公表されている数字を見ていますと、企業に採用される障がい者の人数が年々増えてきていることが分かります。これは、現状の国・地方自治体の補助金の拡充や雇用義務のある企業へのサポートの充実が背景にあり、良い方向へ進んでおり、非常に良いことと思います。
反面、企業に雇用されている障がい者たちの数字が増加しているのに比例してミスマッチとなる数も増えているのが現実です。数が増えると一定数の不具合が発生することも当然なのですが、障害者雇用の場合は企業にとって良くない影響を残します。
それは、「障害者雇用に対するイメージの低下」というデメリットです。
元々、身内や友人など身近な存在として関わったことのない人たちにとって障がい者は正に“未知なる人種”です。
まして、最近増加傾向にある精神障がい者・発達障がい者と一緒に働くことなんて想像すらできないのではないでしょうか。人事が職場におけるメリットを簡単に説明した位では、仕事をする場面でどんな人かもわからない“未知なる人種”と働くって不安以外の言葉なんか思い浮かびません。出来ることなら障がい者と一緒に働くことを避けたいと考える人がいてもおかしな事ではありません。
しかし、現実は法律により企業は障がい者を雇用しなければなりません。2018年度以降は法改正の影響により今以上に障がい者の雇用が求められ、特に精神障がい者・発達障がい者に該当する障がい者と机を並べて働くという職場が増えていきます。
「今の我が社で果たして障がい者を雇用していくことができるのか」と考えておられる採用担当者は少なくありません。
障がい者の採用・雇用で失敗をしている企業・成功している企業、それぞれの特徴が分かると自社の取組みに反映することができます。
ここでは、そういった障がい者の採用・雇用が上手くいっていない企業と上手く成果を上げている企業の特徴をお話ししたいと思います。是非、ご参考にしてください。
障害者雇用に失敗している義務企業の特徴
まずは、失敗をしている企業の特徴から。
1.見直さない採用基準
私が障がい者の雇用相談を義務企業から受けるようになったのが今から約10年程前でした。当時、企業では本格的な障害者雇用や助成金が始まり出す頃でした。多くの企業人事の採用基準は「軽度な身体障がい者」「年代は30代前半」「性別は女性」といったものでした。
今でもこのような採用基準だと全くと言っていいほどエントリーしてもらえませんし、ハローワークからのご紹介も期待できないでしょう。これでは、門戸も狭くいつまでも結果の出せない採用活動となります。まずは現在、障がいを持っている求職者がどのような障がい者なのかを知ることから始め、それら障がい者の求職者情報をもとに新たな採用基準を設けることを勧めます。
2.職場の理解不足
次にみられる特徴なのが、「職場の理解不足」です。
採用担当者が苦労して採用した障がい者が配属先での理解が足りず、数ヶ月で退職するというケース。
これは、採用担当者と違い配属先では障がい者に対する知識や理解のある従業員はほとんどいません。そこへ、本人に対する簡単な情報連携だけで配置してしまったために起こる事例です。
例えば、新しく採用された聴覚障がい者のAさんは対面でのコミュニケーションは取れるが、電話での対応はできないという特徴があります。この特徴を配属先に対してしっかりとしていなかった場合、周囲は電話対応をしないAさんに対してクレームや注意をします。当然、Aさんは採用時に電話応対が出来ないことは伝えてあったのでショックを受けたり、会社側へ不信感を抱いてしまいます。
これでは、障がい者本人も従業員も不幸な結果となってしまいます。配属される障がい者にはどのような特徴があり、どのような配慮を必要としているのかをしっかりと職場へ伝えておくことが重要です。
3.独自の採用活動
障害者雇用でミスマッチの少ない成果を出すためには知識と経験が必要となります。知識と経験の浅い状態で障害者雇用を進めると上記の①や②のような結果を招きかねません。
障がい者の採用には「採用基準の設定」「募集活動」「書類選考」「面接」「採用」「配属先への連携」「本人と周囲へのサポート」などなど。
これらを経験値の少ない企業が独自で取り組むにはかなりハードルが高くなってしまい、失敗を重ねてしまいます。その結果、企業内では障がい者に対するイメージが悪くなり、最悪な場合は障害者雇用の取組みそのものを止めてしまうことになってしまいます。
それでは、そういった企業は知識や経験を積むまで成果の出る障害者雇用は出来ないのでしょうか。
いえ、決してそうではありません。行政機関で企業の相談に対応してもらえる窓口(ハローワーク、職業センター等)があります。また、最近では民間企業で障がい者の採用・雇用のアドバイスやコーディネートをしてもらえるところも増えてきました。それら外部機関を活用することをお勧めします。
いかがでしたでしょうか。次回は障害者雇用に成功している企業の特徴についてお話ししたいと思います。