前回の続き。

−利用者様同士の繋がりもリワークにとってプラスになることが多いということが分かりました。企業様からのご相談の状況はいかがですか。
槇原氏:はい。現在はまだ企業様からのご相談自体は多くはないのですが、私たちから企業にご訪問させていただき、休職者支援に関するニーズの聞き取りを進めているところです。
実際にお話を伺う中で、「どう支援すればよいのか分からない」「復職後の関わり方に悩んでいる」といった声が聞かれ、企業としても模索している状況がうかがえます。
また、休職者が復帰した際に「以前の元気な状態に戻っている」と企業様が捉えられるケースもありますが、実際はそうでないことが多いです。メンタル不調からの回復は段階的なものであり、周囲の理解とサポートが欠かせません。私たちは、そうした認識のすり合わせや、企業と当事者双方が安心して社会復帰に向かえる環境づくりを一緒に考えていくことを大切にしています。
−では、復職にあたり企業と当事者はどのようなことを認識しておくと良いですか。
槇原氏:企業のご担当者様においては、復職すれば以前の元気な状態に戻っていることを期待することもあるかと思います。そうなると、つい復職前と同じ仕事量や役割を任せてしまいがちです。一方で、本人も「休職していたことに対する負い目」から、期待に応えようと無理をしてしまうことがあります。逆に復職後の対応として、企業様が気を使い過ぎてしまい、業務の配分などがうまくいかないといったケースもあります。そのような状態でご本人は苦しみ、精神疾患を再発してしまうことも少なくありません。
このような両者の認識のギャップを埋めるため、当事業所のような支援機関が間に入り、ご本人の体調や状況などを理解していただけるよう説明を行いながら、業務を行う上で必要な配慮事項などを助言させていただくことも、一つの解決策かと思います。
また、当事者に関しても、復職してからも自分の心身の状態にしっかりと目を向ける姿勢を忘れないようにお話をいたします。休職による遅れを取り戻そうとして仕事をこなすことに必死になりすぎてしまったりして、自分に必要以上のプレッシャーをかけてしまう当事者は少なくありません。
プレッシャーをかけたり焦りを感じてしまうことも当然のことだと思います。しかし、結果的に再発してしまってはいけませんので焦らず、自分の体調に耳を傾けるようにしてもらいたち思います。ときには第三者の目を活用することで自分では気づくことができなかった状態を認識するきっかけにすることができます。

−とても大切なことだと改めて気づきました。やはり、近年は精神疾患の罹患者は増えているのでしょうか。
槇原氏:はい。年々、メンタル疾患を発症する方は増えていますし、再発してしまう方も少なくありません。精神疾患の回復は、一足飛びではなく、少しずつ段階を経て進んでいくものであり、時間がかかることもあります。そのため、治療やリワークプログラムにより健康な状態になったとしても、自身の健康状態を把握し、普段から気を配ることを忘れないでほしいと思います。
また、発達障がいを由来とした二次障がいとしてメンタル疾患を発症した方も多いと感じています。どうしても特性により周囲とのギャップにしんどくなってしまうことが理由のひとつに挙げられます。
当法人では就労移行支援事業を通じて得たこれまでの経験から「診断名にとらわれない支援」という考え方を大切にしています。どうしても診断名だけで一括りにされやすいために、実は本人に適した支援や配慮が受けられないといったことが起こりがちです。障がい特性や症状にはグラデーションがありますので、表面的な診断名にとらわれず、アセスメントを通してご本人の特性や環境との相性を見極め、適切な支援や配慮につなげていくことが、社会復帰に向けた支援として重要だと考えています。
−こころのリワークセンター大阪本町の利用方法について教えてください。
槇原氏:当センターは福祉サービスとしてご利用していただけます。
サービスの利用に必要となる福祉サービス受給者証の発行には掛かりつけの主治医の意見書をもとに最寄りの役所にある障がい者福祉課で手続きを行なってください。
先ほどもご質問にお答えしましたが、企業担当者からのご相談も受け付けております。福祉サービスになりますので、当事者が主体的に手続きなどを行なっていただくのですが、早い段階で企業が関わっていただけると、復職へのロードマップも描きやすくなると思います。
−ありがとうございます。では最後に、現在休職中の方と企業担当者にひとことずついただけますでしょうか。
槇原氏:はい。まず休職者の方にお話させていただきます。
現在とても辛い状況にある方もいらっしゃると思います。我々のセンターではこれまでの経験や医学的知見から、じっくり自分の人生や思いなどを見つめ直すことや、他者との交流の中で様々な気づきを得ることができる場を提供しております。福祉と聞いてハードルが高いと感じこともあると思いますが、今の自分が大変だ、乗り越えたいと感じているのであれば、まずは気軽にご連絡いただければと思います。
続いて企業の休職・復職担当者の方にお話させていただければと思います。
メメンタルに不調を抱える従業員と向き合う中で、担当者としてご負担やご不安を感じられる場面もあるかと思います。企業だけで解決が難しいケースも多いと思います。そのようなときに我々の専門的な視点を加えてもらうことで最良の方法を一緒に導き出すことができると思いますので、ぜひご連絡をお待ちしています。
−槇原さん、本日はたくさんのお話をお聞かせいただきまして本当にありがとうございました。

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