ひとり言です。
障がい者雇用に取り組んでいる企業には『障がい者雇用担当者』が配置されていると思います。前職から数えてこれまでに数百人の『障がい者雇用担当者』とお会いして、お話を聞かせていただきました。
私が思う『障がい者雇用担当者』とは
- 障がい者の求人募集、採用活動を行う担当者(主に人事担当者)
- 配属先の直属の上司、指揮・命令を行う先輩や同僚(日頃から関わりが多い)
- 勤務する障がい者を職場でサポートする支援員および相談員
が主に該当すると考えます。
在籍する組織によるところはありますが、『障がい者雇用担当者』の多くは、勤務する障がい者の職場対応以外にも並行して担当する職務を複数抱えていますので、「専属」という方は比較的少ないように感じられます。障がい者の法定雇用義務のある企業は全国に117,239社あります。(※令和6年障害者雇用状況の集計結果)従業員数の大きな企業を筆頭に、法定遵守を第一の目的として障がい者の雇用を進めています。障がい者を雇用するための求人募集や採用活動を任命される多くは各企業の人事担当者になります。
時代はAIやITの活用が一般的になってきたとはいえ、企業において重要なリソースはやはり“人材”です。時に“人財”と表記されるように、人は期待された役割を通して企業に貢献し、それとともに人も企業も成長することを意味します。そのため、人材の採用担当者とは企業にとって要職であると考えます。また、近年は少子高齢化に伴って労働力の減少が大きな社会課題となっています。
組織にとって最適な人材採用はこれまで以上に重要かつ事業を継続させるための経営戦略的な視点がより一層求められると感じています。
障がい者の採用についても企業間の採用競争が激しくなっています。
企業は『障がい者雇用担当者』に対して、法定雇用率を満たすための雇用の実現を目標のひとつとして課します。人事担当者はその目標を達成しようと他の業務と並行して、求人募集・採用活動に励みます。ところが、配属を想定する部署へ雇用に関する協力を求めてもスムーズに進むことばかりではありません。障がい者の受け入れを打診された部署の責任者は「無理」「できない」理由を並べて断ります。
人事担当者にとっては会社からの命を受けて取り組んだにも関わらず、部署からは友好的な態度は示されることが少ないため、途方に暮れてしまいます。結局は自分の所属する部署で雇用は進められますが、全ての障がい者を受け入れることは現実的ではありません。いずれは、他の部署にも受け入れを働きかけますが、ほとんどが協力的でない態度を目の当たりにしてしまったために、障がい者雇用に対する人事担当者の心は徐々に疲弊していきます。
会社は人事担当者に障がい者雇用に関する役割を課すだけで、雇用が進むための後押しをしてくれないところが少なくありません。こうして、障がい者雇用に対するネガティブな気持ちを抱き、組織の中で孤立してしまう人事担当者が誕生します。
これは、私が過去にお会いしてきた数多の人事担当者が体験してきた内容です。
はっきりと口には出しませんが、「損な役割だ」といった表情をした人事担当者を多く見てきました。仮に、企業として人事担当者の役割を応援し、前へ進めるための働きかけをしてくれているのであれば別ですが、『障がい者雇用担当者』の置かれた環境が望んだものでなく、会社からのサポートがないことが理由として、自分の仕事に対して「損な役割だ」と感じながら職務に就いているのなら、決して良い障がい者雇用にはつながらないだろうと考えます。
経営層が障がい者雇用の重要性をどの程度認識しているのかを測るひとつの指針は『障がい者雇用担当者』が自身の役割の重要性をどの程度認識しているかだと思います。
繰り返しになりますが、人材の採用・雇用に関わる職務は企業にとって大変重要な役割です。中でも障がいのある人材は、できることとできないこと、得意なことと苦手なことの差が大きく、任せられる業務が限定的になる方も少なくありません。また、業務を遂行するために求める理解や配慮の提供も職場にとっては本来の職務以外の対応にもなります。
しかしながら、障がいのある人材が自分の能力を発揮して任せられた業務で活躍しているような職場ってとても素敵だと思います。障がいのある人材が活躍するために汗をながす『障がい者雇用担当者』は本当に素晴らしい役割だと感じます。
障がい者雇用の現場も大きく変化してきました。
これまでは担当者ひとりがその役割を背負っていた場面が多かったのですが、最近では障がい者の雇用する数も増えてきたため、組織全体として取り組みを支えるような様子へと変わってきました。『障がい者雇用担当者』は社内外とのつながりを作り、それらを活かすような全体構成で雇用を実現させていきます。(下記参考図)
素晴らしい役割であることを認められにくい『障がい者雇用担当者』ですが、その仕事に「誇り」と「情熱」を持って活躍している担当者も世の中にはたくさん存在します。そういった『障がい者雇用担当者』を応援したいと思います。
少し意地悪な質問ですが、
「我が社にとって障がい者雇用」とは、
- A,法律を守るための数合わせで構わない。
- B,障がいがあっても期待する仕事をしてもらう存在。
なのかという問いに対して、胸を張って答えられる経営者ってどの程度いるのでしょうか。





