障がい者の雇用での『業務切り出し』のポイントは『思考をストップ』です ②

障がい者の雇用での『業務切り出し』のポイントは『思考をストップ』です ①

2019.06.20

前回に引き続き、障がい者雇用の際に人事担当者が頭を悩ませるひとつとして挙げられる『業務切り出し』に関するお話をしたいと思います。

企業は法律義務化されている障がい者法定雇用率を守るために障がい者を採用し、雇用定着のために努力を続けています。人事担当者の役割は非常に多岐にわたります。「求人募集」「従業員研修」「環境整備」「情報収集」「助成金申請」「支援機関との連携」など。
それと、配属予定の部署からの『業務切り出し』です。現在、障がい者雇用の経験値を積み重ねている企業でも、取り組み当初は必ずと言って良いほどこの『業務切り出し』に苦労をされます。

『業務切り出し』のポイント

これからのお話にはひとつ前提にしたいことがあります。
それは、就労移行支援事業所のような障がい者の支援機関を活用するという点です。私が想定しているこれからの障がい者雇用というのは、知的障がい者や精神障がい者・発達障がい者のような、これまでの障がい者雇用に比べて周囲の理解や協力が不可欠な雇用を指します。これらの特性のある障がい者の多くは周囲の間違った思い込みや理解不足により、働く能力があるにもかかわらず働けない人材として眠った状態にあります。

一方で企業に対してその間違った思い込みや理解不足を解消するように話をするのは簡単ですが、実行してもらうには時間と努力が必要です。なぜなら、誰からも教えてもらう機会なんて与えられてこなかったのですから。それらを補うためにも、国が認定した就労移行支援事業所のような支援機関を活用して障がい者の採用をすることは非常に有効的でメリットが高いことだという考えからになります。

思考をストップ

障がい者の採用活動を進めていくと、いずれかのタイミング(求人、エントリー、実習 など)で『業務切り出し』をしなくてはいけません。
『業務切り出し』の際に人事担当者はこれまでの経験や知識を総動員して配属先部署と連携を取りながら障がいのある方に担当してもらう仕事の準備をします。
この時に

  • この仕事をしてもらっても大丈夫だろうか
  • 〇〇の障がいだからこの仕事は無理だろう
  • 周囲とのコミュニケーションが必要だからこの仕事はやめておこう

と考え過ぎてしまうことが少なくありません。
ですので敢えて言います。『思考をストップ』してください。

健常者と違って、配慮が必要であったり役割も限定的な範囲になってしまうこともあります。従って、「あれはダメ」「これも無理」という考えが邪魔をして仕事を絞ってしまい、結果的に「担当してもらう仕事がないので、当社では障がい者の雇用はできません」という人事担当者のセリフを嫌というほど聞いてきました

「納付金(罰金)を支払っているから」「障がい者雇用は義務だから」ということだけではなく、企業の責任と社会貢献という思いの強い人事担当者であれば、そのような言葉を発するのは辛かったことでしょう。でも、もう心配はいりません。そのような『思考をストップ』することで障がい者の雇用を進めることができます。障がい者のことを心配する気持ちをいったん横に置いておき、考える方向を変えてみてください。例えば、

「会社として助かる業務」

  • 特定の部署や担当者の残業が減る
  • 偏った業務負荷を改善できる
  • これまで手を付けられなかった業務

という視点から『業務切り出し』を行ってください。または、

「試験的な業務」

  • 部署や担当者ごとに点在していた業務を集約
  • 当たり前だった業務の見直し
  • 新たな事業の新たな仕事

といった方向も良いでしょう。

では、なぜ『思考をストップ』して業務を切り出すのか。
それは、前段にてお話しをしました就労移行支援事業所が登場します。就労移行支援事業所は障がい者に関する専門家でありプロの集団です。少なくとも、企業よりも障がいのことをよく知った方々になります。その方々に切り出した業務と障がい者のマッチングをしてもらってください。

採用を検討することになる障がい者Aさんの支援をしている就労移行支援事業所は、本人の特性や特徴をよく理解した存在です。そのプロの方たちに切り出した業務を相談することで、Aさんの能力に適した業務を選定してもらうことができます。

この手順を踏むことで雇用後のミスマッチを防ぐこともできます。
付け加えるなら、『思考をストップ』して切り出した業務は、採用前に設ける実習期間のタイミングで試してください。実習を活用する事でより精度の高い業務の切り出しと雇用のミスマッチ防止につながります。

『業務切り出し』のその後

ここからは、その先のお話になります。
障がい者雇用のために切り出した業務というのは、どうしても雑用的な業務や補助的な業務が多くを占めることがあります。
今後、企業の中でAIやRPAの導入により、仕事の様式や内容が大きく変化してきます。私はAIやRPAが「障がい者の仕事を奪う存在」になるとは考えていません。どちらかというと「障がい者のできない部分を補ってくれる存在」だと認識しています。実際にその場面を見たことがあるので、企業はAIやRPAの導入は障がい者雇用にもメリットがあると認識してもらっても良いのではないでしょうか。(助成金制度があれば進むと思います)

企業がいつまでも「雑用的な業務や補助的な業務=障がい者の仕事」という捉え方をしているのであれば、いずれはAIやRPAに役割が移ることになりますので障がい者の居場所はなくなってしまうかもしれません。
近い将来を見据えて、今のうちから「生産性のある業務=障がい者の仕事」を生み出していかないといけません。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム