1つでも当てはまると見直しが必要な自社の障害者雇用[2/2]

前回は、自社で取り組んでいる障害者雇用がこれらにひとつでも当てはまるようであれば、早急に見直しをしないと手遅れになるかもしれない“時代遅れ”な5個の障害者雇用事例のうちの2個までお話ししました。

今日は、残りの3個の事例についてお話をしていきます。

③ 社外にハローワーク以外で相談できる相談先がない

障害者雇用の相談先として最も多く挙げられるのがハローワークです。求職活動中の障がい者が最初に相談に行くのもハローワークですから、人材の情報もたくさん抱えています。

でも、ハローワーク以外に障害者雇用の相談ができる先を知っていますでしょうか。

ハローワークの主な業務はご存知のように、企業が提出している求人情報に適した人材を紹介してくれるまでで、実際に企業が必要としている雇用定着サポートや職場環境の作り込み、従業員に対しての研修などは管轄外となってしまいます。

今後、身体障がい者よりも雇用が難しいと言われる精神・発達障がい者の採用を上手く進めるためにはより専門性の高いサポートが企業としては必要となります。理想としては、自社の従業員に専門性の高い知識を持たせることができればいいのですが、人事担当者であっても日常の業務にプラスして障害者雇用に必要な知識を習得させるのは非常に厳しいと感じます。障害者雇用に役立つ知識は、経験則からの習得が一番望ましいです。ということは、雇用を進めながら、ひとつずつの積み上げとなります。

一先ず、それらの不足部分を補うためには、ハローワーク以外の専門機関の力を借りて障害者雇用の作り込み作業をしてください。

相談先としては、障がい者就労移行支援事業所などの「福祉機関」、都道府県ごとに設置されている「職業センター」や「障がい者就労・生活支援センター」があります。また、最近では、障がい者に特化した「人材会社」も相談を聞いていただけると思います。パソコンで検索していただければ近くにある事業所が見つかるはずです。

10年近く新たな障がい者採用をしていない

障害者雇用の取組みに関する話をお聞きする企業の中には、10年ほど新たな障がい者の採用を実施していないところがあります。理由としては、障がい者として雇用している方が上手く定着していて新たな採用をしなくて良かった。従業員数に変化がなかったために障がい者の雇用数も一定のままで過ごせた。健常者だった従業員が事故や病気で手帳取得者となった。などが挙げられます。

そのような状況が長く続いたとしても、いつの日か定年退職などにより法定雇用率に影響を与えるときがやってきます。健常者と違い障がいを持った方たちは、ある時、急に体調が悪くなり退職してしまう不安定さを持っているのも事実だからです。

10年も新たな採用活動をしていない場合、環境の変化に戸惑ってしまうと考えられます。

10年前であれば、障がい者の採用ターゲットは身体障がい者でした。採用を進める企業も今ほど多くはなく、採用競争も厳しいものではありません。

採用の相談もハローワークにお願いしておけば、希望の人材を紹介してくれてもいたでしょう。

現在は、地域や業種、仕事内容によっては身体障がい者を希望してもなかなか採用が進まない状況にあります。その中で精神・発達障がい者の方たちからのエントリーの多さに驚かれると思います。人事担当者が驚くのであれば、受入れ先となる従業員からの理解をもらうのに、更に苦労されると思います。

もし、あなたの会社がここ10年ほど新たな採用を実施していないようであれば、「③」でお話ししましたような専門機関へのご相談をお勧めします。

⑤ 都心部での障がい者採用しか経験がない

ここ数年、東京都や大阪府、愛知県などがある大きな都心部では、障がい者の採用をしたくても希望する人材に巡り合うことができない状況だと言われています。

理由としては、企業の求人数が障がいを持つ求職者の数を上回っている(過当競争)状態だからです。もう少し付け加えると、都心部で働ける身体障がい者を採用したいが、現実として求職活動をしている障がい者は、重度の身体障がい者だったり、雇用定着に専門性が求められる精神・発達障がい者だったりするから、今の職場環境では思うように雇用が進まないといったところです。

実は、このような状況下にある企業は、地方在住の障がい者で自社の希望に適した人材を採用するといった動きが見られます。企業の少ない地方であれば、働く能力があるのに働き先が少ないために、雇用されていない人材が眠っています。そういった人材をターゲットにした採用活動のことです。

このような地方在住の障がい者を採用する場合、片道数時間を掛けて通勤することはできませんので、テレワークによる在宅勤務やサテライトオフィスによる就労などの新しい勤務形態が生まれています。

現在、国や厚生労働省は、「働き方改革」の一環としてテレワークなどの新しい働き方を推奨しています。これらテレワークの活用は障害者雇用だけではなく、出産・育児や高齢者介護の家族を抱えた従業員のための新しい働き方の構築も実現することができます。

5個の事例をご紹介しましたが、自社に当てはまるものがありましたら、一度立ち止まって見直しをする時間を設けてみてください。

障がい者の雇用環境は目まぐるしいスピードで移り変わっていますから。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム