障がいのある「人」、採用する「企業」の双方を支援する就労移行支援事業所。
どんなことを支援してくれるのか知らない方も多いため、簡単な概要に加えて期待できることもご紹介したいと思います。
就労移行支援事業所(以下、事業所)とは、企業就労を目指す障がいのある人を対象に2年間の有期限で職業訓練や就職活動、就職後のフォローアップ等の支援を行う、障がい者総合支援法に基づく障がい福祉サービスです。最近は障がい種別を固定した特化型の事業所も増えており、事業所の特色は千差万別です。(私の事業所も自閉症・発達障がいに特化しております。)
事業所の全体像を掴むため数字で見てみると、平成28年3月現在では全国には3,149箇所あり、大阪府は210箇所、兵庫県107箇所、京都府54箇所となっています。運営団体は規制緩和等があり、以前は非営利団体(社会福祉法人やNPO法人)の運営がほとんどでしたが、最近は営利団体(株式会社等)の参入が年々多くなっており、3,149箇所のうち699箇所(22.2%)は営利団体です。
事業所を利用している障がいのある人については、全国に31,679人おられ5年ほど前は知的障がいのある人が50%以上を占めていましたが、現在の50%以上の人は精神障がいのある人となっており、その数は年々増加傾向にあります。(利用者の年齢としては、昔も今も30歳未満の方が50%弱となっています。)
厚生労働省は、障がい福祉の施策を推進するにあたり、少子高齢化や人材不足、ダイバーシティ等の観点から、障害者雇用の促進には特に力を入れていきたいと考えているようです。
そのため、障害者雇用促進に関わる助成金の充実やハローワーク等の労働局による人的サービスの充実が図られており、就労移行支援事業に限らず障がいのある人の企業就労に向けた取り組みは様々なところで盛り上がりを見せています。
就労支援サービスの内容について
では、事業所における具体的な就労支援サービスについてご紹介したいと思います。
障がいのある人は、障がいのない人に比べて苦手なことが多い場合や得意なことと不得意なことの差が激しい等の特徴が見られます。また、経験不足なことも多く、人は経験から学んでいくことということを考えれば、経験不足ゆえにできないことや知らないことも多い場合があります。(もちろん、個人差はありますし、十人十色かと思います。)
そのため、得意なことを伸ばしたり、色々な経験ができるプログラムが提供されています。
以下が主な内容です。(事業所によって違いはありますが…)
- PC作業、軽作業、清掃等の業務スキルの獲得と向上を目指した支援
- 挨拶や身だしなみ、報連相等のビジネスマナー習得への支援
- 体調管理や投薬治療、カウンセリング等の生活・医療面における支援
- 障がい受容や職業適性等、自己理解(自己分析)に関する支援
- グループワークやロールプレイ等におけるコミュニケーションや社会性を身につけるための支援
- インターンシップにおける日程調整や職場への同行支援
- 面接練習や履歴書の添削、ハローワークでの求人票検索のサポート、面接同行等、就職活動に関わる支援
- 就職後の職場適応を目指した定着支援(定期的な職場訪問、本人との面談等)
最近は、どこの事業所も企業でのインターンシップを提供しているところが多いです。
インターンシップでの実体験は、障がいの有無に関わらず就労のイメージをより具体化することができ、採用後のミスマッチを防ぐという意味でも効果は大きく、障がいのある人も企業の担当者もインターンシップでお互いを無理なく知ることができているようです。
企業支援の内容について
次に、企業支援についてのご紹介です。
具体的なサポート内容としては以下のとおりです。(もちろん、ここでも個々の事業所によって違いはありますので…)
- 障がいのある人に適する業務の洗い出し、業務の再構成
- 障がいに対する理解啓発のための社内研修(障がい特性の理解、接し方、指示の出し方等)
- 視覚的に分かりやすく指示を出すための手順書、業務マニュアル、スケジュール等の作成方法や運用方法のサポート
- 雇用管理や人材育成、キャリアアップに対する相談
- 就労定着を図るための定期的な職場訪問、担当する社員の方のサポート
- 家族や医療機関等との必要に応じた連携や橋渡しの支援
これらの内容は、主には採用前や雇用初期にサポートを受ける場合が多いです。
就労後は、障がいのある人が業務に慣れて少しずつ職業自立をしていくことを考えれば、受け入れる最初の段階で障がいのある人に適する「仕事内容」と「職場環境」を検討していくことが重要です。事業所の支援員に相談しながら検討していくことで職場定着も円滑に進んでいくことができます。
(定着支援は、事業所によってサポート期間(半年間、1年間、期間を定めず等)に違いがあります。)
「障がいのある人」「企業」への支援内容に強みと弱みはありますが、利用することで事業所とよきパートナーとなることができれば、双方にとってメリットは必ずあります。
ぜひ、色々な事業所を見学していただき、希望に沿った支援内容を提供されているかリサーチされるとよいと思います。
障害者雇用を進めるあたり、まずはパートナー探しから始めてみるとよいのではないでしょうか。