毎年4月2日は「世界自閉症啓発デー」。
皆さんは、ご存知ですか?
4月2日の当日は、自閉症のシンボルカラーである「青色」が各地でライトアップされ、私の職場がある大阪では、大阪城天守閣や通天閣、万博公園の太陽の塔など、各地のランドマークが青一色になります。
(青色は、「癒やし」や「希望」の意味が込められているそうです。)
また、4月2日から8日は、厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」となっていて、日本各地で自閉症や発達障がいについて啓発する活動やセミナーなどが行われています。
そんなことで今回は、「発達障がい」がテーマ。
発達障がいの障がい特性は3つ組みの特性を言われ、その中のひとつである「コミュニケーション」について取り上げます。
個別的な関わりをポイントに、日々の接し方もお伝えしていきます。
発達障がいの特性
まず最初に、障がい特性について触れておきたいと思います。
以下は、少し前に書いたコラムです。
主に「自閉症スペクトラム」の特性を中心にまとめています。
発達障がいは、先天的な脳機能の障がいです。
ポイントは「生まれ持った障がい」ですが、診断の時期は人によってそれぞれで、幼少期の人もいれば学齢期、社会人になってからという人もおられます。
また、発達障がいは、上記の「自閉症」「ASD(自閉症スペクトラム)」の他に、「ADHD(注意欠如多動性障害)」や「LD(学習障害)」もあります。
一般的に使われている発達障がいは、総称として使われていることが多いかと思います。
「理解」「表現」「やりとり」の特性
本題の「コミュニケーションの障がい特性」は、「理解」「表現」「やりとり」の3つに分けて考えることができます。
特に職場で多いのは、「理解」の場面でしょうか。
「理解」ですから、上司から発達障がいのある社員の方に「指示」を伝えた際、正しく指示理解しているかは業務上とても重要なことであると思います。
また、「表現」「やりとり」も重要なポイントであり、「指示したことを理解しているかどうか」を確認する際に、返事や復唱、報連相といったコミュニケーションは日々発生するものです。
先述でも触れてますが、発達障がいは「脳機能の障がい」です。
「脳の『情報処理』に機能障がいがある」といった状態のため、コミュニケーションをとる際に含まれるたくさんの情報(業務の内容や手順、注意点など)を頭の中で処理する際(自分なりに噛み砕いて理解したり、理解した上で業務を進めたりなど)に『機能障がい』が起こっています。
これは、人によって障がい特性の程度もそれぞれですから、「一概にこうすればいい!」とは言い切れないところですが、コミュニケーションをとるときに使う「情報(業務上の情報)」が発達障がいのある本人にとって「どのように伝わっているか」については、よくよく観察して、把握しておく必要があると思います。
個別的な関わり
今回のサブタイトルは、「個別的な関わり」。
個別的ですから、コミュニケーションの取り方や情報処理の仕方を個別的に観察して、特徴をつかんでおくことが大切となります。
コミュニケーションの3つの特性である「理解」「表現」「やりとり」に合わせて、関わり方のポイントをまとめていきます。
「理解」→シンプルに分かりやすく伝える
理解は、発達障がいのある人がどのように理解しているかということ。
発達障がいの人によっては、理解(インプットの仕方)は個々それぞれです。
指示をする社員の方にとっては、「どのように分かりやすく伝えるか」が重要となります。
ポイントは、「シンプル」に伝えること。
簡潔に、端的に、一言二言で指示ができると理想です。
ただ、業務上の情報をシンプルに伝えることは、そんな簡単なことではなく、業務の内容、手順、注意点など、伝えたい情報は上げればキリがないものです。
ここでの「シンプル」は、一番最初の情報伝達を意味しています。
つまり、一番最初に伝える指示は、端的に伝え、発達障がいのある人のインプットの仕方を様子見します。
どれくらいわかっているかとか、どこが伝わっていて、どこか伝わっていないかとか、まずは観察して把握するようにします。
そして、その上で伝わっていない情報を少しずつ伝えるようにします。
まとめると、業務上の情報は「情報をコントロール」する中で伝えること。
「小出しにして伝達する」ことのほうが伝わりやすいように思います。
「表現」→本人が伝えやすい方法で表現してもらう
表現とは、発達障がいのある人が自分の考えや気持ちを伝えること。
口で言ったり・書いたり・メールしたり、作業をやって見せたりなど、自己表現することを意味しています。
これも一概に言えることではないですが、発達障がいのある人で「受け身」な人は多いように思います。
職場で自分の意見をうまく言えず、溜め込んでしまう場合も多く、結果的に職場でうまく適応できない場合も少なくないような気がします(あくまで、私の現場感覚ではありますが…)。
以前のコラムで、合理的配慮のことを書きました。
この記事では、「合意形成の難しさ」を書いていて、継続的に話し合うことをポイントとしています。
発達障がいのある人が自分の考えや気持ちを伝える際、できるなら「本人の伝えやすい方法」を採用していただけると良いように思っています。
口頭で言う、メールやチャットを使う、ふせんや手順書に書き込んで伝える、やって見せて(実演して)伝えるなど、本人にとって「どのやり方が伝えやすいか」を事前に聞いておくことで本人の伝えやすさも少しは良くなるはずです。
また、1on1などの定期的な面談も良い方法です。
週1回、月1回などで定期面談を行い、お互いに時間をとって話し合うのも良いことですし、発達障がいのある人にとっては定期的に面談があると思えることで「見通しを持つことができる」という安心感が得られ、「次の面談までに話したいことを考えておこう」と思える人も多いかと思います。
合理的配慮でも取り上げていますが、「意思の表明」は発達障がいのある人にとって難易度が高いことです。
でも、周囲の人が「難易度が高いことを理解しておくこと」さえ理解できていれば、本人との距離感は少しずつでも縮まっていくと思います。
「やりとり」→メモや議事録、写真など形に残して情報整理を
最後のやりとりは、お互いの考えや気持ちをキャッチボールすること。
うなづいたり、相づちしたりと、受け答えすることでやりとりは活性されていくものです。
ただ、発達障がいの人は、このやりとりに苦手さを感じている人は多いと思います。
タイミングを見てうなづいたり、相手のからのボール(発言)をすぐに投げ返すことができず、黙り込んでしまったり、すぐに自分の意見が思いつかなかったりすることも多いように思います。
また、ADHDやASDの特性もあって、思いついたことを衝動的にたくさん話す人もおられたり、一方的に自分の考えや気持ちを発言する人もおられます。
そのような場合は、話し合いの内容が本題からズレてしまったり、話したいことが要約されていなくて話がまとまらないってこともあるかと思います。
ポイントとして、口頭でやりとりした時は話し合った後に「メモ」「議事録」などで「記憶→記録」にしておくことが良いです。
もしくは、ホワイトボードなどに話し合ったことを書き出していき、話が終わった時にホワイトボードを「写真」に収めてお互いで写真を保管しておくこともよいかもしれません。
(完成形を写真にしたり、工程を動画撮影することでも良いかと思います。)
メールやチャットなどはやりとりが形に残るため、発達障がいの人にとっては情報が整理しやすく、あとで振り返ることもでき、本人にとっては理解しやすいようです。
できるなら、やりとりはメールなどがよいですが、口頭での話し合いが多い場合は少しだけでもメモや視覚的なものにしてまとめ、お互いで共有できるとコミュニケーションのズレも少なくなるように思います。
関わり方のポイントは、以上となります。
発達障がいのある人で、コミュニケーションに苦手さを感じている人は多いと思います。
でも、苦手さを感じているだけで、「話したい」とか「関わりを持ちたい」とかは、皆さん思っていらっしゃいます。
障がいの有無に関わらず、コミニケーションはどうしてもズレが生じやすいものです。
業務をスムーズに進め、チームワークで取り組むためにも、お互いにとって円滑なコミュニケーションの取り方を試行錯誤し続けることが大切なように思います。