人事なら知っておくべき”障がい者の職場定着を支援するアレコレ”(準備編)[1/5]

私のミッションは一人でも多くの障がい者が雇用を通じて企業の中で自分の居場所を見つけてもらうことだと思っています。

これは、労働者不足といわれている現在にあって、働く能力があるにもかかわらず雇用にいたらない障がい者がまだまだたくさんいます。

特に精神障がい者の人口約392万人中雇用されているのは約4.2万人という実数は身体障がい者と比べても非常に低い数字となっているからです。(身体障がい者の雇用数は人口約394万人中約32.8万人

このような状況の中、障がい者法定雇用率が未達成な企業の経営者や人事担当者は日々情報を集め、採用活動に取り組んでいます。

また、現在法定雇用率を達成している企業であっても、雇用数の維持や新たな雇用場面創出の課題に直面しています。

今後も企業にとって障がい者を雇用するという義務は緩和されることなく、イメージとして雇用に結びつけにくい精神障がい者の雇用を対象とした求人活動を現実として考えていかなくてはなりません。

それでは、これからより一層障がい者の採用が難しくなる時代を迎えた時に雇用義務のある企業はどのような取組みをすれば定着に結びつけることができるのでしょうか。

今回ご紹介するいくつかの取組みは、すべての企業に当てはまるものではありませんが、雇用を進めていくために押さえておいてほしいポイントとして参考にしていただきたいと思います。

障がい者の採用を考えた時に、どこから手を付けていけばよいのか分からない人事担当者が多いと思います。そのため、闇雲な採用活動を始めてしまうのですが、当然上手く結果を残すことができません。

障害者雇用の目的の一つとなる「職場定着」を実現させたいと考えるのであれば、採用計画を立てることが重要な手順となるからです。

1.専門機関への相談

実際のところ、障害者雇用を独自で取組んだ企業で成功をしているという話を聞いたことがありません

採用活動当初は障がい者に関する情報が不足している状態ですので、軽度な身体障がい者を募集する求人から始められると思いますが、想定しているような求職中の障がい者からのエントリーはなく、時間だけが無駄に過ぎていく状態となります。焦った結果、適性に合わない人材を採用してしまい、配属した職場からは「話が違う」「邪魔だ」とクレームが発生。障がい者の方も働きづらくなってしまい退職となり、残されたのは「人事担当者の報われない努力」と「障がい者へのマイナスイメージ」となってしまいます。

障害者雇用で実績をあげている企業のほとんどは専門機関への相談からスタートさせます。特にここ数年障がい者の採用活動を行っていないようであれば尚更です。

採用には法律助成金制度、求職活動をしている障がい者に関することなど、新しい情報が必要になります。また、現在の障害者雇用状況等も踏まえて、何から始めていけば良いかといった点も教えていただけます。

障害者雇用に関する相談に対応してもらえる先はいくつかありますが、最初は行政関連の専門機関が良いと思います。費用も掛かりませんし、しっかりと相談を聞いた上でアドバイスをしていただけます。

行政関連の主な専門機関
・ハローワーク
・独立行政法人高齢・障がい・求職者雇用支援機構
・障がい者就労・生活支援センター

2.従業員に向けた勉強会

 

次に障がいを持つ人材を採用する際に必要となります環境づくりに関する取組みです。

採用後に一緒に働いたり、配慮をしていただくのは従業員となります。従って、従業員の理解と協力がなければ障がい者の職場定着を実現することは不可能です。

でも実際は、採用をする理由も分からないまま一方的に「障がい者を受け入れるので仕事の指示と配慮をよろしく。」と言われてしまうだけです。これでは従業員も戸惑うばかりです。具体的な採用活動に入る前段階となるこの時点で従業員の方々へお話ししていただく内容は、「企業が障害者雇用を実施する理由」を説明することが第一となります。該当する企業は障がい者を雇用することが義務付けられており、法律を遵守するためには従業員の理解と協力が必要ですとお話ししていただくことになります。

言い換えれば、「障害者雇用をしないと法律違反となってしまうので協力をお願いします。」と会社として依頼をする機会を設けるということです。

それと従業員向けの説明時に大切なポイントがあります。

それは、「障害者雇用への理解と協力は、自分の職場を守ることにつながる。」という点です。自分が働いている会社は障がい者を受け入れることが決まっています。従業員からの協力がないままだと雇用は進みません。法律順守の立場からも逸脱した状態ですので、今の時代は社会的な責任から見ても企業イメージはマイナスとなります。延いては会社の業績にも影響し、自分の職がなくなってしまうことも考えられます。

当然、従業員に対して一方的に押し付けるのではなく障がいの有無に関係なく強みと弱みを理解し互いを支えあってほしいということです。

今回お話ししました2点は、案外見過ごされていることが多いと感じます。採用が進まないのには理由があります。是非、自社の雇用と照らし合わせてみてはどうでしょうか。

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ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム