前回の続き
【各種資格講習の受講・・・B~C】
年間の受講スケジュールが決まっているため、事前に申し込み・申請が必要
下記のようなものが該当します。
- 障がい者職業生活相談員
- 雇用環境整備士第Ⅱ種(障がい者)
- 精神・発達障がい者仕事サポーター
- 企業在籍型ジョブコーチ
- メンタルヘルス・マネジメント検定(Ⅰ~Ⅲ種)
詳細については以前にミルマガジンでご紹介しています。
これまでの障がい者雇用では、人事担当者が中心となって知識を身に着け、求人から採用活動、雇用定着まで実施しているところが多かったのですが、近年は法律の改正や雇用義務、社会的責任(ダイバーシティ、ESG、SDGs など)により企業ではたらく障がい者の数は年々右肩上がりです。
その結果、会社内で人事担当者だけが障がい者の特性に精通しているだけでは足りず、組織全体として障がい者雇用に理解を示し、活動を広げていかなくてはならなくなりました。
そういった状況を踏まえ、障がいのある従業員と接する職場で必要となる知識を習得することができます。
但し、ほとんどの資格が随時受講できるわけではないため、対象となる資格の講習スケジュールを調べておく必要があります。資格によっては、年に1回の開催や講習会場が東京・大阪といったものもありますので注意してください。
※活用できる助成金制度あり
【業務委託・・・A~B】
社内理解が深まりやすく、障がい者雇用への影響も大きくなる。
企業から障がい者が通う障がい者就労支援福祉サービスに仕事を依頼(業務委託)するというお話を聞いたことがあると思います。おそらく内職のようなお仕事をイメージした方も多いと思いますが、実は企業から業務委託される仕事は多種多様になっています。
例えば、内職以外では「清掃作業」「ベッドメイキング」「クリーニング」などは代表的な仕事です。他には、「データ入力・集計」「webデザイン」「プログラミング」などもあり、障がいのある方たちに任せられる仕事への可能性を感じます。
当然のことながら、委託先となる福祉サービスに業務を依頼するだけでは障がい者理解にはつながりにくいと感じますし、せっかくであれば自社のメリットになる関係性構築を目指してほしいと考えます。
仕事の依頼をするのであれば、作業方法や納期を伝えることに加えて、「丁寧な作業を要求」「作業工程の細分化」「数量確認が重要」など、「業務の特性」も説明しながら委託先の方と一緒に仕事の進め方を考えてみる。
「業務の特性」と「障がい者の特性」それぞれの理解のもと、業務の組み立てを図ることにより任せられる仕事の範囲を拡大させることができます。
また、委託先である福祉サービスから障がい者や指揮命令者がグループとなって企業内で就労する「施設外就労」という方法もあり、この場合であればより近い関係性を持って障がい者理解を深めることが可能です。
【障がい者実習・・・A】
“低い”ハードルの準備で、障がい者理解を“高い”水準で進められる。
「障がい者実習」とは、障がい者就労支援福祉サービスや支援学校などで就労訓練を積み、いよいよ就職間近な状態にある障がい者を一定期間企業で実際の仕事に就いてもらう、言わば『障がい者のインターンシップ』だと思ってください。
障がい者雇用に関する知識や理解を深める点では前項でお話しました「施設外就労」よりもボリュームダウンなイメージですが、「障がい者実習」は企業が進めやすいながらも、障がい者雇用に必要な知識と理解を深めるための効果が大きい取り組みのひとつです。
実習では、職業訓練を身に着けた障がい者の方たちが従業員と一緒に業務に就きます。当然ですが、事前に受入れの準備として担当業務の切り出しやマニュアル作成、来ていただく障がい者との顔合わせなどを実施した上で受け入れを始めます。期間は短いもので1週間程度です。
受入れ当初は、実習生はもちろん従業員の方々も緊張していますが、数日が過ぎると「案外大丈夫だ」という雰囲気になってくる企業が多いです。
やはり、実際に机を並べて同じ空間で仕事を共有した時に理解度は非常に大きく、それまでの準備やその後の振り返りなどを繰り返すことで知識と経験が身に着きます。
私の過去の経験でお話すると、法定雇用率を下回り数年間納付金(いわゆる罰金)を支払っていた会社が、実習の受入れをきっかけに社内理解が進み、障がい者採用が始まったということがありました。この会社に限らず、実習の受入れを積み重ねていけば組織の理解は想定以上に前進します。
また、日常的に実習の受入れ先を探している障がい者就労支援福祉サービスや支援学校は多く、企業側から実習の相談をすればすぐに対応していただけると思います。
もちろん、実習の受入れが初めてであっても丁寧に教えていただけますし、他にも活用できる制度や助成金についてのアドバイスをしていただけると思います。
以前ミルマガジンで実習のことを取り上げたコラムを書きましたので参考にしてみてください。
普段から障がい者と接する機会が少ない場合、思い込みや間違った知識が邪魔をしてしまい、職場での受け入れを拒絶してしまう組織は少なくありません。社会的な義務感が強くても、これまでの生活環境の中で蓄積された思い込みや知識を変えることは容易ではありません。
裏を返せば、組織の理解が深まることで障がい者の雇用が進んだ企業もたくさんあります。今回のコラムでご紹介した方法をご参考にしながら、正しい知識と理解ある障がい者雇用を実現してください。