【上前のひとり言】人を活かすとは何か──少子化時代における“はたらく”の意味

ひとり言です。(最近ひとり言が多くなってます)

先日、厚生労働省から2024年の出生数が公表され、過去最低の68.6万人、特殊出生率は1.15だということを知りました。私が産まれた1973年は第二次ベビーブームの頃でその年の出生数は209万人だったそうです。子供の頃を振り返ってみると、小学生のときは通っていた小学校の周りにもたくさんの小学校があり、どこも子供でいっぱいでした。中学生になると1クラス約40人の学級が6クラスあり、周辺の中学校も同じぐらいの学級数がありました。高校生になると1クラス約50人の学級が10クラスあり、もう少し大きな高校は12クラスありましたので、教室の中は生徒でパンパンでしたね。運動会も生徒が待機しているエリアには何百人という子供達がいて、世話をする先生も当時は大変だっただろうなぁと感じます。
そんな時代を生きてきた私ですから、毎年公表される出生数が前年割れを続け、とうとう自分たちが産まれた頃よりも子供の数が1/3程度になっているのだと非常に寂しいと感じつつ、この国の将来はどのようになるのかと考えさせられます。

少子高齢化に伴い国内の労働力も減少の一途を辿っています。企業による労働人材の確保は、これまでも厳しいと感じる中で、第二次ベビーブームである我々世代(2025年に50代前半〜半ば)が60歳を迎える2030年以降には、現在の労働総人口の10%程度が抜け落ちると言われています。DX化、AIの普及によりはたらく場面に変化が生まれつつも、会社組織の成長に欠かすことができない人の有用性を考えたときに、これまで以上に『人を活かす』こととはどのようなことなのか。

例えば「右の棚にある1,000個のBOXを左の棚に移動させる」という仕事を人にお願いする場合、どのような指示の出し方があるでしょうか。

  • A「右の棚にある1,000個のファイルを左の棚に移動させておいてください」
  • B「ファイルの使い勝手が良くなるように、右の棚にある1,000個のファイルを左の棚に移動させておいてください」
  • C「お客様に喜んでもらえる情報が詰まったファイルを社内で使いやすくするために右の棚にある1,000個のファイルを左の棚に移動させておいてください」

それぞれA、B、Cは「右の棚にある1,000個のファイルを左の棚に移動させる」行為は同じですが、指示を受ける側の受け取るイメージには違いが出てきます。

指示 内容 目的 価値
A 単なる作業指示 なし なし
B 作業+目的の明示 ファイルの使い勝手向上 目的の提示
C 作業+目的+価値の明示 社内で使いやすくする お客様に喜ばれる情報の活用という価値も含む

私は今年で52歳になりました。若い頃にはたらいていた職場での経験を振り返ってみると担当する仕事には「行う理由もない」ままに、ただ指示をされたから行っていたものが多かったように感じます。

普段、障がいのある方たちとの1on1で、任せられている仕事に身が入らない・集中できないといった相談を受けることがあります。
質問をしながらお話を聞いていくと、自分の実務(データを入力する、ファイル名を統一させる等)がどのような結果と結びついているのか・どのような役に立っているのか・業務全体がわからないので仕事に集中できない。といった声が上がってくることがあります。原因は障がいの特性由来の場合もありますが、障がいの有無に関係なく本来は自分が関わる仕事の全体像・どのような結果につながるのかを知っておいた方が、そういったことを想像しながらだと業務への意識も変わり、精度も上げることができると考えます。(若い頃の私はそれでも仕事をしていましたが、成果のことなど気にもしていなかったので自分はなんて浅いヤツだったのだと反省しています)

そもそも『人を活かす』って考えたとき、私の中では「単にはたらいてもらう」だけなのか、それとも「自分が求められている役割・なりたい姿をイメージさせ、精度の高い成果を出してもらうためにはたらいてもらう」がいいのかと問われればもちろん後者だなと思います。ただ、そのようになっていないと感じる職場が少なくないのも事実です。

また、考え方や物事の捉え方にも人によって違いがあります。聞いていることとズレた回答が返ってきたり、伝えたことが期待していたほど認識されなかったりなど、意思の疎通が上手くいかないことって日常的に感じることがあります。仕事で指示を出したが想定と違ったとき、つい「期待はずれ」の状態に意識が向いてしまって諦めてしまいます。もしくはできないレッテルを貼ってしまうことって簡単だなと思います。でも待ってください。
その前にお互いのことをどれだけ知った状態で仕事をしているのか考えてみませんか。自分であれば、簡単な仕事であっても指示を出す相手のことがよくわかっていない状態でお願いするのって少し勇気がいることだと思います。相手にしてみても指示を出す上司は「どんな性格の人なのか」「急に怒鳴られたらどうしよう」など、お互いのことがよく分かっていないとそのように感じたりすると思います。

今はスピード・効率・精度をより強く求められる時代です。
お互いのことを理解してからなんて時間の無駄だと言われるかもしれません。遠回りになりますけど、その人を知ることに時間をかけ、組織が期待する成果を生み出す人材として活躍してもらうことって、このような時代だからこそ必要なのではないかと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム