今は障がい理解がない状態で雇用に取り組むと失敗する時代[2/2]

今は障がい理解がない状態で雇用に取り組むと失敗する時代[1/2]

2018.10.18

前回は、『障がい理解』が進んでいない状態で雇用に取り組むと失敗を経験してしまう理由を説明しました。

今回は引き続き、『障がい理解』が進んでいない状態が企業に与える悪い影響についてご説明していきたいと思います。

『障がい理解』が進んでいない状態が企業に与える悪い影響

① 企業間格差が広がり法定雇用率に影響

「障害者雇用における企業間格差」とは、もうすでに見られる現象ではありますが、法定雇用率の達成などの障害者雇用が上手くいっている企業は今後もその状態を維持していくことが可能であり、反対に障害者雇用が上手く組み立てられず納付金(罰金)の支払いをしている企業は今後もその状態から抜け出せない可能性が非常に高くなっていきます。言い換えると、障害者雇用の「勝ち組」はこれからも「勝ち組」状態を維持し、「負け組」企業は新たな取り組みを導入しない限り「負け組」のままになってしまいます。(「勝ち組」企業は助成金なども上手く活用しながら、障害者雇用を企業のメリットとして捉える工夫をしています)

求職活動をしている障がい者にとって現在の環境はメリットになることがあります。それは、以前に比べて障がい者の求人活動をしている企業に関する情報をたくさん得られることができる環境だということです。特にSNSからの情報は非常に大きな情報リソースです。仮に真実でなくても求職者に与える影響は強いものになっています。本人だけではなく、親御さんや就労支援をしている福祉事業所が抱く印象にも気を配る必要があります。

この企業は障がい者に対する「理解」や職場定着への「協力」に力を掛けている会社なのかという部分を障がい者本人やその周囲の方々は気にされます。そういう意味では自分にとって最適な企業を探すには便利な世の中になりました。

採用の合否を判断するのは企業ですが、その前に障がい者からエントリーされる会社にならないといけません。

② 障がい者という存在に対する認識に影響

職場トラブルになる原因で多く聞くケースとして「採用された障がい者に関する認識が一緒に働く従業員や管理者に共有されていない」がよく挙げられます。

この場合、障がい者本人が必要とする配慮や協力を職場で得られずに結果として退職にいたるという話は少なくありません。他にも、職場が情報共有されていないために障がい者本人とどのように接していいのか分からず、本人がモンスター化してしまうケースという話もよく耳にします。これまで他の会社での就業経験のある障がい者の中には、周囲からはれ物に触るような扱いを受けた結果、自分の要望はほとんど聞いてもらったり業務上で注意をされることもなかったりなど、会社ではわがままが通るんだという認識を持った人たちがいます。(障害者雇用を義務的に捉えている企業に多いです)その方たちは、これまでの経験から、思ったことをいえば言うことを聞いてもらえると勘違いしていますので、周囲からは「障がい者は嫌な存在」とされてしまいます。このイメージが障害者雇用を邪魔してしまいます。また、普段から障がい者とのコミュニケーションが不足している企業にも当てはまります。

障がいを持った従業員だからといって区別せず、ダメなものはダメといわなければいけません。そのためには、「障がい者」に対する認識を社内で統一させる取り組みが必要になってくるのです。

③ 障がい者の職場定着期間に影響

「障がい者理解」が進んでいない職場では、折角苦労して採用した障がい者も長続きせずに退職してしまいます。

障がい者採用に取り組む際に上手くいかない企業がとる行動サイクル

「法定雇用率を気にするあまり状況確認せずに求人を出してしまう」

「条件の見直しや社内理解に努めなかったため狭い範囲での求人となる」

「時間と労力が掛かりすぎ、本来の適正な採用ができない(妥協してしまう)」

「雇用した障がい者が職場で必要な人材出なかったため周囲からの理解が進まない」

「障がい者本人が居場所を失い、退職をしてしまう」

「障がい者が長続きできない原因を解決しないまま、次の求人を始めてしまう」

また、ここ数年企業の障がい者求人数が伸びてきており、求職相談もハローワークだけではなく障がい者に特化した人材会社や就労系福祉事業所の数も増加していますので、以前より簡単に転職ができる世の中になってきました。

新たな障がい者人材の確保だけでなく、今働いている障がい者が退職しないような取り組みも始めていかないといけません。

④ 社内メンタルヘルス対策推進に影響

「障害者雇用」と「メンタルヘルス対策」には重なる部分が多くあります。
企業の人事担当者が「障害者雇用」についての情報収集の中には「助成金」や「制度・法律」に関するものが多いと思いますが、「メンタルヘルス」についても情報収集のためのアンテナを立てている人事担当者は少なくないといった印象です。

現在、企業が取る「メンタルヘルス対策」は「ストレスチェック」とそれに付随する「産業医との面談」というのをよく耳にします。

ご存知だと思いますが、「メンタルヘルス対策」というのは、「心の病の発症を予防」することが大前提です。会社は事業主としての立場から、職場環境の改善や安全対策を取ることが法律で義務付けられています。しかしながら、対策が社内に十分浸透されたとしてもある一定数のメンタル不調者の発生は防ぐことは大変厳しいです。そのため、次の取り組みとして「早期治療と休職~復職へ」というところまで仕組みを構築することが会社に求められています。

「メンタルヘルス対策」が十分に浸透している企業であれば、心の病になり休職した従業員が復職することへの職場理解もしっかり整っていると思います。この状態が、障害者雇用(特に精神障がい者・発達障がい者)を進める点と重なる部分になってきます。

これまでも企業内での障害者雇用研修時には「メンタルヘルス対策」に関連した内容も多く実施してきました。どちらも企業文化として根付かせる必要がある取り組みとなります。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム