Q&A 障がい者雇用のための知識や理解を深める具体的方法(前編)

今回は障がい者雇用を実践していく上で必要な理解や知識に関するご相談にお答えしたいと思います。
現在の障がい者雇用は、法律の改正や企業の義務意識の向上もあり、およそ半数が法定雇用率を達成している点からも、関心事として非常に注目をされています。その一方で障がい者に対する思い込みや間違った知識が邪魔してしまい、組織内への正しい知識と理解促進に苦労している人事担当者からの相談も多くなっています。

【Q】
お世話になっております。
私は障がい者採用・雇用を担当して2年目の人事担当者になります。現在、障がい者の求人活動や雇用を進めるための情報収集として支援学校の見学やセミナーなどに参加しています。
今後、自社での障がい者雇用を進めていくために必要な知識や理解を身に着ける具体的な方法などがあれば教えてください。
よろしくお願いします。
《食品加工業、従業員数約350名、人事担当者》

【A】

ご相談ありがとうございます。
私の経験では、この時代に障がい者雇用を進めるには『経験』の積み重ねがとても重要だと考えます。そのために、組織として知識や理解を深めるという考えには賛成です。今回のご相談をいただきました人事担当者のお気持ちも非常に良く分かります。
障がい者雇用に関する知識や理解を深めるための方法を下記に挙げてみました。それぞれに知識や理解を深めるための特徴やメリットがありますので、ご参考にしていただければと思います。

【書籍・・・D】


特徴:自分の知りたい情報を知りたいタイミングでピンポイントに習得できる。
   著者の限定的な経験則や願望による情報になりがち。
昔に比べて「障がい者」を題材にした書籍の種類は格段に増えたという印象です。ミルマガジンでも過去に書籍のご紹介をしてきましたが、それぞれの立場や状況に応じて、情報を得たいこちらの意図にマッチした書籍に出会える確率が高くなりました。

これまで障がい者に関連した書籍といえば、どちらかというと「医学書・専門書」「自伝的・手記」のような内容が多かったのですが、最近では「障がい者雇用」「大人の発達障がい」「自立・働く」といった企業で障がい者の雇用を想定した時に手に取りたいと思えるものが増えています。やはり、世の中から高い関心を持たれているのだと改めて感じました。

書籍の場合、内容に目を通していると、例えば「発達障がいとは〇〇なんだ」と断定した表現になってしまっていると感じることがあります。そういった情報は100%の確率で正しいわけではなく、また間違っているということでもありません。それは、あくまでも著者の経験値から得られた情報として伝えられているからに他なりません。
従って、書籍で得た情報や知識は、その後の自信の経験と照らし合わせていくための基準として先ずは身に着けることを意識していただければと考えます。

【セミナー・研修・・・C】


特徴:「助成金」「法律」「事例」など、実践を想定した内容が多い。
   同じ内容のセミナーや研修が多いため、得られる情報は限定的。

障がい者雇用に関連したセミナーや研修の多くは、「労働局などの行政機関」「障がい者の雇用支援を事業とされている企業や団体」が主に開催していると思います。おそらく、障がい者雇用に強い興味がある経営者や義務感の強い企業の障がい者担当者の皆さんは多かれ少なかれそういったセミナーや研修に参加したことがあるのではないでしょうか。

最近は、熱心に障がい者雇用の取り組みを実施している企業も増えており、地域によってはすぐに定員が埋まってしまうセミナーもあると聞いています。また、新型コロナウイルスにより、ウェビナーなどのリモート開催によるセミナーも多くなっていることから、気軽に参加できるというメリットを活かしたものも増えてきました。
研修では、主に企業内での「理解深耕」「雇用促進」の一環として、受入れ部署の従業員や人事担当者・管理職の方々を対象に実施することが多く、私も研修関連のご相談をたくさんいただきます。

セミナーも研修も、障がい者の求人や雇用の取り組みに必要な情報について、活用できる助成金(例:法定雇用率未達成→罰金→助成金として活用)や企業の雇用事例を分かりやすく伝えてくれますので、参加者にとってはより具体的に雇用をイメージすることができます。
その一方で、一時的な情報収集の場であるため、「取り組みのスタート時期」や「職場で障がい者の新たな受入れをするタイミング」「法律改正時期」など、ある程度決まったポイントで受ける内容のものが多く、継続して参加しながら情報を得るリソースというものではありません。
従って、セミナーや研修の活用は、限定的なシチュエーションに置かれている時に得られる情報としては有効性が高いと考えます。

【各種見学会への参加・・・B~C】

特徴:障がいのある人たちの「働く場面」「学ぶ場面」を直に見ることができる。
   見学会の主な実施先は「特例子会社」「障がい者就労支援福祉サービス」「特別支援学校」。

「書籍」や「セミナー・研修」に比べて各種見学会では、障がい者の働く姿・学ぶ姿を実際にご自分の目で見て確かめることができますので、より実践に近い障がい者雇用のイメージを持つことができるというメリットがあります。
もし、自社の最寄りに「特例子会社」「障がい者就労支援福祉サービス」「特別支援学校」があれば、見学会の問合せをしてみてください。ほとんどがウェルカムに対応していただけると思います。

見学会への参加が効果として感じられるのは、「既に障がい者雇用をしている」「障がい者求人活動中」といった具体的活動を実施している企業ほど高くなってきます。
例えば、見学先が特例子会社の場合、

  • 車いすを使う障がい者を想定した「障がい者用トイレや共有スペースの広さ」
  • 知的障がい者が事務用品を片付けるための工夫(写真で場所や置き方を伝える)
  • 休憩を取るためのスペース(パーテーションによる個室、ソファ など)

といったようにセミナーや書籍などで説明されただけではイメージしづらい職場の環境や雰囲気を体感しながら、自社で活用する情報を得ることができます。
その反面、障がい者雇用を取り組んでいる企業は一般企業であるため、同じように一般企業で障がい者雇用に力を入れている職場への見学会を希望する声も聞かれるのですが、実際に受入れをしている企業はとても少ないというのが印象です。参考にするのであれば、より自社に近い状況にある職場と考えるのは当たり前だと思います。

後半は次回へ。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム