レポート:特定非営利活動法人 『はぁもにぃ』

ミルマガジンでは「障がい者雇用企業」や「障がい者就労支援福祉サービス」「はたらく障がい者」を取材し、多くの読者に知っていただきたいと思っています。これは、様々な取り組みのご紹介を通じて『障がい者に関する理解ある』雇用をひとつでも多く実現してほしいという考えからです。

障がい者の雇用というのは一般的には企業が行うものだと思われますが、障がい者就労支援福祉サービス事業でも障がい者を雇用することができます。障害者総合支援法という法律に基づく厚生労働省の許認可事業である「障がい者就労継続支援A型事業」という福祉サービスがそれに該当します。

今回、千葉県千葉市にある『特定非営利活動法人はぁもにぃ』が運営する障がい者就労継続支援A型事業所を取材してきました。こちらでは、事業の取り組みを通じて『いろいろな人が同じ地域で一緒に暮らすノーマライゼーションな社会づくり』の実現を目指していると感じました。

取材にあたり同法人の理事長 長浜光子氏にお話を聞かせていただきました。

「就労継続支援 はぁもにぃ」について

《話・長浜氏》
当法人は2012年設立の定員15名の障がい者就労継続支援A型の事業所となります。現在は、雇用が10名・非雇用が5名で主な障がい特性は知的・精神・発達障がいのある方たちになります。

この事業を設立したのは、障がいのある娘(当時小学1年生)の将来について考えたことが大きなきっかけでした。親亡きあとの生活を想像した時に強い不安を感じるのは私だけではないと思います。当時、特別支援学校の先生とのお話の中で障がいのある子どもたちの将来に関することが話題に挙がった時、「お金や資産を残すことばかりを考えるのではなく、その子たちにとっての『居場所』を作ってあげることが必要なのではないか。」ということになりました。
障がい者にとって「私はここに居て良いんだ。」と思える『居場所』を作るというのは世の中に必要なことであり、障がいのある子どもたちを残す親にとって安心できる目標となりました。

その『居場所』は、決して大きなところでなくてもよく、小さな『居場所』をたくさん用意することでその子たちにとっての選択肢が増えることが理想だと考えるようになりました。本来、当事業所の規模であれば限られた事業に集約して運営した方が良いのですが、「〇〇だけ」と絞ってしまうと利用者の希望する選択の幅が狭くなってしまうのではないかと考え、今では「農園」「養蜂」「カフェ」「販売」という仕事を設け、それぞれの仕事・事業がつながりのある形にしたいと思っています。

現在は、新型コロナウイルスによりこれまでのはたらき方を改めて考える機会となったことで在宅就労も進めているところです。今後は、当事業を含め法人全体をソーシャルファーム化していきたいと考えています。
また、我々の取り組みを通じて得たノウハウを希望される他の地域にも提供することで同じような『居場所』を作っていきたいという想いもあります。

事業の特徴

我々は、「半径20キロ圏内からのノーマライゼーション社会の実現」を目指して活動をしています。これは、障がいのある方たちが暮らす身近なところから、自分らしい社会生活がおくれるように、支援機関・行政・学校・企業などが連携して支援する地域社会の創造のことです。

障がいのある方たちは、それぞれ違った特性やこだわりがあることで生きづらさや周囲から孤立してしまったりします。でも、それらを強みとして捉え、個々の希望を尊重しながら本人に適正なはたらき方を提供することを心掛けています。
時には、自分の役割りが思っているよりも上手くいかないことで落ち込んでしまったり、元気をなくしてしまうこともあります。そのようなときには、違った業務を経験してもらうことで良い状態への変化が見られることもあります。これは、各職場の担当者の役割として十分なコミュニケーションを図りながら一人ひとりの状態に目を配り、配慮していくからです。

当事業所では大きく4つの業務に就いてもらっています。





《カフェにおける接客及び調理補助業務》

Community Café ♭(ふらっと)にて、接客や調理の補助等を行います。


《菓子製造業務》

お菓子工房はぁもにぃ作業室にて、プリン等の製造及びOEM製造。はちみつビン詰め作業などを行います。


《養蜂作業》

はぁもにぃ養蜂部養蜂場(袖ヶ浦・君津・木更津・富津)にて、養蜂・採蜜作業を行います。鎌取コミュニティセンター(千葉市緑区おゆみ野3丁目15-2)にて、屋上巣箱管理を行います。(施設外就労)


《農作業》

はぁもにぃユニバーサル農園にて、運営するカフェや菓子工房で使用する野菜や外食産業企業との共同事業で野菜作りを行います。


他にも、「清掃作業」や「販売」の仕事など、多くの仕事を設けることで障がいのある方たちの「はたらく選択肢の幅」を広くしています。

私たちが心掛けていることに「自己肯定感を育てる」というものがあります。障がいのある方たちは、できることが限られていたり、周囲と同じペースでついていくことが苦手だったりします。そのため、普段から生きづらさを感じ自己肯定感が持てずに成長した方が少なくありません。

当事業所に通う方たちには、仕事やいろいろな経験を通じて成功体験を重ねてもらい、自信を持って業務に就いてもらいたいと考えています。その結果のひとつとして、私どもの《菓子製造業務》のお話になりますが、いくつかの仕事の中で商品の発送業務があります。その業務では、ここ8年間でのミス率が「ゼロ」となっています。これは、個々の特性を活かした配置により検品業務がきっちりとこなせているからです。
そうすることで、担当している障がい者の方たちが、ミス率「ゼロ」という成功体験をもとに自信を付けていくことができていくのです。


言われたことを字義通りに受け取ったり、不器用だったり、強いこだわりや反復行動があったり、変化が苦手だったりetc、とかく生きづらさを抱えた彼ら。
でも、好きなことや関心があることには、何時間でも夢中で取り組むことができる彼ら。

それぞれの特性、適正、希望を受け入れながら、多様性を大事に、その働く場や作業種類など本人にあった働き方を提供し、「しっかり働きしっかり稼ぐ、かつ喜びと誇りを持ち、互いに尊重し合いながら仲間たちと楽しく働く」を目指し、ご利用される皆さまとスタッフ全員で事業所運営をしています。


企業の障がい者雇用担当者へ

障がい者雇用に取り組む企業には「障がい者の特性をしっかり知ることに時間を掛けてほしい」と思います。
それは、企業も障がい者もとことんお互いを理解することがキーワードだと考えています。
障がい者は自己を理解することで離職率が低下します。それは、自分の得意と不得意を知ることです。そうすることで、自分に適正な仕事と出会い、強みを活かして会社に貢献することができるからです。

企業が障がい者の特性を理解することで、どんな時に調子を崩してしまうのか、どのような理由でパニックになってしまうのかが分かり、職場で適切な対処や配慮を実施することができます。加えて、障がいの理解には本人の背景も理解することが重要だと感じます。

今回の取材を通して、非常に印象的だったのは『障がい者の居場所づくり』という発想です。人によって居場所の捉え方は様々だと思いますが、「自分が居ても良い場所」という考え方をしたときに、「安心できる」「認められている」という感覚なのではないかと思いました。それは、自分という存在が生きていても良いという証のようにも思えます。

また、こちらの取り組みは企業の障がい者雇用や障がい者支援機関が実現できる社会の大きな可能性も感じさせてくれました。一つひとつの組織がこのような考え方をすることで、世の中で感じる社会課題のひとつが解決されるのではないでしょうか。
はぁもにぃの皆さんご協力ありがとうございました。



『特定非営利活動法人 はぁもにぃ』
千葉県千葉市緑区土気町1727-4
URL:https://npo-harmony.or.jp/

Community Café ♭(ふらっと)
千葉県千葉市緑区おゆみ野6-27-4-B
URL:https://cafe-flat.com/

はぁもにぃソーシャルファームプロジェクト
URL:https://harmony-socialfirm.com/
FB:https://web.facebook.com/npo.harmony.cafe.flat/

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム