取材レポート:東京都ビジネスサービス株式会社

今回ミルマガジンの取材にご協力をいただいたのは「東京都ビジネスサービス株式会社」です。同社は東京都と株式会社システナとの共同出資による第三セクター方式の特例子会社になります。
現在国内には約600社の特例子会社がありますが、2026年には設立40周年を迎える同社は他社とは違った独自の進化をしてきました。取材では代表取締役社長 根津史明氏にお話をお聞きしました。

−先ずは、貴社のご紹介をお願いします。

根津氏:はい。当社はバブル時代の1986年に東京都と親会社である株式会社システナが共同出資した第三セクター方式の特例子会社として設立されました。設立当初に採用した障がい者は10名でした。現在ではグループ全体として124名の障がい者が勤務しており、法定雇用率は2.68%になります。

当社の主な事業としては

  • BPOサービス

封入・発送、キャンペーン事務局、スキャニングソリューション、データエントリー、プリントソリューション、マーケティングリサーチなど各種BPO業務。

  • ITサポート&サービス

様々な事務スキル、ITスキルを持ってお客さまの業務を先読みし、お客さまの課題に対応。成果を出していくためのサポートを提供。

  • 障がい者雇用コンサルティング

障がいのある方へ就職・転職支援や就労移行支援を提供し、法人企業には障がい者の雇用・定着を実現するお手伝いをします。障がい者就労支援センターコレンドでの就労支援も実施。

を行なっております。

また、拠点としては江東区青海にある本社以外に「葛西センター」「高田馬場事業所」「東陽町クリエイティブラボ(TCL)」の4ヶ所を設けております。



−では、次に特徴を教えていただけますか。

根津氏:特例子会社の売り上げを占めているのは親会社をはじめグループ会社が多いと思うのですが、当社は外販率が90%を超えており、親会社に依存することなく自立経営を目指してきました
特例子会社ですので、障がいのある方がたくさん働いておりますが、しっかりと自分たちで「利益」や「収益」を生み出す組織づくりを目標にしてきました。「お金を稼ぐ」という表現をすると違った意味に捉えられがちなのですが、障がいのある従業員でも仕事で認められ収益を上げることで継続した組織に成長させることを証明できていると感じています。



−とても素晴らしい取り組みですね。ところで根津社長が着任された時のお話をお聞きしてもよろしいですか。

根津氏:当初、「東京都ビジネスサービス株式会社」の社長の辞令が出たときの私に与えれらたミッションは「法定雇用率の達成」と「業績を上げる」の2つでした。

しかし当時の私は、法定雇用率のことも障がい者雇用のこともほとんど知りませんでした。そのため、最初は社内をじっくり観察することから始めました。そうすると色々なものが見えてくるようになりました。
例えば、業務において非効率だと感じることが多くありましたので、業務の進捗や成果を定量的に見るために徹底的なデータベース化を進めました。従業員ひとりひとりの仕事とその時間を細かく分析することで個々の成果を数値で表せるようになりました。着任前の私は、外国人人材の活用や人材の評価制度・教育に関する分野を担当していましたので得意分野でした。

また、当時は受付もあるのかどうかわからないような状態でしたが、お客様を気持ちよくお迎えすることができるようにソファを設置したり、大きなモニターを置き、障がいのある従業員が制作した当社の紹介動画を流して、お待ちいただいている間にご覧いただけるようにしました。他にも、研修ルームの設置や従業員が好きな時に使うことができる共有のフリースペースも設けました。

−根津社長が来られたことで従業員の皆さんもエンゲージメントが向上したように感じます。他にCSV経営も特徴のひとつだとお聞きしました。

根津氏:はい。障がい者雇用など社会課題に取り組む組織ではCSR (Corporate Social Responsibility)経営を導入しているとよく耳にします。一方、当社ではCSV(Creating Shared Value)経営を進めています。CSRと違いCSVでは社会貢献活動が本業の収益確保となるという考え方です。当社はまさに特例子会社でありながら、障がい者の雇用を通じて事業の収益化を実現することができた組織となります。
我々は社内外に向けてCSV経営を実現してきました。

【社内】

「障がい者が活躍できる仕事の拡大」
障がい者の活躍できる案件受注の拡大とPJ管理の強化で、社員の一人あたり売上を拡大。顧客満足度の高いサービスの強化とマネジメント層の抜擢と強化を推進。今期大きな課題となった品質面でのチェック機能強化と社内コンプライアンス体制の強化。

【社外】

「対外障がい者支援事業の強化」
活躍できる障がい者採用市場の激化と定着支援に関するニーズに応えるコンサルティングサービスの充実とスキームの確立に注力し、システナブランドとして発信。

−これらの実績により根津社長に与えられた2つにミッションをコンプリートされたわけですね。最後に、これから目指す自社の姿・展望について教えてください。

根津氏:ありがとうございます。あえて明確なゴールを設定せずに進んでいこうと考えています。
もちろん、会社としての経営理念や行動規範、年間の目標はあるのですが、そういったことではなく周囲から注目を集めると言いますか、感心してびっくりされる組織づくりを目指したいと考えています。つまらないと感じられてしまう組織というのはどんどん縮小してしまうと思います。常に周りから関心を集められることを実現し続ける組織でありたいと思っています。まだ大きな声では言えませんが、私の頭の中には次の(新たな事業)アイデアがありますので、少しずつ試していきたいと考えています。

−根津社長、本日はたくさんのお話をお聞かせいただきまして本当にありがとうございました。



東京都ビジネスサービス株式会社
本社:東京都江東区青海2-4-32 タイム24ビル5F
URL:https://www.tokyotobs.co.jp/

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム