今回ミルマガジンでご紹介するのは、以前取材にご協力いただきました株式会社アルファプランニングのグループ会社になります株式会社ナチュラルライフサポートが運営する就労継続支援B型事業『レインツリー』になります。
障がい者の就労支援事業ではめずらしい「ガーデニング」の事業を中心とした福祉サービスを提供しています。
詳しくお話を聞かせていただいたのは、株式会社ナチュラルライフサポートの代表取締役 古里靖氏です。
※リモートによる取材
ガーデニングによる福祉事業を始めたきっかけ
《話・古里氏》
就労継続支援B型事業所『レインツリー』を始める以前は、個人で庭師という仕事をしていました。
事業が順調に進む中、庭師仲間から「園芸療法」の存在を聞いたことがきっかけで興味を持ち、実際に「園芸療法」を導入している障がい者が通う作業所にボランティアとして関わったことが始まりでした。そこでは、主に精神障がい者の方が多く通っていて、ハーブの育成や収穫の作業を通じて支援を行っていました。
ある日、作業所の所長から「古里さんの庭師の仕事に利用者を同行させてもらえませんか」と頼まれ、数名の方を連れて仕事現場に行ったのですが、当時の私は障がい特性のこともよく分からず、自分のペースで仕事を進めたために庭の手入れ作業が捗らず、結果的に仕事は大失敗でした。それは、利用者の方たちが悪いのではなく、彼らの特性を上手く使えなかった自分に原因があると感じました。
それと同時に、彼らの仕事に対する姿勢を見たときに、「もし自分に障がいについての知識があれば、しっかりとした仕事ができたのではないだろうか」と考えました。
それから、障がい者自立支援法の改正後の2008年にクリスチャンである私がお世話になっていた教会の牧師が運営するNPO法人が就労継続支援B型事業所を開設しました。
そちらで管理者として多くの経験を積み重ねた3年後の2011年に独立し、就労継続支援B型事業所『レインツリー』を開設することになりました。
『レインツリー』の紹介
『レインツリー』という名前の由来ですが、大江健三郎の小説「雨の木(レインツリー)」のタイトルから発想。夜は葉を閉じて眠る木が、朝露をポタポタと雨のように落とす様子をイメージしました。大きな木の下にはいろいろな人(多様性)が集まるように、我々の『レインツリー』も色々な障がい特性のある人たちが集まることができる場にしようという想いからです。
当事業所は本社のある神奈川県相模原市を中心に県内4ヶ所に事業所を設置し、それぞれに共通した3つの事業を福祉サービスとして提供しています。
ひとつは「ガーデニング事業」です。
ガーデニングは当初から仕事のひとつとして考えていました。「高齢のために庭の手入れが大変になったから」「造園屋さんに頼むと費用も高くなってしまうから」といった個人宅さんからの要望が多く、そういったニーズが障がい者の仕事につながっています。
その一方で、福祉だからということを言い訳にしたくないので、一定の水準以上のサービスの提供を常に心掛けています。そのため、利用者たちも仕事に取り掛かる時には気を引き締めていることがこちらにも伝わってきます。
ガーデニングはお客さまのご自宅でのお仕事になります。そのため、お客さまの見ているところで作業をすることもあるため、非常に緊張をする場面になるのですが、綺麗に手入れができた時に褒めていただくことばに利用者たちは嬉しさを感じ、人の役に立つことで得られる喜びも彼らの成長につながると感じます。
次が「ガーデンクラフト事業」と言い、ガーデニングで剪定された枝を利用したクラフト商品の製造・販売を行っています。
クラフト商品の製造には色々な作業工程が考えられ、障がい特性に適した仕事を見つけることができます。また、製品のクオリティも高い仕上がりになるように目指しています。昨年は新型コロナウイルスの影響で開催できませんでしたが、以前に開催したイベントではたくさんのクラフト商品が売れました。
最後は「農園事業」になります。
クラフト商品に添えるハーブの育成や直近では堆肥作りにもチャレンジしています。
事業所では1日の中でスケジュールを決め、例えば「午前は農園作業」「午後はガーデニング」というように、それぞれの仕事を組み合わせて取り組んでもらっているのですが、我々が掲げる目標は「仕事ができるようになろう!」ということです。
ガーデニングや農作業は屋外で体を動かし、夏であれば少しの作業でも汗をかきます。仕事ができるようになるためには体力をつけることが大事です。
朝、元気がない状態で通所した利用者が、ガーデニング作業で体を動かした後に戻ってくると元気な姿になっていることがあります。体を動かし、土や植物に触れることで心も体も健康な状態になっていくことを実感します。
『レインツリー』が目指す未来
作業所としての存在意義を強めていきたいと考えています。それは、我々が障がい者ひとりひとりにとってやりがいを感じる仕事を提供していくことが存在意義になると思っています。
『レインツリー』は就労継続支援B型事業になりますが、一般企業への就職を希望される方もいらっしゃいました。その一方で、一般企業への就職だけがすべての利用者が目指すゴールではなく、他にも自分の居場所となる選択肢があるんだということを感じています。
元々利用者だった方が2名、私どもの職員となって働いています。利用者の中には、『レインツリー』が自分の居場所だと感じて、個々ではたらくことを望んでいる方もいらっしゃいます。就職以外にも自分自身が満たされる場所があるということを伝えていきたいです。
現在ある4ヶ所の事業所は、今年の4月に開所した鶴間事業所以外は、お陰様で定員が満たされた状態にあり、当事業所を選んでいただけていると感じています。
今後はこの事業を全国に広めていきたいと考えています。10年以上この事業を継続できたという自負もあり、全国には我々のサービスを待っている当事者の方がたくさんいると感じています。障がい者就労福祉サービスには制度上の課題もたくさんあると感じる中、設立当初からの目標である「我々ができる支援の提供」を目指してこれからも事業に取り組んでいきたいと考えています。
取材にご協力いただきました代表取締役 古里氏のお話にはガーデニングによる障がい者支援で培った実績と成果が伝わってくる内容でした。
今後は神奈川県以外にも事業を拡大させる計画ということで、これからの活動が非常に楽しみです。
ご協力ありがとうございました。
URL:https://www.raintree-nls.com/
〇上溝事業所
所在地:神奈川県相模原市中央区上溝1249-1
〇淵野辺事業所
所在地:神奈川県相模原市中央区東淵野辺5‐18‐24
〇鶴間事業所
所在地:神奈川県大和市西鶴間4-12-2
〇伊勢原事業所
所在地:神奈川県伊勢原市東成瀬34-5
『株式会社ナチュラルライフサポート』
本社:神奈川県相模原市緑区橋本6-5-10 中屋第二ビル3階E号室
URL:https://natural-life-support.com/