一般企業による「障がい者支援ビジネス」への参入が増加しています。特に関わる機会が多い就労系支援事業所は、ものすごい勢いで開設する数が膨らんでいます。併せて、国が施設数を増やしたいのが、障がい者が自立した生活を送るためのグループホームです。就労系の事業所数に比べるとまだまだ不足していますが、徐々に増えてきています。
一方で、少し地方に目を向けてみると、都心部とは違って就労系支援を含めた福祉事業所の増加には遅れがあり、人口と比較してもここ数年新しい事業所の開設が進んでいない地域も存在します。これらの地域でも、近い将来には今よりも就労系の福祉事業所が増えてくると考えられます。
それ以外でも、障がいを持つ人材の紹介や就職斡旋に特化したビジネスや障がい者の求人情報ばかりを取り扱うサイトなども目立つようになってきました。
また、厚生労働省が普及を目指しているテレワークによる就業形態を障害者雇用にも活用しようとする動き見見られます。
おそらく、これからも「障がい者支援」と「ビジネス」を掛け合わせたモデルが出てくることでしょう。
個人的には、一般企業の参入により障がい者支援の分野が注目され、活性化することは大賛成です。今は、ようやく火が付いたところですから、これから本格的に熱を帯びてくると感じます。
中には、一般企業が「障がい者支援ビジネス」に参入することを“善し”と思っていない人たちがいるのも事実です。「障がい者(社会的弱者)を利用して金儲けをしている。」とか「利益を第一優先にして、障がい者の望むサービスをしていない。」などの声を聞くことがあります。
実際に、こちらから障害者雇用に関するご協力をお願いする時に初めてご訪問する事業所からは、かなり疑いの目で見られることがありますので、障がい者の分野で一般企業が活躍するためにはまだまだ認知が足りていないと強く感じています。
例えば、先日の岡山県や愛知県にある就労継続支援A型事業所が相次いで閉鎖したために、雇用されていた多くの障がい者が職を失うニュースがありましたが、これらの出来事を起こしたのは一般企業でした。
このような事件・ニュースに関わっていたのが一般企業だと聞くと、確かに悪いイメージが先行してしまいます。但し、障がい者支援に関するこれまでの事件やニュース、事故を見てみると決して不祥事を起こしたのは一般企業だけでないのはグーグルで検索していただけると確認していただけます。
私自身も少し形は違いますが、障がい者の就労の場を増やすためのビジネスですから「障がい者支援」に少なからず関わっています。そのため説得力がないかもしれませんが、これからたくさんの一般企業が参入することで、間違いなく障がい者支援の分野が前進することになります。障がい者支援の分野が前進するということは、障がい者本人やそのご家族にとって、今よりも望ましいサービスやサポートを受ける機会が増えるということになりますから、やっぱり一般企業の参入は悪いことではないと考えます。
それでは、なぜ一般企業による「障がい者支援ビジネス」での成功が悪いことにならないのかをお話しいたします。
先ずは、これまでの障がい者支援の状況を見てみましょう。
人は人生の中で多くの岐路に差し掛かります。それは、進学であったり就職や結婚など。岐路で選択する道は多い方が望ましいと思っています。高校卒業の場面であれば、ひとつの進路よりも複数から選んだ方が、より自分に適したところ(大学、専門学校、留学、就職 など)と巡り合う確立が高くなります。
それを障がい者に当てはめてみるとどうでしょう。これまで障がいを持つ学生の卒業後の進路としては、比較的軽度な身体障がい者は一般企業に就職することができました。でもそういう人たち以外は、自宅から通える授産施設などの福祉事業所への通所といった選択肢がほとんどだったと思います。あとは、親や親類の縁故で紹介された小さな企業(最低賃金、内職のような作業)で働くといった進路です。
仮に福祉事業所に進み、就職に必要な訓練を受け、働くことができる力を身に付けたあとに就職を希望しても、一部を除いては福祉事業所と企業との関係性が希薄な状態なために、本当に自分がやりたい仕事に就くことは現実として難しい状況にあったと思います。
就職した先でミスマッチになった場合、次の就職先に出会うことも少なかったはずですから、結局もといた福祉事業所に帰ってくるか、自宅に引きこもってしまうケースが多かったのではないかと思います。
進路における選択肢も少なく、仮に選択した先がミスマッチだったあとの選択肢も少ない。そうではなく、選択肢の幅を広くすることで、より本人の可能性とマッチする進路を選ぶことができるはずです。
障がいを持つ人材であっても、健常者と同じように選択肢をたくさん持つことを許される時代が必要なのです。