大胆予想!障害者雇用に関わる法律のこれからについて[2/2]

大胆予想!障害者雇用に関わる法律のこれからについて[1/2]

2018.02.02

④ 厳しさが増す『納付金制度』

『納付金制度』とは、常用雇用労働者が101名以上(障がい者の雇用義務があるのは常用雇用労働者が50名以上)の企業が、法定雇用率が未達成の場合に1人当たり月額で5万円を納めないといけない法律のことというのは人事の担当者方々はご存知だと思います。

この未来の『納付金制度』では2つの改正点が予想されます。

「納付金対象企業の引き下げ」と「納付金額の上昇」です。

障がい者の雇用義務は「常用雇用労働者が50名以上」の企業となります。

雇用数不足による納付金の支払い義務は「常用雇用労働者が101名以上」の企業となりますが、2015年度までは「常用雇用労働者が201名以上」でした。つまり少しずつ納付金の対象企業が引き下げられてきています。この動きから、近い将来には「障がい者の雇用義務企業 = 納付金支払対象企業」となるはずです。従って、これまで義務ではあったが納付金(罰金)の支払いをしなくて良かったので積極的でなかった規模の企業が求人活動を始めることが考えられます。

また「納付金額の上昇」については上記の通り現在は、不足数が1人当たり月額で5万円、年間を通じて不足していると最大60万円の納付金という罰金を納めないといけない義務があります。

しかしながら、この金額は人を雇用した時に掛かる人件費と比較した場合、非常に低い金額となります。悪い言い方をしますと「人をひとり雇うぐらいなら納付金を納めている方が安く済む。」となります。実際にこういうお考えの方も少なくありません。企業心理としては当たり前だと思いますし、私自身もこの納付金額では雇用の促進にはつながりにくいだろうなぁと以前から感じていました。

そもそもの考え方が違っているのでしょうね。どうやら性善説的な視点から障がい者の採用を見た場合、

「不足企業が障がい者の採用活動をスタート」

「年間を通して一生懸命採用活動に励んだ」

「しかし、結果として雇用が満たせなかった」

「仕方ありませんので納付金を納めてください」

という流れになるように思えます。

間違ってはいませんが、おそらく先に述べたような「人をひとり雇うぐらいなら納付金を納めている方が安く済む。」の考え方をする企業は減りませんし、小さな企業規模の会社まで納付金を求められることになると、更にこのような考え方で済ませる企業が増えることになります。見方によっては障害者雇用の促進を邪魔しているようにも見えます。

一方で、達成企業の評価という面からもこのままでは未達成企業との差を感じられにくいと思います。

段階的にはなりますが、ここは思い切って納付金額を上昇することになるでしょう。例えば、「障がい者の雇用義務企業 = 納付金支払対象企業とする」→「月額の納付金5万円を7万円に」→「月額の納付金7万円を10万円に」。こうなると年間を通じてひとりの障がい者が不足している場合、120万円の納付金を納めることになります。これにより、「未達成企業の取り組み強化」と併せて、各種助成金の財源確保につながりますので、雇用に積極的な企業にとってはメリットになります。当然、障害者雇用を進める企業を後押しする結果が生まれることが考えられます。

⑤ これから伸びる!『発達障害者雇用助成金』

人事担当者の方々は障がい者を採用する時に申請できる『特定求職者雇用開発助成金(通称「特開金」』のことはよく知っていると思います。現在、その『特定求職者雇用開発助成金』の中に含まれる「発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース」の申請をすることで、手帳を取得していない発達障がい者を雇用した際に受給できる助成金制度があります

この制度を更に発展させた発達障がいを持つ人材の雇用促進を狙った助成金制度が出てくると考えます。

それは、私が企業から相談される障がい者求人の中にも発達障がい者の雇用に関する内容が増えてきている点からもこれから各企業が採用を活発化させていく可能性を感じさせます。

発達障がいを持つ人材を雇用定着させる上で、本人の持つ特徴による個人差もありますが、専門的な支援や企業側の知識面の向上などが重要な点だと思います。例えば、社外リソース(就労移行支援事業所、コンサルタントなど)の活用や社内研修会・勉強会の実施など、コストが掛かる点も考えると、発達障がい者の雇用定着を促進させるためには、一定の助成金を支給させることで企業メリットを持たせる部分も必要だと感じます。

先ず、ひとり採用し、その方が雇用定着すると「発達障がい者」への理解はかなり進むと思います。

⑥ 新しい働き方を後押しする「障がい者〇〇雇用助成金」

これからの障害者雇用が促進するためには、現行の働き方という枠組みの中だけで限界があります。障がい者の特性や特徴理解が進むと、これまでは雇用が難しいと感じられていた障がい者にも就労の光が差しますので、新しい雇用のかたちを生み出すために助成金が受けられるようにもなってきます。

障がいの特性や特徴によって、一般的な企業への通勤や勤務が困難な障がい者がいます。能力はあり、成果を上げる力も持っているにもかかわらず、一般的な働き方という枠に当てはまらないために雇用されない人材を助成金の活用で設備や新たなソリューションを導入して採用につなげるという考え方です。

例えば、テレワークなんかは障がい者の雇用に非常に有効的な働き方です。国や厚生労働省は2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでにテレワークによる働き方を増やそうと様々な取り組みや助成制度を打ち出しています。現状は障害者雇用に限らない助成制度は見受けられるのですが、更に障がい者の雇用に特化した助成制度が生まれてくると思います。

また、「農福連携」という言葉を聞いたことがあると思います。国内の農家は高齢化が進んでおり、その打開策として障がい者の労働力を農業に活かそうとする動きが活発化しています。各地域で助成制度を設けられているものを、本格的に全国で活用できる助成制度ができると思います。

農業の仕事というのは、障がい者の特性にマッチする部分が多く、業務の切出しや障がい者の特性理解が出来れば大きく伸びる可能性があります。数年先には農業の担い手は障がい者というのが珍しくない時代が来るでしょう。

障害者雇用に関する法律や助成制度を予想してみましたがいかがでしたでしょうか。

個人的には、法律による障害者雇用の促進という考えは仕方のない部分だと思っています。義務化させることで雇用が成長するというのは結果として出ているわけですから。

但し、企業に対して義務ばかりを負わせることで発生する弊害もあります。障がい者の雇用が企業の成長につながるようなメリットとなる部分も国や厚生労働省が示してもらえるともっと良い結果が生まれると信じています。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム