【Q&A】障がい者が転職活動でおさえておきたい4つのポイント(前編)

【Q】
いつもミルマガジンを拝見しています。
私はうつ病で精神障がい者手帳2級を取得してから企業の障がい者雇用枠で就職し、今年で3年が経過しました。
この度、色々と思うところがあり転職をすることになりました。
障がい者が転職をする際に気を付けるところがあれば教えてほしいと思いご連絡しました。よろしくお願いします。
《30代、男性、精神障がい者2級》

【A】

ご相談ありがとうございます。
最近は今回のご相談者のように転職に関する相談を受ける機会が増えてきました。コロナ禍だから世の中の景気が回復するまで転職は控えようと考える一方でコロナ禍だからこそ転職に踏み切ろうと行動に移すきっかけにしているようにも感じられます。どのような理由であるにしても、転職をするというのは今の環境を変える大きな一歩です。ひとつでも自分の理想に近い転職を実現してほしいと思います。

そこで、障がい者求人へのエントリーを前提として、自分の希望を少しでも叶えられる転職を実現させるためのポイントを4つ点からお話をしようと思います。
また、今回お話する内容は、転職を希望する障がい者の視点に立ったものとなりますが、裏を返せば採用側である企業が障がい者の採用活動を進める上で参考にしていただけるポイントにもなっています。

①,「自分」の伝え方を考える


障がいのある方の転職ですが、「エントリーする会社を選ぶ」ときに「会社の規模」「給料」だけで判断していませんか。それらももちろん大事な点ですが、同じぐらい大事なことは障がい者である「自分を伝える」ことです。

私が普段から障がい者雇用支援をしている企業が新規の採用活動をする際、書類選考や面接にも立ち会います。面接で重視していることのひとつは障がい当事者の「障がい特性と特徴」「特性を補う工夫」「必要な配慮を具体的に」など、自分の障がいをどの程度理解して、どのように障がい特性と付き合っているのか、更にははたらくことになった際に職場で必要な配慮がどのような内容なのかを知りたいと思っています。
例えば、障がいの有無に関係なく人は日常生きていく中で起こる様々な出来事をきっかけにして、心身に影響を受けてしまいます。時には何もやる気がなくなってしまうこともあります。そのような時に自分をリカバーする方法であったり、健康な状態を維持するための工夫や気分転換がある障がい者は企業にとって採用したいと感じる人材ですし、そういったことを障がい者本人から分かりやすく伝えてもらいたいと思っています。
障がい者が転職・就職をする場合、プロフィール書類と言われる一般的な履歴書や職務経歴書の項目を埋めるだけでは不十分です。理由は、プロフィール書類に上記にあることを文字で表記するには限界があるからです。その場合、私は別途「私の障がい特性と必要な配慮について」といった自分の障がいに関連したことを解説した書類の準備をおすすめしています。

これまでの経験からになりますが、就労移行支援事業所などに通所している障がい者は「私の障がい特性と必要な配慮」に類似した書類を作成し、エントリー時に企業へ提出することで「自分を理解して採用後に上手く活用してほしい」という気持ちをこちらに伝えようとしています。

「私の障がい特性と必要な配慮」の記載例

  • 自分の障がい特性による特徴

「感覚過敏がある」
「大きな声が怖い」
「トイレの回数が多い(時間が掛かる)」  など

  • お願いしたい配慮

「仕様書はイラスト・写真入りのもの」
「電話が苦手なことを部署に周知」
「1時間に1回休憩が必要」   など

  • 日常生活で気を付けていること

「週末も生活リズムを崩さない」
「毎日、自分の状態を記録する(睡眠時間、飲酒量、心の状態)」

また、相手に自分の情報を伝える最も良い方法のひとつとして動画(60秒程度)の活用があります。
企業側の人事担当者や配属先担当者の障がいの理解度によっては、プロフィール書類だけでは情報量や内容に偏りが出てしまうことがあるのですが、動画であれば正確な情報を分かりやすく伝えることができます。私自身が過去に企業へ障がい者を紹介する際に「自己紹介動画」を作成し人事担当者に見ていただいたとき、企業側の理解が速く、採用がスムーズに進んだ経験があります。

【例】

  • 下肢障がいの場合

どの程度の症状なのかを文章で伝えるよりも、「歩行の可否」「足の状態」を動画を通して確認してもらうことで分かりやすく理解が進む。

  • 発達障がいの場合

コミュニケーションが苦手ではない人材の紹介を口頭で説明するよりも、動画で自己紹介する様子を見ていただく方が理解が速い。

障がい者就労支援福祉サービスを利用している方であれば、支援担当者に自分が障がいについて説明しているところを撮影してもらい、エントリー時のプロフィール書類と一緒に送ります。
また、撮影をしてもらうことで自分の話し方や伝える言葉の確認をすることで、面接の練習にもなりますので是非試してみてください。
(YouTubeであれば非公開にして閲覧に制限や動画の削除をすることで限定した活用が可能です)

次回に続く

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム