桁が大きな数字を瞬時に認識するために (後編)

重要な情報にも関わらず、桁数の多い数字を読み間違えたりする。
これは実際に、筆者がしばしば直面するトラブルです。なぜ桁数が大きい数字を読み間違えるのか。それは筆者が「抽象的な事象の認識」に時間を要し、且つ「識字障がい」を抱えているからです。ではこの2つの特性を踏まえて、筆者が日頃、どのように桁の多い数字を扱っているか。前編後編の2回に分けてご紹介します。

桁が大きな数字を瞬時に認識するために (前編)

2020.04.21

後編のテーマは、「自身の特性活かして識字する術」です。

筆者から見える文字の世界

「識字障がい」と一言で言っても、その特性は人によって異なります。筆者がこの特性に気づいたのは、就業支援機関で“とある検査”を行っていた時でした。
その検査とは、ひらがなの羅列が書かれたシートから「あいうえお」のみを消していく、というもの。一見、単純な作業なのですが、何度やっても「あいうえお」が残ってしまいます。特に、「う」が残っており、何故だろうと首を傾げていました。そして、どうやら形が似ている「す」と見間違えているらしい、という事が分かってきました。

文字の“個性”を読んでいます


「う」が「す」に似ていると言われてもピンと来ないかもしれませんが、どちらも縦に長く、曲線や払いがある点から、筆者は形が似ていると判断したようです。自身の経験上、筆者は何か文字を読むとき、文字全体ではなく、その文字が持つ特徴的な部分に着目して読んでいます。つまり、その字の“個性”を見ているのです。

さて、そんな筆者の特性を表す1つのエピソードがあります。小学校1年生の頃、ある授業で「か」と「ガ」という2つの文字が掲げられました。そして、「この2つの文字の違いは何でしょうか?」と問いかけられます。この時想定されていた答えは「ひらがなとカタカナ」だったのですが、筆者は、真っ先に「点が一つ多い」と答えたのです。確かに「ガ」は「か」よりも点が1つ増えています。文字全体を見るのではなく、特徴的な点に着目したからこそ、この答が出てきたわけです。

文字の“個性”が見えない場合とその対策

文字の“個性”に着目するが故、文字全体を見ようすると目が眩み、識字する事が難しくなる事があります。例えば、「100,000」や「7,768」など、同じ数字や文字が続けて並ぶ場合。隣り合った「0」や「7」が潰れて見え、何桁の数字なのか一瞬見分けがつかなくなるのです。こんな時、前回ご紹介した「単位化」を応用して乗り切っています。例えば「万」や「千の」単位での区切ると、「10万」や「7千768」となり、文字の個性が読み取りやすくなり、識字し易くなります。
なお、表記を変えずに読む場合、コンマで区切られている3桁の数字を1単位として捉えると読みやすくなります。ただし、同じ数字が多過ぎて目が廻るため、初めのうちは小さい桁を指で隠して読み上げるようにすると徐々に慣れていきます。

識字障がいがあるからこそ、身に付いた事


さて、就業支援機関で識字障がいの特性があると分かった筆者は、同所にて、模擬業務を行いつつ、その特性をカバーする方法を模索しました。そして結局のところ、一言一句丁寧に読み上げる事が一番の対策となる事に気づきました。
現職ではデータ入力業務を担っていますが、入力間違えの回数は人並み程度には抑えられているのではないかと思っています。読み間違えるリスクがあるからこそ、自身の入力内容を疑って念入りに確認する習性が身に着き、実務に応用する事ができました。これは、自身の特性がもたらした技術だと言えるでしょう。

まとめ

今回は「自身の特性活かして識字する術」についてご紹介しました。
実は、この特性を活かして実現できたことがもう一つあります。それは速読。文字の特徴だけでどの文字か判断できるため、立ち止まる事なく読むことができます。もし読み間違えがあっても、その時点で文意が繋がりませんので、もう一度読み直して続けて読んでいく。これで筆者は様々な文章を読みこなしています。

これは日本語に限らず、英語や中国語などの外国語も同じく。自身の特性は、見方を変えるだけで、強みにも弱みにもなります。一方の面だけに着目せず、多方面から見てみましょう。そうする事で、自分が想像していなかった事が実現できるかもしれません。

ではまた次回、お会いしましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

野添 浩一郎 (阪和興業株式会社 大阪本社 人事部厚生課)

1989年生まれ。2015年末、ADHD(注意欠陥多動性障がい)と ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。その後、LD(学習障害)の特性がある事も判明する。それまで自身を健常者と見做して生活してきたが、生活の様々な場面で支障を来しており、それ以降、自身の障がい・特性を認めた上で活かすようになった。永らく、自身の特性から低い自己肯定感に苛まれていたが、大学院時代に知り合った留学生たちと、留学先の米国で自己肯定感を高めることになる。2016年末より現職。