「令和5年障害者雇用実態調査の結果」から分かる障がい者雇用の課題

2024年度が始まりました。今年度は障がい者雇用に関連した法律の改正があり、その特徴のひとつとしては民間企業を対象とした法定雇用率が2024年4月1日に2.3%から2.5%、2026年7月1日に2.5%から2.7%へ引き上げられます。障がい者雇用に取り組む企業にとっては大きな環境変化を迎えることになります。

これからの時代、障がい者雇用の分野においてもさまざまな視点からの情報を元に取り組みを進めることで法定雇用率の達成はもちろんですが、人材不足が叫ばれる中でも多様な人材が活躍する組織の構築を実現させることも可能にします。そのような組織は魅力のある組織と見られるために人が集まり、人が集まる組織では企業を成長させる可能性が生まれ、結果として企業価値を高められることができると考えます。

厚生労働省から毎年公表される「障害者雇用状況の集計結果」では、法定雇用率の対象となる企業からの六一報告の数値をもとに民間企業と国・地方行政機関における障がい者の雇用状況(企業規模ごとの雇用実績、法定雇用率の達成割合、産業別の雇用状況等)を見ることができます。
この「障害者雇用状況の集計結果」の他に、5年ごとに実施される障がい者雇用実態の調査報告となる「障害者雇用実態調査結果」があります。

【参考:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001233721.pdf

「障害者雇用実態調査結果」とは常用労働者5人以上を雇用する民営事業所のうち、無作為に抽出された約9,400ヶ所の事業所を対象とし、令和5年の調査では回答数6,406ヶ所(回収率67.9%)の事業所からの状況をもとにしています。今回の調査結果からの推計では、従業員規模が5人以上の事業所に雇用されている障がい者の数は1,107,000人となり、前回の調査と比較すると256,000人の増加となりました。(平成30年度の調査では851,000人)

この調査では、回答された企業の雇用状況をもとに、「障害者雇用状況の集計結果」では障がい者の雇用義務のある企業(法定雇用率2.5%・常用雇用労働者40.0人以上)に該当しない規模の企業による障がい者雇用数を推計として表すことができる点が特徴のひとつとなります。

【特性別障がい者雇用数(推計値)】

全国 1,107,000人(前回調査 851,000人・30.1%増)

  • 身体障がい者 17,425人 → 526,000人(前回調査 423,000人・ 24.3%増)
  • 知的障がい者  5,964人 → 275,000人(前回調査 189,000人・ 45.5%増)
  • 精神障がい者  6,387人 → 215,000人(前回調査 200,000人・ 7.5%増)
  • 発達障がい者  1,583人 → 91,000人(前回調査 39,000人・233.3%増)

障がい者雇用義務以外の企業規模も含めた雇用数は100万人以上と推計


今回の調査では民営の企業による障がい者の雇用数が初めて100万人を超えました。直近の内閣府から公表されている障がい者白書による障がい者人口は約1,160万人と推計されていますので、障がい者のおよそ10%が雇用されていることになります。ちなみに国内の全人口約1億2100万人から見ると障がい者の雇用率は1%未満となります。

「障がい者雇用状況の集計結果」で公表されている全国の障がい者雇用数は、直近である令和5年では642,178.0人でした。障がい者の雇用義務のない企業規模まで範囲を広げた雇用数の推計が1,107,000人ですから、常用雇用労働者数5〜43.5人未満(法定雇用率2.3%)の企業に527,822人の障がい者が雇用されていることになります。

賃金、雇用形態、就業時間の統計が把握

「障害者雇用実態調査結果」では「障害者雇用状況の集計結果」では公表されていない企業の雇用条件や待遇も含めたデータ(性別、年齢階級別、雇用形態・週所定労働時間別、職業別、賃金の状況等)を身体・知的・精神・発達障がいごとに見ることができます。

例えば、下記に「雇用形態・週所定労働時間別」の項目にあるデータの一部を抜粋します。

【雇用形態・週所定労働時間別】

「雇用形態別雇用者数の割合」

無期・正社員 有期・正社員 無期・契約社員 有期・契約社員 無回答
身体障がい者

53.2%

6.1%

15.6%

24.6%

0.5%

知的障がい者

17.3%

3.0%

38.9%

40.7%

0.1%

精神障がい者

29.5%

3.2%

22.8%

40.6%

3.9%

発達障がい者

35.3%

1.3%

23.8%

37.2%

2.4%

障がい特性により違いはあるものの、雇用される側として見たときに理想とする形態である「無期・正社員」で半数を超えているのは身体障がい者(53.2%)のみでした。全般的には「有期・契約社員」による雇用形態が多いと感じます。

しかしながら、今回の法定雇用率の引き上げをはじめ障がい者の雇用を進める企業に対して「質」を問われることが予想されます。また、障がい者の求人企業がこれまで以上に増加しますので、企業間での採用競争が激しくなるのに伴い、障がい者にとっては働く選択肢が多くなります。
これは現職中の障がい者の中にも、雇用条件・仕事内容・働く環境が今以上に良いと感じられる企業への転職も活発化することが考えられます。そういったときに、今後も現在の雇用条件のままで良いのかと再考する時期が来るのではないでしょうか。

雇用において感じている課題、企業が置かれている状況

もうひとつこの調査で特徴的なデータとして後半部分に掲載されている「5 障害者雇用上の課題及び配慮について」「6 今後の障害者雇用の方針について」です。

「5」では企業が障がい者雇用に取り組む上で感じる課題や障がい者に提供する配慮、支援事業等の専門機関との連携・期待する点について、障がい特性ごとの回答状況を見ることができます。例えば、「雇用するに当たっての課題」の有無に関する設問には60%以上の企業が身体・知的・精神・発達障がい全ての特性において「ある」と回答。また、課題の内容として「会社内に適当な仕事があるか」という項目の選択が最も多く、全ての障がい特性で70%を超える結果となり、「障がい者の雇用」と「任せる業務」に関する点に課題を感じる企業が多いということが分かります。
また、社外にある専門機関に関して、「障がい者雇用における事業所と関係機関の連携状況」についての設問にある「募集・採用する際の連携状況」を見ると、公共職業安定所や障がい者就業・生活支援センターのような機関を使用している割合が10%台(身体障がい者16.0%、知的障がい者15.3%、精神障がい者13.9%、発達障がい者10.8%)という数値の低さに驚きました。

次に「6」では、今後障がい者雇用を進める上での意識に関する調査となります。設問「今後の障がい者雇用の方針」にある4つの選択肢「積極的に雇用したい」「一定の行政支援があった場合雇用したい」「雇用したくない」「わからない」では、「積極的に雇用したい」が最も低く(身体障がい者12.8%、知的障がい者6.4%、精神障がい者6.5%、発達障がい者6.0%)、最も多かったのは「わからない」(身体障がい者50.7%、知的障がい者54.5%、精神障がい者53.6%、発達障がい者56.3%)という結果でした。
これが企業の本音なのかと思うと非常に残念です。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム