定着率が上がる!障がい者採用で失敗しないポイントは面接と実習

年間に就職する障がい者のうち、身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の中で最も多い障がい特性はどれかご存知でしょうか。
ミルマガジンのコラムをご覧いただいている方であればお分かりだと思います。そうです。答えは「精神障がい者」になります。厚生労働省から毎年公表されています「障がい者の職業紹介状況等」の最新データである令和元年の『障がい特性ごとの就職件数』を見てみると、

身体障がい者 : 25,484件
知的障がい者 : 21,899件
精神障がい者 : 49,612件
その他の障がい者 : 6,168件

参考:厚生労働省「令和元年度 障がい者の職業紹介状況等

となっています。

年々、就職される障がい者は増加傾向にあり、その半数は精神障がい者というのが現状です。その一方で、詳細なデータとして公表はされていませんが、離職率が最も高い障がい特性も「精神障がい者」となります。就職実績が顕著に伸びている状況にもかかわらず、離職してしまう障がい者の方たちが多いというのはとても残念な事実です。

様々な離職理由が考えられますが、仮に採用側が対処を設けることで採用した障がい者がしっかりと職場に定着してもらうことができるのであればどうでしょう。
人事担当者には周知のとおり、2021年の初めには法定雇用率が2.3%に引き上げられることが決まっています。現在、新型コロナウイルスの影響はあるものの障がい者求人数は思いのほか減っていないというのは、企業の採用意欲は依然高いままだということを感じさせます。おそらくですが、一時的に企業の採用が足踏み状態となっていますが、徐々に求人活動は動き出します。現時点で、できる障がい者採用の準備を進めておいてはどうでしょう。

ということで、今回は人事担当者が苦労して採用した障がい者が辞めないためのポイントを『面接』と『実習』に絞ってご説明します。これは、採用した人材の職場や仕事との適性はある程度働いてからでないと分からない部分もありますが、採用の合否を決める段階で最適なマッチング判断ができれば、企業にも障がい者にとってもメリットが大きいと思います。

『言うべきこと』『聞くべきこと』が実行できていますか?


障がい者を採用するときの面接では、『言うべきこと』『聞くべきこと』をしっかりと実行できているかが、職場の定着に大きく影響をしてきます。これは、障がい者採用以外の場面でも頻繁に見られますが、特に障がい者の場合は「言った言わない」が大きな問題となり、時には労働争議にまで発展することも少なくありません。

  • 雇用待遇について(言うべきこと)

・正社員登用制度がある場合、勤続〇年後に正社員登用となるのか。
・昇給制度、賞与、有休(日単位・時間単位)制度の詳細。
・雇用後の対応。(職場での具体的配慮、相談窓口など)

  • エントリー人材について(聞くべきこと)

・障がいによる特徴(「できること」「できないこと」、日常生活で感じる不便)
・社会経験(学生生活、職業履歴)から適性を見る
・障がいによるエピソード(失敗談、成功体験、経験した差別)

『面接』の場面というのはお見合いとよく似ています。企業は「障がい者を雇用したい」と思い、障がい者は「企業に就職したい」と思っています。お互いが相手を必要としていますから、『嫌われたくない』『断られたくない』という気持ちが前に立ちがちなため、『言ったら嫌われる』『聞くと嫌がられる』という想いから『言うべきこと』『聞くべきこと』を避けがちです。
正式なお付き合い(この場合は雇用関係)が成立する前ですし、『面接』とはお互いのことをよく知る機会ですから、この時は遠慮せずに『言うべきこと』を言い、『聞くべきこと』を聞いてください。
注意していただきたいのは、当然のことながら「差別的なこと」「採用に関連しないこと」を話題に出してはいけません。

職場定着を実践している企業の多くが導入!


『面接』で『言うべきこと』『聞くべきこと』を実行していただいた次は『実習』の導入です。
障がい者雇用に取り組む中で、特に初歩的な原因(業務適性の不一致、職場の理解不足、障がい者本人の問題など)によりミスマッチが発生したとすれば、それ以降の障がい者雇用への取り組みに対して悪影響になりかねません。(大きなトラブルに発展した場合は特に)

《雇用ミスマッチ後の悪影響》

▲障がい者へのイメージが悪化
▲組織内での雇用意識の低下
▲障がい者雇用に対するトラウマ

こういった悪影響(特に「障がい者雇用に対するトラウマ」)により、組織内における障がい者雇用構築の足枷(邪魔)となり、社内理解に苦労する人事担当者をたくさん見てきました。
実は、障がい者雇用実績の高い企業や特例子会社では、障がい者採用の際に『実習』を導入しているところが多くあります。(ほとんどだと表現して良いかもしれません)大きな理由は「ミスマッチをなくす」ことです。

『面接』にてお互いが確認したことを更に掘り下げた形で認識するための場面が『実習』です。もちろん、『実習』の導入は義務ではありませんが、現在の採用ターゲットである精神障がい者・発達障がい者の雇用定着を考えると『実習』で得られるメリットは非常に高いと感じます。
※個人的には、障がい者雇用の際の『実習』を一部の企業(例えば「納付金(罰金)支払い企業」「障がい者雇用ゼロ企業」「精神障がい者の未雇用」)を対象に義務化し、助成金などのサポートも受けられるといった制度として法律化されると更に導入が進むと思います。
『実習』の導入にあたっては、近隣の「障がい者就労支援福祉サービス(福祉事業所)」や「特別支援学校」などの支援機関への求人相談をすることで進めていくことができます。

各支援機関により流れは多少異なりますが、概ね下記のような進め方が一般的です。

【実習の進め方例】

  1. 支援機関への求人相談(採用部署、仕事内容、待遇)
  2. 支援機関による候補者の選任と提案
  3. 一次面接(実習に向けた確認)
  4. 実習受け入れ準備(業務の切り出し、社内研修、マニュアル作成 など)
  5. 実習開始
  6. 最終面接
  7. 採用

期間については①~④で1~1.5ヶ月程度、⑤~⑦で1ヶ月。(そのうち実習期間は3週間程度)

流れをご覧いただくと、『実習』では雇用したことを意識してより具体的に「担当業務との適性」「職場の人間関係・コミュニケーション」「周囲の配慮」などを確認することができることが分かります。そのため雇用してからのミスマッチが起こりにくくなっています。支援機関のような外部リソースに頼るメリットは他にもあり、認識できていなかった障がいのことはもちろん、活用できる助成金や制度に関する詳しいアドバイスをもらうことができます。

繰り返しになりますが、新型コロナウイルスの感染予防のこの時期を利用して、障がい者雇用の準備を進めてみてください。今回お話しました『面接』や『実習』について、導入がまだのようであれば是非参考にしてください。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム