『令和2年 障害者雇用状況の集計結果』を参考に自社の取り組みを考えてみる

あと少しで2020年度が終わろうとしています。企業はこの1年の業績や様々な活動の成果をまとめる時期になります。
障がい者の雇用義務のある企業の人事担当者にとっては、1年間を通して「法定雇用率をクリアできていたのか」「雇用した障がい者の職場定着」「計画通りの求人活動」など、自社の雇用状況や今後の採用について振り返ることが多いと思います。

また、2020年は新型コロナウイルスが原因で雇用やはたらく場面にも大きな変化を求められる時代が始まったと感じます。それは、2021年度の障がい者の雇用計画にも少なからず影響を与えるものになりそうです。

2021年1月に『令和2年 障害者雇用状況の集計結果』が厚生労働省から公表されました。ご存知の経営者や人事担当者も多いと思いますが、ロクイチ報告として企業から労働局に提出される障がい者の雇用状況が集計され、毎年この時期になると厚生労働省のHPで閲覧することができる資料です。

参考:厚生労働省HP『令和2年 障害者雇用状況の集計結果』
https://www.mhlw.go.jp/content/000747751.pdf

この資料では、障がい者の雇用義務のある企業を対象に、前年と比べて今年度の障がい者雇用がどのような実績であるかを確認することができます。いくつかのポイントに絞ってお話したいと思います。

《雇用障がい者数は17年連続で過去最高》


令和2年の企業での障がい者雇用数は578,292名。内訳は、

  • 身体障がい者356,069名:前年比0.5%増、雇用全体の61.6%
  • 知的障がい者134,207名:前年比4.5%増、雇用全体の23.2%
  • 精神障がい者88,016名:前年比12.7%増、雇用全体の15.2%

となりました。
もう少しで60万人に到達します。企業の障がい者雇用で最も多い障がい特性が身体障がい者で、次に知的障がい者・精神障がい者となります。
法律により企業で障がい者雇用が義務化されてから今日まで、身体障がい者が雇用の半数を超えていましたが、そこには少しずつ変化が見られます。
今から10年前となる2010年の統計の数値を下記に記してみました。

  • 身体障がい者271,795名:前年比1.3%増、雇用全体の79.2%
  • 知的障がい者61,237名:前年比7.7%増、雇用全体の17.9%
  • 精神障がい者9,941.5名:前年比28.9%増、雇用全体の2.9%

企業の障がい者雇用数は342,973.5名となり、この頃からはたらく障がい者が20万人以上も増えたことになります。障がい者雇用が社会に認識され、企業努力による成果だと思います。(2020年の身体障がい者雇用数だけで2010年の障がい者雇用数全体を上回っています)

雇用で最も多い身体障がい者の割合が当時は約80%を占めており、最も少ない精神障がい者は全体の3%程度でかなり大きな開きがありました。2020年になり雇用全体の身体障がい者の割合は約60%まで減少、一方で精神障がい者が約15%まで増加し、順位に変わりはありませんが、それぞれの割合には大きな変化が見られる状況になりました。
それは、「障がい者雇用」が企業活動のひとつとしての認識が進み、その結果として特定の障がい特性への偏りから徐々に緩やかなものになってきました。

しかし、障がいへの理解は道半ばと感じ、特に精神障がい者が年間に離職される件数を考えると、企業側と支援側が取り組むべき課題は大きなものだと言えます。

参考:厚生労働省「障害者雇用の現状等 平成29年9月20日厚生労働省職業安定局」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000178930.pdf

新型コロナにより「テレワーク勤務」の認知が広がり、大企業を中心に導入を進める動きが生まれました。この動きは障がい者採用でも見られ、「テレワーク勤務」が雇用条件に含まれる求人票も目に留まるようになってきました。これは、車イスを使っている重度の身体障がい者や通勤・出社が困難な障がい特性のために採用に二の足を踏んでしまっていた人事担当者にとっては、採用のターゲットとして雇用の幅を広げる大きなチャンスとなります。
おそらく、新型コロナが収束した後でも、テレワークというはたらくスタイルは社会に浸透していると考えられますので、これまでの常識と違ったニューノーマルな障がい者雇用が進んでいくと思います。

《法定雇用率を満たした企業は半数以下》

毎年こちらのデータが公表される際に気になっているのが、「法定雇用率達成企業の割合」です。今回の達成企業の割合は48.6%で、前年度より0.6ポイント上昇したことになります。
こちらも過去10年まで遡って見てみたいと思います。

上記の図にあるように、法定雇用率を達成している企業の割合は、ここ10年で見ると40~50%の間で推移しており、達成率が最も高い割合の年でも50.0%(2017年)で、概ねが半数を割り込んでいます。
次に企業規模(従業員数)ごとの達成割合を見てみましょう。

  • 45.5~100人未満(50,544社):45.9%(前年45.5%)
  • 100~300人未満(36,787社):52.4%(前年52.1%)
  • 300~500人未満(7,078社):44.1%(前年43.9%)
  • 500~1,000人未満(4,818社):46.7%(前年43.9%)
  • 1,000人以上(3,471社):60.0%(前年54.6%)

全ての企業規模で前年よりも達成の割合は増加しており、更に「100~300人未満」「1,000人以上」の規模の企業では、半数以上が法定雇用率を達成しています。

今後、障がい者雇用を進めていくにあたり、法定雇用率をクリアする企業を増やしていくことが目標のひとつになると考えます。一度法定雇用率を達成した企業の心理というのは、その状態を維持させたいという意識が強く働くため、継続した採用活動や職場定着への取り組みが活発に行われます。その一方で、障がい者雇用に積極的ではない企業もまだまだ多く、このままの状況では両社の雇用実績は大きく開いていくことになります。

今後、障がい者の雇用を増加させていくには、法定雇用率が未達成の企業のうち「雇用ゼロ企業」「企業数の多い45.5~100人未満のゾーン」の取り組みが大きく影響してきます。

「障がい者の数が0人である企業数(雇用ゼロ企業)」

  • 45.5~100人未満(50,544社):25,478社
  • 100~300人未満(36,787社):5,020社
  • 300~500人未満(7,078社):39社
  • 500~1,000人未満(4,818社):4社
  • 1,000人以上(3,471社):1社

雇用が進むきっかけのひとつとして予想されるのは、雇用率未達成における納付金(罰金)の対象範囲の拡大だと思います。(現在は従業員100人以上)
しかしながら、罰則規定による雇用の促進よりも、障がい者人材が企業の雇用や活動にとってメリットがある存在だと気付いてもらいたいと考えます。そのためには、はたらく障がい者と関わることができる機会や実習のような採用につながるきっかけ作りが重要になってくるでしょう。

《特例子会社の役割り》

障がい者雇用状況の集計結果では、特例子会社の雇用状況についても公表されています。
今回、特例子会社は前年から25社増え542社となりました。特例子会社ではたらく障がい者は38,918.5名で前年よりも2,144人が増えたことになります。
特例子会社ではたらく障がい者の内訳はこのようになります。

  • 身体障がい者:11,573名
  • 知的障がい者:20,552.5名
  • 精神障がい者:6,739名

特例子会社では知的障がい者が最も多くはたらいています
はたらく周囲の環境が特例子会社のような理解の進んだところだからという理由ではありますが、一般企業でも知的障がい者が活躍する姿を見かける機会も増えてきていると感じていますので、そういう意味では適材適所に当てはまれば十分な戦力として雇用することができます。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム