Q&A:従業員の障がい者雇用の理解を進める方法

皆さんのところでは障がい者の採用や雇用定着に向けた取り組みは進んでいますでしょうか。取り組みを進める中で色々なカベにぶつかることも多いと思います。

今回は、障がい者雇用を進める際にいただく相談としてはとても多く聞かれるテーマを取り上げました。

 

メーカー・従業員数約2,000名・人事担当者

いつもお世話になっております。

現在、法定雇用率の達成に向けて障がい者の新規採用に取り組んでおります。

少しずつではありますが、新しい障がい者の採用ができています。しかしながら、これまでは身体障がい者しか採用しておりません。今後、精神障がい者の採用にも取り組もうと考えておりますが、社内の理解が進まないために職場からは反対の声が出ています。

そこで、障がい者雇用の理解を社内に浸透させるためのアドバイスをお願いします。

 

具体的なアドバイスをお話しする前に、おさらいの意味も込めて企業か直面している障がい者の採用や雇用に関わる課題や問題を下記に列挙いたします。

【課題と問題】

『障がい者雇用に関連する法改正への対応』

・2018年4月「精神障がい者の雇用義務化」

・定期的な法定雇用率の見直しに合わせた新規採用

『障がい者採用企業増加に伴う売り手市場』

・納付金支払いの対象企業が101名以上の従業員規模企業に引き下げ

・大手企業が障がい者を積極採用

『障がい者の職場定着』

・障がい者の長期雇用の実現が雇用率維持につながる

・自社に最適な求職者の見極め力が必要

『身体障がい者以外の雇用促進』

・今後は精神障がい者、発達障がい者が採用ターゲット

・これまでの障がい者雇用と違った枠組み作りが必要

『合理的配慮』

・障がいを理由とした職場での差別が禁止

『社内の障がい者理解不足』

・精神障がい者や発達障がい者は見て分かる特性ではないため

・既存の従業員を第一に考え、一緒に働くためには障がい者の特性理解が必要

これから本格的に障がい者雇用に取り組むためには、これらの課題解決策を準備しなくてはなりません。

それでは、今回のご相談にありました「従業員の障がい者理解」という点は、社内に障がい者雇用を根付かせるためには、避けて通ることができないと考えます。従業員の障がい者理解というのは、“障がいを持つ従業員のため”というのは当然よく言われることなのですが、実は普段から関わることが多くなる“周囲の従業員のため”にもとても大切なことになります。

理由は、一緒に働く障がい者の特性理解をすることで、コミュニケーションなどに見られるストレスが軽減され、自分自身に与えられた業務に集中することができます。また、今後は精神・発達障がい者の雇用が進む中、身体よりも周囲の関わり方も大きく変わるため、その意味でも障がいの理解は必要となります。「障がい者理解」=「働きやすい職場環境作り」だという認識を従業員の方たちへ伝えることが担当者の大きな役割となります。

障がい者の理解促進として活用できる具体的な取り組みをご紹介します。

① 従業員への研修・勉強会

企業が障がい者の雇用をしないといけない理由を知らない従業員がほとんどです。そのような状況で会社から「障がい者を採用するので皆さんご協力をお願いします。」と言われても「?」となってしまいます。しっかりと、理由を説明する機会を設けてください。

研修の内容としては、「法律の説明(雇用の必要性)」「身体→精神・発達障がい者の雇用理由」「会社の姿勢(形だけのCSRやダイバーシティではないということ)」「雇用事例」など。これらの内容を自社だけで実施することは非常に難しいですから、お近くの就労系福祉事業所(就労移行支援事業所など)や人材会社、コンサルティング会社にご相談ください。

② 障がい者の体験実習の受入れ

これからの障がい者雇用は、「就労移行支援事業所」と呼ばれる国が認可した福祉事業所の活用をお勧めします。事業所によって様々な特徴がありますので、自社に適した事業所を探すところから始めるのですが、専門性の高いアドバイスやサポートを受けられますので、心強い味方になるでしょう。

それら、「就労移行支援事業所」で訓練を積んでいる障がい者(利用者といいます)を職場実習として受け入れることができます。

この職場実習のメリットは、障がい者の知識が乏しい時や間違った思い込みを正しいものにアップデートすることができます。実習で来られる障がい者の方たちはビジネスマナーやスキルの習得をし、いつでも就職ができる状態となっていますので、良い意味で障がい者に対する期待を裏切ってくれます。

また、自社で採用する際にも業務の適性や相性などを知る上で、とても参考になります。

③ 障がい者雇用企業の見学会

障がい者の雇用を上手く実践している企業の中には、多くの企業が参考にしていただくための見学会を実施しています。

それら企業の現在の姿は、たくさんの障がい者の適性を見極めた人員配置や社内雰囲気を作り出しているため、レベルの差を感じることも多いのですが、「入社してもすぐに辞める」「障がい者同士の揉め事」「プライベートな問題」など、苦労の連続からスタートしています。そういった経験のお話しを聞くことで、自社に足りなかったことや目指すべきものが見えることがあります。

また、職場での工夫や健常者との共存など、ひとつずつ培った知識を体験することで障がい者への理解が深まることでしょう。

それと、障がい者であっても働く姿勢の力強さを感じる等、多くのことを学ぶ機会が見学会で得られます。

人事担当の方たちは見学会に参加されていることが多いようなのですが、ぜひ他の従業員にもそのような機会を設けてみてはいかがでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム