毎年12月の中旬になりますと障害者雇用に大きく関連する情報が厚生労働省から公表されるのをご存知でしょうか。
それは、「障害者雇用状況の集計結果」といわれており、その名の通り毎年「障がい者が雇用されている状況を集計し、その結果を発表する」というものです。
この資料で公表される数値や結果を心待ちにしているのは、行政機関はもちろん障がい者の就労系支援をしている福祉機関、支援学校などが多く、一般の企業担当者からするとあまり身近なものという感じはしないのではないでしょうか。
7月中旬ごろに管轄の労働局に報告する「障害者雇用状況報告書」(ロクイチ報告)といえば、総務や人事担当者にはピンとくるのではないかと思います。
ちなみに、もし虚偽報告をした場合、30万円以下の罰金を支払うことになるということですからご注意ください。
こちらで公表される数値には、「障がい者の雇用数」「法定雇用率の達成率」「法定雇用率の達成企業の割合」「障がい特性ごとの雇用実数」「企業別、産業別の雇用実数」などがあります。併せて、行政機関の雇用に関連した数値なども公表されています。
それでは、今年公表された数値について気になる部分をお話ししてみたいと思います。
平成29年障害者雇用状況報告
今回、平成29年の「障害者雇用状況報告」の対象となった企業の数は、昨年の89,359社より1,665社増えた91,024社だったようです。
現在、障がい者の雇用義務のある企業規模は従業員数が50名以上となり、法定雇用率2.0%で見た場合、1名の障がい者を雇用することが決められています。ちなみに2018年度に法定雇用率が2.2%に引き上げられると従業員が46名以上の企業に対して義務化となります。
法定雇用率2.0%を達成した企業の割合は50.0%となり、昨年よりも1.2%改善されたことになります。これは、来年度の法定雇用率引き上げが2017年5月に厚生労働省から具体的数値として正式に発表されたのを受け、危機感を感じた企業が積極的に採用を進めた結果だというふうに見られます。これに伴って、法定雇用率の平均値も前年の1.92%から1.97%と増加する結果となりました。個人的にはこのままの調子で平成30年も同水準以上の達成率が実現すればいいのになぁと思います。
障がい者の雇用実数
次に、障がい者の雇用実数を見てみましょう。
こちらも全般的に前年を上回った数値となっています。
先ず、雇用されている障がい者の数は495,795.0人で前年比21,421.0人(4.5%)増加となりこれで14年連続して過去最高を記録しています。
障がい特性ごとの内訳としては、身体障がい者が前年比5,854.0人増の333,454.0人。知的障がい者が前年比7,547.5人増の112,293.5人。精神障がい者が前年比8,019.5人増の50,047.5人となります。
この中で注目される点としては、それぞれの障がい特性の雇用における前年比からの伸び率です。最も高い伸び率だったのは精神障がい者の19.1%で、5年以上20%前後の数値で雇用が増加しています。逆に身体障がい者の伸び率は1.8%と低く、特に都心部にある企業が身体障がい者の採用が困難な状況下にあることを表しています。
内閣府が公表している「障がい者白書」の数字を見ると、身体障がい者と精神障がい者のそれぞれの人口は約394万人と約392万人とほぼ同数なのに対して、上記の雇用の数字を見た場合、身体障がい者が約33万人で精神障がい者が約5万人と28万人にひらきがありますが、徐々にこの差が縮まってくることになります。これは、年間で採用する障がい者のターゲットが精神障がい者に移行していることを意味しています。
精神障がい者の雇用数
精神障がい者の雇用数に関連して、気になった点をお話しします。
こちらでは特例子会社に関する数値も公表されており、集計をしていた時点で特例子会社の設立数は464社で29,625人の障害者雇用を実現しています。ここでも障がい特性ごとの雇用数が出ているのでお伝えします。
身体障がい者が10699.5人。知的障がい者が15.402.0人。精神障がい者が3,667.5人。となり、特例子会社でも精神障がい者の雇用数が少なく、身体障がい者の雇用数の半分にも満たない数字でした。とても意外な印象で、特例子会社であれば各障がいのこようすうはよく似た数字なんだと勝手に思っていたのですが、実は結構ひらきがあるんだという感想です。
次に、都道府県別の実雇用率の状況を見ることで、順位を付けてみることができます。
平成29年のベスト3とワースト3は下記の通り
ベスト1・・・奈良県(2.62%)
ベスト2・・・山口県(2.56%)
ベスト3・・・佐賀県(2.54%)ワースト1・・・東京都(1.88%)
ワースト2・・・愛知県(1.89%)
ワースト3・・・千葉県(1.91%)
大阪府と神奈川県が1.92%という数値ですから、地方に比べて大きな都心部を持つ地域が障害者雇用に苦戦しているということが分かります。
今後の法定雇用率上昇を考えると地方の人材の採用に目を向けていくことが必要だということを改めて感じさせられます。
法定雇用率未達成企業
最後に法定雇用率に未達成企業の詳細についてお話ししようと思います。
公表されている数字を見てみると企業規模が小さいほど、法定雇用率が守られておらず、ひとりも雇用をしていない企業は未達成企業45,471社のうち半数以上の26,692社となります。
正直なところ、従業員数が50名や100名程度の規模の場合、障がい者の雇用数は1~2名となります。従業員数が101名以上の企業であれば不足数に対して納付金の支払いが生じますが、12ヶ月を通して1名が不足していても60万円の支払いでその年は許してもらえるなら積極的な採用を実施する企業は少ないと思います。
個人的には、障害者雇用を熱心に取り組んでいる企業の評価を高くするためにも納付金額の見直し(もちろん引き上げ)をするタイミングに入っているのではないかと考えます。
今回お話しした以外にも注意したい数字があります。ぜひ、これを機会に企業の担当者の方にも興味を持っていただきたいと思います。おそらく、自社のポジションや取り組むべきヒントがあるのではないでしょうか。