書籍:「障害のある方と共に働く」

今回ミルマガジンでご紹介する書籍は株式会社レオウィズの代表取締役 汐中義樹氏が執筆されました『障害のある方と共に働く』です。
著者の汐中氏の経歴ですが、都内にある小学校と特別支援学校にて教育者としての経験をもとに、現在は企業向けの障がい者雇用・DE&I推進のコンサルティング、指導員・相談員の方への教育研修を行う事業を起業。教職者の立場で障がい者(児童)と関わり、教鞭をとった経験から企業で働く障がい者との接し方やコミュニケーションの重要性、障がい者の理解とはどのようなことなのかを障がい者雇用経験の浅い企業の人事担当者でも分かりやすい情報として発信されています。

職場では、様々な理由から日々小さなトラブルや業務上の課題が発生します。それらトラブルや課題の発生には概ね原因・理由が存在します。突発的に発生したものでない限りは、原因を追求し再発の防止に努めることが大切なプロセスだと考えます。同様に障がい者が働く職場でも小さなトラブルや課題、困りごとが起こり、その都度原因を探り対処法を実行していくことが理想の形です。
しかし、時にはたどり着くことが困難な原因の場合、その後の障がい者雇用の取り組みにも少なからず影響を与えてしまうことが考えられます。今後も継続した法定雇用率の引き上げ等の法律改正、多様性社会・DE&I推進が企業評価とされる中、障がい者の採用・雇用活動において組織としてブレーキが掛かってしまう状態は経営者・人事担当者にとって避けたいはずです。

障がい者と一緒に働く際に難しいと感じる場面は「合理的配慮」「コミュニケーション」といった『関わり方』のことだと思います。「合理的配慮」の場合「どのような配慮をすれば良いのか分からない」「色々な配慮を求められても対処できるだろうか」、「コミュニケーション」の場合「伝え方が分からない」「どのように声をかけて良いのか分からない」等の声が職場から聞こえてきます。

本著では著者の教育者としての経験から、仕事の場面で障がい者と関わる上で大切なポイントを解説しています。障がい者の中には想定していない行動や発言をする方がいた場合、周囲で一緒に勤務する側の理解が及ばずに結果として拒絶・否定的な態度を取ってしまうこともあります。そういった行動や発言には理由となる背景があります。
その背景を周囲が理解することで、障がい者と関わる中で起こる“分からない”がひとつずつ解消(=理解)することができます。



例えば、私も普段から障がいのある方たちと定期的に面談を実施しているのですが、自分に自信が持てない考え・発言をする方や普段から理由もなく不安な気持ちを抱えている方と出会うことがあります。私もどちらかと言えば物事に対してネガティブに捉えがちなところがあり、自分に自信を持てているかと問われれば「No」と答えるタイプですが、それ以上に自尊心が低く、不安さを感じている方がいます。

そういった方の中には過去の経験が大きく影響していることがあります。それはイジメや差別等の苦い経験の場合も考えられます。そういった背景の理解から「強い口調での指示はやめよう」「できたことに対して褒めてみる」等の関わり方を行うことが、結果的に障がい者が仕事で成果を生み、周囲から認められ、チームや組織の指揮が上がるのだと考えます。

また本著では、これから企業が求められる障がい者雇用の質に関わるポイントについても言及しています。ワーク・エンゲージメントに目を向ける組織が大企業を中心に広がりを見せています。これまでの障がい者雇用では、企業にとって取り組む原動力のひとつが法定雇用率の達成でした。

しかし近年では、法定雇用率の達成(量)に加え障がい者の雇用の質も問うていきたいという声が聞かれるようになってきました。分かりやすいところで言いますと中小企業を対象とした「もにす認定制度」にもありますように、障がい者を雇用する上で職場の環境を整備し働きやすさ・安全性を提供するだけではなく、任せられる業務を通じての成長・キャリアアップ、安定した就職の先に生活設計ができるような機械が提供できているのかまで整えることが必要だと考えます。現在進行形として、求職活動・転職活動をしている障がい者にとって求人市場はまさに売り手市場となっています。

例えば、雇用条件が「一般従業員に比べて格差がある」「キャリアアップのチャンスがない」「雑務・付随的な業務>基幹業務」となっている企業の場合、職を求める障がい者にとって売り手市場が進めば好条件の求人が増えてきますので、これまでの雇用条件のままでは新規採用はもちろん、雇用定着も新たな視点を加えた条件の見直しが迫られるようになると感じています。
長年、障がい者雇用に携わってきた私にとって、障がい者雇用の領域にもワーク・エンゲージメントの考えが浸透し始めていることに対して大きな期待を寄せています。

本文では「法定雇用率から近い将来『法定定着率』」という文章があるのですが、私も将来的には、雇用された障がい者の働く期間に加え満足度を数値化して確認することができる指針ができるのではないかと考えています。

本著では著書名の通り障がいのある方と共に働く上で知っておくとメリットになるポイントが多数紹介されています。これから障がい者雇用に取り組む企業はもちろん、すでに雇用に取り組んでいる企業にとっても有益な情報が得られる書籍となっています。


著 書:障害のある方と共に働く 人の可能性を拡げるために必要な前提と技術
著 者:汐中 義樹(しおなか・よしき)
株式会社レオウィズ代表取締役
公認心理士、中小企業診断士。
小学校教諭として足立区、文京区で勤務。その後、知的・肢体不自由の特別支学校にて教鞭を執る。
「障がい者雇用」という社会課題解決に向け、障がい者と社会との架け橋になるべく起業。
教育現場での指導技術を企業に伝え「教える」を考える教育研修が得意。「障がいのある方との関わり方・仕事の教え方」「ダイバーシティ&インクルージョン」のテーマで大企業、支援団体での研修、講演実績多数。メールマガジン「虹のみかた」、オンラインサロン「にちようさはんじ」を運営。
発 行:日本橋出版
東京都中央区日本橋本町2-3-15
発 売:星雲社(共同出版社・流通責任出版社)
東京都文京区水道1-3-30

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム