2018年4月から「短時間労働の精神障がい者の雇用も1カウント」ってご存知ですか?

新年度がスタートしました。障害者雇用に関する法律助成金制度も新しく変わったものもあります。その中でも最も関心度合いの大きいものとして「精神障がい者の雇用義務化」の施行に伴い、企業に課されている障がい者法定雇用率がこれまでの2.0%から2.2%(2020年度より2.3%)に引き上げられた事があります。これにより、特に大きな都心部のある地域では、身体障がい者の新規採用が困難だった状態がさらに進んだため、精神障がい者の求人や雇用が増加してきました。(東京都・大阪府・愛知県は平成29年度の都道府県別の雇用達成率が平均値を下回っています)

しかしながら、精神障がい者の雇い入れには不安を持つ企業の人事担当者も多いため、まだまだ慎重にならざるを得ないのが実情です。「精神障害者雇用に義務」を感じる一方で、「積極的な雇い入れには躊躇してしまう職場の声」との板挟み状態なのではないでしょうか。

実は今回の法律の施行に合わせて、もうひとつ企業の担当者の方々に知っておいていただきたい障害者雇用に関係する特例措置があります。それは、「短時間労働者の精神障がい者の雇用も1カウント」になるというものです。助成金などの企業が受け取れるようなものではありませんが、大きなメリットになる内容です。

特例措置の特徴

簡単に特徴を説明しますと、以下の通りです。

  • 精神障がい者の雇い入れが対象
  • 週の労働が20~30時間未満の場合、本来は0.5カウントなのを1カウントとする
  • 新規での雇用開始日から3年以内の者
  • 新たに精神障がい者福祉手帳の取得から3年以内の者
  • 平成30年4月1日から平成35年3月31日の5年間の時限措置

法定雇用率の引き上げにより、精神障がい者の雇用をより一層促進する狙いの中、企業の負担を軽減させるための措置となります。

企業のメリット

実数よりも倍の効果

法定雇用率を遵守したい企業の立場としては、1カウントでも多く実績を持ちたいと考えています。そのため、人事担当者の心理としては短時間労働者の雇用にはあまり積極的ではありません。しかし、この特例措置により平成35年3月末までに新たに雇用した精神障がい者であれば、短時間での雇用であっても1カウントとして算定することができますので、求人のターゲット層が今よりも多くなるため雇用を進めやすくなるというメリットがあります。

本来の負担の半分

法定雇用率を1カウント獲得するためには週30~40時間の労働実績が必要なところ、最短で週20時間で1カウントとなります。これは、一緒に働くことになる部署の従業員の方々にとっては負担となる部分が半分軽減されますので、社内での雇い入れ検討も進めやすくなります。

本人も安心できる

この特例措置は企業にとってのメリットだけではありません。精神障がい者として働くことになるご本人にとっても大きなメリットになります。新たに雇い入れられた精神障がい者の方も業務内容や生活リズムを掴むまでは何かと不安に感じることが多くなります。特に環境の変化には敏感になりやすいため、出来る事なら通常よりも多く時間を取ってもらえると非常に安心します。

活用すべき企業

精神障害者雇用が未経験or少ない企業

当然のことながら、精神障がい者の雇用促進が大きな狙いですので、現時点で精神障がい者の雇用が一度もない企業や実績の少ない企業が、このタイミングで一歩を踏み出す良いチャンスだと思います。この5年間の間に雇用実績を上げる企業が増えることが予想されますので、一日でも早く準備に取り掛かる方が良いでしょう。

社内理解が進んでいない企業

障害者雇用の中でも精神障がい者の雇用については、社内の理解が必要不可欠です。理解が進んでいないと、ネガティブなイメージからどうしても雇用の邪魔となる意見が出てしまいます。

単なる配慮ということだけではなく、理解から生まれる協力体制が障がい者本人の安心へとつながるからです。職場への負担が半分からスタートすることができますので、理解が進んでいない職場からの了承を得やすいはずです。活用できる期間はたった5年間しかありませんから、うまく社内を説得する材料にしてください。

職場定着を高めたい企業

精神障がい者の職場定着率は、身体障がい者や知的障がい者に比べて低い数値となっています。原因は様々ですが、それらを解消するひとつとして短時間からの雇用というのは有効的だと考えます。本人の意向も確認しつつ、3年間を大いに活用しながらフルタイムにつなげてみてはどうでしょうか。

活用においての留意事項

①退職後3年以内に、同じ事業主(※)に再雇用された場合は、特例の対象とはしない。

※ 子会社特例、関係会社特例、関係子会社特例又は特定事業主特例の適用を受けている事業主の場合は、これらの特例の適用を受けている、当該事業主以外の事業主を含む。

②発達障がいにより知的障がいがあると判定されていた者が、その発達障がいにより精神障がい者保健福祉手帳を取得した場合は、判定の日を、精神保健福祉手帳取得の日とみなす。

何度も書きますが、今回の特例措置は平成30年4月1日から平成35年3月31日の5年間だけの時限措置となっています。企業にとっても無理のない範囲から精神障がい者の雇用に取り組める良い機会です。雇用が進まずに納付金(罰金)を支払ったり、ハローワークから計画書の提出を受けている企業の人事担当者であれば、メリットを多く感じているのではないでしょうか。是非、一度お近くのハローワークの相談窓口にご連絡してみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム