はじめまして、ディーセントワーク・ラボです![1/2]

支援施設インタビュー:NPO法人ディーセントワーク・ラボ

2018.02.01

今回からコラムを掲載することになりましたNPO法人ディーセントワーク・ラボの中尾と申します。

初回となる今回と次回のコラムでは、私が代表理事を務めます当社が何をしている会社なのかをご紹介させていただこうと思います。

1.NPO法人ディーセントワーク・ラボのご紹介

(1) 働くすべての人が喜びと安心を得られる社会に

2013年に設立されたNPO法人ディーセントワーク・ラボは「働くすべての人に喜びと安心を!」をミッションとして、日々活動しています。

ディーセントワーク(Decent Work)とは、ILO(国際労働機関)の21世紀の主目標であり、「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されます。簡単に言うと、生活と働くことを、よりよいものにしたいという人々の想いや願いそのものです。

働くことは、賃金を得て生活するのはもちろんのこと、人からありがとうと言われたり、人の役に立っていると感じたりするような「働くよろこび」も得られると、ディーセントワーク・ラボは考えています。

また、家族も含めた安心した豊かな生活や社会的な保障も、長く働き続けるベースとなるものです。

ディーセントワーク・ラボでは、これらについて考え、実現を目指していく団体です。特に、働く環境が十分に整っていない障がいのある人の「役割」や「仕事」を、多くのプロの方たちと共につくり、その活動を通して、全ての人の「働く」を見つめていきたいと考えています。

(2) ディーセント・ワークとは

「働きがいのある人間らしい仕事」と訳され、ILO(国際労働機関)の21世紀の主目標となっています。1990年にILO事務局長であるファン・ソマビア氏が提言しました。ソマビア氏自身は「子どもに教育を受けさせ、家族を扶養することができ、30~50年ぐらい働けたら、老後の生活を営めるだけの年金などがもらえるような労働のこと」と説明しました。

簡単に言うと、生活と働くことを、よりよいものにしたいという人々の想いや願いそのもので、大切な人のとの生活を送りながら、どのように働いていくかといった長い視点で「働くこと」を捉えたものです。

働くことは2つの側面があり、家族も含めた安心した豊かな生活や社会的な保障がありながら、賃金を得て生活するのはもちろんのこと、人からありがとうと言われたり、人の役に立っていると感じたりするような「働きがい」や「働く喜び」も得られるものです。

つまり、ディーセント・ワークが達成された状態というのは、給料面や社会保険の適用、労働環境や雇用主の義務等、労働条件や制度といったハード面【労働者性のあり方】が整備されることのみならず、一人ひとりが役割を持ち、個々が働きがいのある人間らしい仕事していると実感できるようなソフトの側面【労働のあり方】も同時に整えられることです。

今後はそのための仕組みや新たな評価等についても考える必要があると考えます。

(3) ディーセントワーク・ラボがやってきたこととこれから

最初は、福祉事業所で働く障がい者の工賃が低いこと(約15,000円:2016年度厚生労働省発表値)が社会的課題であると感じ、その改善に取り組むことからスタートしました。

福祉事業所は、手づくりの商品をつくる仕事をしているところがたくさんあり、それが強みです。しかし、福祉事業所には福祉のプロはいますが、ものづくりのプロはいません。

そこで、企画や商品開発、販売のプロがサポートに入り、最初から最後まで手づくりの商品の良さを最大限に活かせるようなプロジェクトをはじめました。それが、equalto(イクォルト)です。

equaltoは、すべての個性が平等に輝ける社会をつくりたいという想いが込められています。デザインの力で障がい者のものづくりを応援したいと考える、アッシュコンセプトが商品企画と製品化、販売のサポートを、デザイナーがデザイン提供と製品化のサポートを、アクセンチュアが資金の提供と企画のサポートをしています。

質の高い、付加価値のある商品をつくり、それらを正当な単価で販売することで、障がい者の工賃を高められるよう活動をしています。

さらに、憧れの場所やお店で商品が販売されたり、嬉しそうに商品を買っていかれるお客様を見たりすることによって、障がいのある人が自分の仕事に誇りをもち、働く喜びも得られることもとても大切にしてきました。「働くのが楽しくなってきた」と話してくれた方もいます。

本質的に「働くこと」は、人の役に立つことであり、他者から感謝されることで認められたと感じ、さらなる成長意欲を引き出すものです。その正のサイクルが生み出せるよう、ディーセント・ワークは活動を続けています。社会的課題の解決に向けて、様々なプロと共同しながら事業をつくっていくことが、ディーセントワーク・ラボが最も得意とするところです。

他方、2018年4月に障がい者の法定雇用率が2.0%から2.2%に上昇しました。障がい者の働く場所は、福祉事業所から一般企業にさらに拡大していこうとしています。福祉事業所だけでなく、どの場所で働いたとしても、障がい者がディーセント・ワークを達成できるようサポートしていきたいと考えています。そこで、昨年度よりディーセントワーク・ラボは一般企業に対するコンサルティングもスタートしました。

ABOUTこの記事をかいた人

▼プロフィール:
学生の時に、通常学級に在籍する障害のある子どもの母親10人に「なぜ、通常学級にこだわるのですか?」と伺った際、10人全員から「将来、地域で働くようになったときに、この子を知っている人が1人でもいたら心強い」と全く同じ回答が返ってきて「働く」ことの大切さを実感したことから、障害者の雇用・就労に関する研究と実践を行う。

▼プロフィール:
博士(社会福祉学)。社会福祉士。 香川県高松市生まれ。
2007年4月株式会社テミルに入社し、機器のアクセシビリティ調査、保育関連のコンサルに携わる。
2010年から福祉事業所で働く障害者の働きがいと工賃向上を目指したテミルプロジェクトを企画・運営。
2013年6月、特定非営利活動法人ディーセントワーク・ラボを設立する。2016年東洋大学大学院福祉社会デザイン。
研究科博士後期課程修了。著書に『障害者への就労支援のあり方についての研究』(風間書房)などがある。