人事担当者が利用する障がい者求人サービスとそのメリット・デメリット[2/2]

人事担当者が利用する障がい者求人サービスとそのメリット・デメリット[1/2]

2017.02.13

前回に引き続き、自社内での取り組み(自社ホームページへの掲載、社員の紹介など)以外で障がい者の求人活動に利用できるサービスのメリット・デメリットをご説明したいと思います。

人材紹介

利用フェーズは、採用活動全体に及びます。

求人広告同様に、企業側がお金を払って依頼をする形ですので、立ち位置は企業寄りといえます。

費用は、会社によって大きく異なりますが20〜150万円位になります。但し、成果報酬型となっている事が一般的で、その場合は採用者が決まらなかった場合は費用がかかりません

人材紹介のメリットは、採用活動の全てをサポートしてくれる事にあります。求人活動だけでなく、書類選考や面接の段取りはもちろんのこと、企業が依頼した対象者に当てはまるか否かの選定を代行してくれるので、企業には厳選された人材のみが案内されます。企業側の負担が小さくなる為、大きな企業だけでなく社長が人事を務める小さな企業や人事担当者が手一杯の企業などにも好まれています

デメリットは、今では候補者確保が難しいという点でしょう。人材紹介会社に障がい者求人を依頼したはいいが、待てど暮らせど応募者が来ないというケースが急増しています。障がい者求人市場が超売り手市場になったことが主な原因です。賢い企業が市場の動向に合わせて適度に対象者を拡大(募集条件の緩和)し障がい者の確保を続けている一方で、「昔はこの条件で応募者が来た」と頑なに条件を変えない為に障がい者の確保ができない企業の2極化が進んでいます。

最近になって少しずつ増えてきましたが、障がい者を対象とした人材紹介サービスを取り扱っている人材会社はまだまだ少ない為、検討中の人事担当者の方はまずは障がい者向けの人材紹介サービスを提供する企業を探すことから初める必要があります。

障がい者職業訓練(校)

障がい者職業訓練校とは、職業能力開発促進法という法律に基づき、障がい者が就職に必要な技術・知識を習得して職業的に自立し、生活の安定と地位向上をはかることを目的として国が設置している施設です。

利用フェースは、採用活動全体、さらには雇用後のサポートが提供されることもあります。

施設は、障がい者の就職をサポートすることが目的ですので、立ち位置は障がい者寄りといえます。

人材の紹介に費用はかかりません。

職業訓練校から紹介してもらうメリットは、なんと言っても特定の業務についての訓練済みの人材を応募者として確保できるという点でしょう。即戦力というのは言い過ぎとしても訓練を経ている為、入社後の教育も少なくて済みます。また、業務を体験して自らの適性を見ている為、イメージと現実とのミスマッチによる退職の可能性が低くなります。

デメリットと言えるか分かりませんが、各校の訓練修了時期が重なっていることが多く一時期に採用が偏ってしまう為、対応に掛かる負担が大きくなることがあります。人事担当者は忙しいからといって、適当な対応をしてしまうとハローワーク同様に担当者にネガティブな情報が伝わる可能性がある為、最後まできっちりと対応するようにしてください。

職業訓練校からの就職経路を利用している企業はまだまだ少ない状況ですが有効な手段の一つですので、まだ利用していない企業は検討しても良いかも知れません。

その他障がい者就職支援施設

就労移行支援事業や就労継続支援事業などが、ここに含まれます。

就労移行支援事業所とは、障がいのある方の一般企業への就職をサポートする通所型の施設です。また、就労継続支援事業とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障がい者につき,就労の機会を提供するとともに,生産活動その他の活動の機会の提供を通じて,その知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う施設です。

利用フェースは、採用活動全体及び雇用後のサポートが提供され、非常にサポートが手厚いのが特徴です。

施設は、障がい者の就職をサポートすることが目的で、立ち位置は障がい者寄りです。

人材の紹介に費用はかかりません。

メリットは、先述した通り雇用後のサポートが手厚いことが挙げられます。全てのケースではありませんが、一定期間は職場適応援助者(ジョブコーチ)が採用後の障がい者をサポートしてくれます。障がい者の心境や体調を気遣い、職場に馴染めるように調整などもしてくれます。また、障がい者を受け入れる為の準備段階に相談することで業務の切り出しや会社の設備などのアドバイスを貰えることもあります。

中でも、障害者雇用未経験の企業全てにオススメしたいのが、実習の受け入れです。本来の実習の目的は、実習生となる障がい者に一般企業での仕事を体験させることにありますが、企業側にも大きなメリットがあります。実際に、障がい者と職場で働くことによって従業員の障がい者理解が高まりますし、理由なき苦手意識が克服されることもあります。さらには、実習によって雇用に向けての課題を洗い出すことが出来、より質の高い障害者雇用を実現することが出来ます。

こちらも、職業訓練校同様でまだまだ利用度が低い状況です。

まとめ

障がい者を採用したい企業が利用する求人サービスとそのメリット・デメリットを、大きく5つに分けてお話をしてきました。

今回、特に強調したかったのは、障がい者採用活動は健常者採用活動と同じではないという点です。健常者採用活動の延長線上と軽く捉えて取り組めば、必ず失敗します。障がい者採用活動には、人事担当者だけでなく企業全体で真剣に取り組む必要があります。

だからといって障害者雇用におよび腰になる必要はありません。その為に障がい者採用活動には多くのサポートが用意されていますので、是非利用してください。

これから障害者雇用に取り組もうと考える企業は、まずは相談に行き、現状把握と目標設定を行うところから始めてみてください。

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