来年2018年4月より障がい者法定雇用率の引き上げが厚生労働省より発表されました。2020年3月までは現行の2.0%から2.2%に変更。同年4月からは2.3%となり、例えば常用雇用労働者数が1,000人を超える企業はプラス3カウント以上の新たな障害者雇用を実施することが必要となります。
来年度を起点に、障害者雇用は大きく変化していくと考えられます。
本日は、法定雇用率の変更など、今後の障害者雇用に強く影響する『精神障がい者の雇用義務化』についてのご相談についてお話しをしたいと思います。
今回の企業担当者様のように『精神障がい者の雇用義務化』 = 「障害者雇用のうち何名かを精神障がい者にしないといけない!」という内容として理解されている方がいらっしゃいます。確かに、『精神障がい者の雇用義務化』と聞くと、精神障がいの手帳取得者を、雇用している障がい者の何%分か採用しないといけないのではないかと考えてしまいがちです。 実際の『精神障がい者の雇用義務化』の内容は、《これまでの法定雇用率は、「身体障がい者」と「知的障がい者」の総労働者数と総失業者数から算出していたものが、2018年度より「精神障がい者」の総労働者数と総失業者数も含めて算出することとなります》というものです。 その結果、現行の法定雇用率よりもパーセンテージが上がることになっているのです。 現在、厚生労働省より発表されている法定雇用率は、一般企業で2.3%(2018年から2年間は緩和措置により2.2%)ですが、今後も法定雇用率は徐々に引き上げられることが想定されています。 考えられる理由としましては、「法定雇用率を国内における障がい者人口6%以上に近づけていきたい」という点です。ちなみに、フランスの障がい者法定雇用率は5%になっています。フランスの水準に合わせるということではなくても、障がい者人口6%の半数となる3%は当面の目標値として設定されることは考えられうる数字だと思います。 もうひとつ理由をあげるとすれば、「精神障がい者の労働者数を大幅に増やしたい」という点です。 国内の障がい者人口は約860万人で、内訳は「身体障がい者」が約394万人、「知的障がい者」が約74万人、「精神障がい者」が約392万人となり、「身体障がい者」と「精神障がい者」がほぼ同数となっています。【内閣府より】 一方で、企業に雇用されている障がい者の数字を見てみると、「身体障がい者」が約32万人、「知的障がい者」が約10.5万人、「精神障がい者」が約4.2万人となり、人口ではほぼ同数だった「身体障がい者」と「精神障がい者」ですが、雇用数では約28万人の差が見られます。【厚生労働省より】 このように「精神障がい者」の自立につながる企業での雇用があまり進んでいない背景には、障がいの特性に対する「理解不足」や「差別」などが考えられます。これまで障害者雇用の中心となっていた「身体障がい者」は、“物理的な配慮”(障がい者用トイレ・スロープ・エレベーターの設置など)をメインとしたサポートがあれば、受入れに対するハードルはクリアすることが可能でした。 ところが、「精神障がい者」の雇用の場合、“物理的な配慮”ではなく、従業員からの理解や協力といった“精神的な配慮”が必須となります。可視化された配慮ではないですから、従業員からの共感を得るのも難しいため、企業内で雇用が進まず多くの人事担当者がどこから手を付けていいのか分からず悩んでおられる部分です。例えば、外部に障害者雇用に関する相談を聞いていただけるところが増えてきましたので、自社だけで悩むのではなく、専門的なアドバイスを参考にされると、最適な進め方を見つけられるのではないでしょうか。 また、国としても、雇用されずに生活保護を受給されている「精神障がい者」の中から働く能力のある人材を企業でどんどん採用してもらおうという考えがあります。「生活保護受給者」から「納税者」へということです。確かに、400万人近くいる「精神障がい者」のうち雇用されているのが約4万人というのは、現実的な数字ではありません。これまで、企業で力を発揮している「精神障がい者」の方を多く見てきましたから、方向としては間違っていないと思います。この点が、『精神障がい者の雇用義務化』施行につながっているわけです。 障がい者の雇用を推進する身としては、今回の施行に付け加えて採用が促進するための補助的な制度にも力を入れてもらいたいと思います。先ほどもお話ししましたように「精神障がい者」の雇用定着には“精神的な配慮”が必要となりますから、企業のために導入時にハードルが少しでも低い状態となるような具体的サポート準備を切に願います。