2021年7月23日から8月8日は東京オリンピック、8月24日から9月5日は東京パラリンピックが開催され、アスリートの活躍に心を動かされる大会期間でした。特にハンディを抱えながらも日々の努力で鍛え上げられた体で技を繰り出すパラリンピックアスリートの姿は超人を超えたスーパーマンのような存在に映りました。
個人的には、東京オリンピックでは日本女子バスケットボールと男子体操、東京パラリンピックでは水泳とブラインドサッカーを家族と興奮しながらテレビで観戦していました。アスリートの皆さん、本当に感動をありがとうございました。
素晴らしい活躍はアスリートだけではなかったと思います。
新型コロナウイルスで開催直前まで観客の入場有無や期間中の感染対策方法などが二転三転する中、結果として大きな混乱もなくオリンピック・パラリンピックを締めくくることができたのは、大会関係者・ボランティアの方々の準備と努力の成果ではないでしょうか。
それぞれの大会が終わってしまった今、「オリパラ」ロスになってしまいました。さみしい。。。
東京オリンピック・パラリンピックでは、競技以外にも「各開会式と閉会式」「選手村内の自動運転バス」「パラアスリートへのプロポーズ」など、話題となる出来事がたくさんある中、私が注目したのは『ピクトグラム』でした。
『ピクトグラム(英語: pictogram)』とは、伝達したい情報・注意を表示した視覚記号(サイン)のひとつで、言葉が通じない人同士であっても情報を共有することができる、いわゆる「ノンバーバル(非言語的)コミュニケーション」を指しています。私たちが普段から日常生活でよく目にする「トイレ」や「非常口」を表すときの下記も代表的な『ピクトグラム』です。
今回の東京オリンピック・パラリンピックでは全競技の『ピクトグラム』が準備され、特に東京オリンピックの開会式では50種目をパフォーマンスで紹介する一幕があり、話題となりました。
https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/64babae0-86f4-4f65-8653-d31821177fde/
実はこの『ピクトグラム』が世界的に認知されたきっかけは前回の東京オリンピックでした。
1964年、戦後復興が進んだ日本にとって東京オリンピックの開催は世界に平和と成長を実現した証を示す機会でもありました。オリンピックの開催では多くのアスリートや関係者、観客が来日されることが予想されましたが、当時の日本の英語力は十分なコミュニケーションを図れるレベルではなかったという状況が『ピクトグラム』を生み出した理由のひとつでした。そう思うと今回の東京オリンピック・パラリンピックの競技種目を表示した『ピクトグラム』に親近感が湧いてきます。
現在は“多様性”ということばを日常的に聞くようになりました。実は『ピクトグラム』にも多様性が求められています。
これまでのトイレを表示する『ピクトグラム』は下記写真上段のような「男性、女性」を区別したものが一般的でした。最近は、下記写真下段のような「男性、女性、性別に関係ない(ALL GENDER)」といった表記が増えています。
また、ベビーカーを押す人もこれまではスカートを履いていました(写真左)が、現在は男女の違いが分からない『ピクトグラム』になっています。(写真右)
このような変化は人々が意識するところから始まります。
世の中は多数(マジョリティ)が作り上げた社会で少数(マイノリティ)が生活をする時代から、多数と少数のボーダーがなくなっていく時代へと進み始めたように感じられます。性別、障がい、国籍、年齢、宗教などで人が区別・差別される時代はそろそろ「過去のもの」へとなっていくのではないでしょうか。
ただ、徐々に世の中が「多様性への理解ある社会の実現」を進めているんだと感じる一方で、表記を変えるだけでは真の理解ができたということではありません。当事者にとっては、まだまだ暮らしにくい世の中にあるということを理解し社会を変えていくことが必要だといえます。
『ピクトグラム』と聞くと駅や施設などにあるサイン・案内といった、言わば「公共的」なイメージが強いという印象があります。今回の新型コロナウイルスにより新たな『ピクトグラム』表記も生まれました。例えば、「ソーシャルディスタンス」「密を避ける」「マスク着用」など、これまではあまり見られなかった『ピクトグラム』です。
ここでも、世の中の動向や状況に合わせて伝達したい情報に変化があれば、サインや伝え方も変わっていきます。
企業の職場で『ピクトグラム』を見る機会は少ないと感じています。使用されていたとしても冒頭のようなトイレや非常口程度です。今後、企業の職場でも『ピクトグラム』を見る機会が増えるかもしれません。例えば、
というものは、今の世の状況に合った『ピクトグラム』ですね。
これからも、日本から発信された『ピクトグラム』は色々な進化を遂げると思います。