いつもお世話になってます。
当社では法定雇用率の達成に向けて障がい者の新規採用に取り掛かっています。過去にはハローワークや人材会社から障がい者人材を採用した経験しかなく、最近では思うように採用が進んでいません。来年度以降は法定雇用率の引き上げもあるため、今から新しい求人ルートを開拓したいと考えています。
また、当社の雇用実績は身体障がい者3名(聴覚障がい者1名、内部障がい者1名、下肢障がい者1名)で、いずれも数年先には定年退職となるため、それまでに新しい人材を採用したいと思います。
よろしくお願いします。
《製造メーカー、従業員数約300名、人事担当》
前回の続き。
②雇用実績が身体障がい者のみ
今回ご相談をいただいた企業の雇用実績は身体障がい者が3名と聞いています。
厚生労働省から毎年公表される「障がい者の職業紹介状況」では、ここ数年は1年間にハローワークを通じて企業に就職した最も多い障がい特性は精神障がい者(令和3年度・全体の47.7%)であり、企業の人事担当者も精神障がい者も採用の対象としなければ、法定雇用率の達成は厳しいと認識しています。
仮に今回のご相談企業が知的障がい者や精神障がい者の雇用実績がないのであれば、精神障がい者・発達障がい者の採用を想定した取り組みが求められます。
精神障がい者・発達障がい者の雇用定着には職場で一緒に勤務する従業員からの理解がより一層求められます。精神障がい者・発達障がい者の特性は周囲から一見して理解が難しいこともあり、職場での認知が進みにくいことが原因で合理的配慮が受けられなかったり人間関係によるトラブルなどで早期離職となりやすく、結果として障がい者雇用全体のイメージがネガティブなものとなってしまいます。
精神障がい者・発達障がい者の人材が雇用定着している企業では、職場内の理解を進めるための取り組みを行なっています。
例を挙げるならば、座学による研修に加え、就職を目指す障がい者を対象にした職場見学会や職場実習を実施しているところでは障がい者への認識が深まることがわかっています。
理由としては、障がい者と直接接する機会となる職場見学会や職場実習では、障がい者が自己紹介をしたり、実際の仕事についての質問を投げかけてくるなど、障がい者とコミュニケーションを図ることでこれまで持っていた障がい者への印象が変わります。「障がい者が働くイメージを持つことができた」「当社でも障がい者を採用できる」と従業員が感じることで採用活動が大きく前進します。
また、これから精神障がい者・発達障がい者を採用する場合、活用できる制度もご紹介します。
障がい者の採用経験が少ない企業が受給できる助成金「障害者トライアル雇用助成金」。
「障害者トライアル雇用助成金」とは、障がい者を原則3か月間の試行雇用することで、本人と仕事との適性や能力を見極め、職場定着へと進めていくことを目的とした制度になり、障がい者雇用への不安を軽減させることができます。この制度では雇用する対象者によって助成金を受給することができます。
精神障がい者であれば1人あたり月額で最大8万円(最大8万円×3ヶ月、その後4万円×3ヶ月で計36万円)を試用期間に合わせて活用しながら受け取ることができます。
次に精神障がい者・発達障がい者の雇用定着を目指すために一緒に働く従業員が正しい知識と理解を身につけ、職場で働きながら障がい者を支援することを目的とした「精神・発達障害者しごとサポーター」があります。
精神障がい者・発達障がい者のことの特性理解を深めるための2時間程度の短時間の講座「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を全国で開催しています。一緒に働く従業員がこの講座を受講することで、精神障がい者・発達障がい者が職場で求める合理的配慮のポイントを理解するだけではなく、周囲の従業員も安心して障がい者を受け入れることができる制度になっています。
③雇用する障がい者が定年退職を迎える
今回ご相談をいただいた企業のような、障害者手帳を取得している従業員が高齢化に伴い、近いうちに定年退職を迎える状況だと相談をいただくことは少なくありません。
以前から勤務している従業員が病気や事故が理由で障害者手帳を取得されたので、偶然にも法定雇用率にカウントされているが、実際に障がい者の採用活動をしたことがないため、途方に暮れてしまう状態だと思います。
このような企業の場合、色々な準備に取り掛かる必要があります。
例えば、「定年退職される障がい者の仕事≠新たに雇用する障がい者の仕事」の場合、新たに採用する障がい者には違った仕事を切り出すことになります。そのためには組織内への障がい者雇用への理解と協力のもと、複数の部署から障がい者に担当してもらう仕事の候補を募ります。その後、「②」の職場見学会や職場実習を経て、障がい者との業務マッチングを図り、採用へとつなげていきます。
また、退職される身体障がい者の後任は必ずしも身体障がい者とは限らないことも「②」でご理解いただけたと思います。