障害者雇用は「採用の質」にこだわったほうがよい〜面接選考のポイント〜[1/2]

今回のコラムは、「採用の質」をテーマにして2回シリーズで書いてみたいと思います。

採用の質にこだわるとは、障害者雇用における「雇い入れ前の質」にこだわるということ。

私たちのような就労支援をする支援者側で言うと、企業と障がいのある人を最適に組み合わせる「ジョブマッチングの質」であり、適材適所で人材を配置するには雇い入れの前に十分な選考をする必要があります。

ただ、質にこだわるにはいくつかのポイントを押さえた方がよいです。

1.採用の質にこだわる「面接選考」

ひとまず今回は、「面接選考」について考えてみたいと思います。

私の職場である社会福祉法人北摂杉の子会は、毎年10〜15名程度の新卒の方を採用しています。私は、一次面接の面接官をしているのですが、面接選考はとても難しいです。

だからと言って、面接選考をいい加減に進めてしまうと、理想とする人材を適切に雇い入れすることができなくなり、結果的に採用後の人材育成や雇用管理において想定以上の労力とコストがかかってしまいます。

(このような状況では、育成される側(新入社員)も育成する側(上司・先輩)も疲れてしまい、悪循環になってしまいますね…)
(ですし、新卒の方にたくさん応募してもらえるよう採用活動にかなりのコストをかけているので、面接選考を疎かにできない事情もありまして…)

障がいの有無に関わらず、面接選考はとても難しいです。でも、採用の質を上げないと採用した意味がありません。

障害者雇用においては、障がいの特性を考慮した上で面接選考をしたほうが効果的であると思います。

もう少し具体的に言うと、精神障がいや知的障がい、発達障がい等の特性を踏まえた上で面接を実施したほうがお互いにとってズレなく面接を進めることができます

採用の質を上げるために必要なポイントについて、いくつか取り上げて考えてみたいと思います。

面接前の事前準備

障がいのある人は、種別によって違いはあるものの曖昧なことや未経験ことをイメージすることは苦手で、言葉より視覚的な情報のほうがインプットしやすいです。

また、未経験なことも多いため、自分自身の限られた経験で物事を判断しがちなため、言葉だけの情報では面接でのやりとりで齟齬が生じる可能性もあります。

応募者に対しては、視覚的なツールで分かりやすく情報を伝えることができるよう、事前の準備はないよりあったほうがよいかと思います。

▼POINT

  • 配属予定の職場風景を写真(もしくは動画)に撮っておく
  • 任せたい仕事内容を具体的(実物、業務マニュアルなど)に用意しておく(写真や動画で示してもよい)
  • 1日や週間の業務スケジュールを大まかに作成しておく(文字だけでなく写真付きで解説されているとなおよい)
  • 障がいに対して配慮できること、できないことについて社内である程度イメージしておく(配属予定の職場が過重な負担とならないよう気をつける)
  • どんな人物像が理想かをイメージしておく(配属予定の部署でディスカッションしておくのもよい)

面接の時の話し方、接し方

障がいの有無に限らず、面接の時の応募者の心境は「緊張」や「不安」になりやすいと思います。

話し方や面接時の雰囲気は応募者目線で考えてみたり、質問や情報を伝える場合においてもゆっくりと分かりやすく話すことが望ましいです。

▼POINT

  • 話しやすい雰囲気を心がける(笑顔、柔らかい表情が望ましい)
  • ゆっくり話し、簡潔に話す
  • 曖昧な質問は避け、具体的な質問をする
  • 視覚的な情報で社内のことや業務のことを伝える(事前の準備物を活用する)
  • 予定している1日や週間等の業務スケジュールを視覚的に伝える

面接で確認しておきたいこと

以下のポイントは、採用後をイメージして主に確認することを取り上げてみました。採用後、ただ単に働いてもらうだけでなく、担当業務を確実にこなすことができるか?、戦力となりそうか?、成長が期待できそうか?、などを確認するために質問することをオススメしたいと思います。

▼POINT

  • 就労への意欲
  • 就労を目指している理由
  • 就労後の本人なりに考えているビジョン(働き方やキャリアアップなど)
  • 障がいに対する配慮事項(要望)
  • 家族や支援者など身近な人によるサポート体制

最後に、これは私が個人的に感じていることですが、面接選考で成功している企業は障がいのある人の業務スキルに対してはあまり着目していないように思います。

むしろ、就労への意欲や健康状態、生活リズム、素直さや謙虚さなど「安定して働ける力」と「成長の伸びしろ」を重要視して面接選考をされており、業務スキルは採用後のトレーニングで育てているようです。

また、家族や支援者など本人の身近に理解者や相談相手がいるかについても確認しているようで、それらの存在が就労定着の秘訣と考えている企業も多いように感じます。

次回は、「実習選考」について書いてみたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

▼プロフィール:
京都生まれ京都育ち。児童福祉の専門学校を卒業後、長野市にある社会福祉法人森と木で障害のある人の就労支援(企業就労の支援、飲食店での支援と運営管理等)に限らず、生活面(グループホーム、ガイドヘルプ等)の支援、学齢期のお子さんの支援などに従事。2013年に帰阪し、自閉症・発達障害の方を対象に企業就労に向けたトレーニングをする2つの事業所ジョブジョイントおおさか(就労移行支援事業・自立訓練事業を大阪市と高槻市で実施運営)にて勤務。2014年より所長(現職)。また、発達障害のある大学生に向けた就活支援プログラム(働くチカラPROJECT)の運営にも力を入れており、2016年より大阪にある大学2校のコンサルタントも務めている。

▼主な資格:
社会福祉士、保育士、訪問型職場適応援助者(ジョブコーチ)

▼主な略歴:
長野市地域自立支援協議会 就労支援部会 部会長(2011〜2013)淀川区地域自立支援協議会 就労支援部会 副部会長(2015〜)高槻市地域自立支援協議会 進路・就労ワーキング 委員(2016〜)日本職業リハビリテーション学会 近畿ブロック代表理事(2017〜)NPO法人ジョブコーチネットワーク、NPO法人自閉症eサービスが主催する研修・セミナー等での講師・トレーナー・コンサルタント等(2013〜)