【回想】なぜ僕は就労移行支援という選択をしたのか?

「なんで中村さんは就労移行支援に通っているんですか?」

これは就労移行支援に通う前、通っている途中、企業実習(インターン)に参加中、就職活動などさまざまなところで聞かれた質問です。

正直なところ、「なぜ?」と問われてまともに答えられていた自信はありません。

というのは、通う前は就職するために藁(わら)にもすがる気持ちでしたし、通っている途中は自分の選択を肯定するために取り繕っていました。そして、就職活動では企業にいい印象を与えるために当たり障りのない回答をしていました。

今回は、これまでさまざまな場面で問われた「なぜ就労移行支援に通うのか?」という疑問に対して、就労移行支援を卒業した今だからこそ振り返って考えてみようと思います。

「就職しよう!」と思い、たどり着いたのが就労移行支援だった

2016年の秋ごろだったと記憶しています。

新卒入社した会社を体調悪化を理由に退職してから約1年が過ぎ、主治医から「体調も安定しているから就職をしては?」と言われました。

その後、どういう経緯があったのかはっきりとは覚えていませんが、就労移行支援というキーワードと出会いました。おそらく「吃音症があっても就職するためにはどうすればいいのか?」の答えを求めていたんだろうと思います。

就労移行支援という福祉サービスを知り、最初に感じたのは『「就職したい!」と強く思い、その思いを実現してくれるのが「就労移行支援」だ!』ということ。「実現してくれる」と書いたのは、就労移行支援に通えば就職させてもらえると思っていたからです。今思えば、それくらい自分に自信がなく、誰かに助けてもらいたかったのかもしれません。

当初は「就労移行支援に通うこと」が目的だった

今振り返ってみると、就労移行支援に通う前の僕は「就労移行支援に通うこと」を目的にしていたのかもしれません。

就労移行支援という場所に行けば、自分のことが知れて、企業でインターンという形で経験も積めて、就職活動の支援もしてもらえて、楽に就職できるものだと思っていました。マジで思っていました。

なので、就労移行支援に通う理由なんて特になかったんです。あの頃、就労移行支援で面談をしてくれた人に答えていた「就労移行支援に通う」理由なんてものは、当たり障りなく、就活でいえば教科書通りの志望動機くらい散々なものでした。

今だからこそ言える「就労移行支援に通いたかった」理由について

「就労移行支援に通うことが目的でした!」では締め方として微妙なので、就労移行支援に通いたかった理由についてもう少し深堀してみようと思います。

一人で就職できる自信がなかった

就労移行支援に通う前の僕には、一人で就職できる自信がまったくありませんでした。

というのも、僕は約1年半離職していたので就職活動や働くことに対してかなり恐怖を感じていていました。また、障がいや病気をオープンにして働きたいと思っていたのですが、そのためのノウハウを知りませんでした。そういったことが背景にあり、僕は一人で就職できるイメージがまったくできなかったんです。

もちろん、就労移行支援に通えば就職活動や働くことのイメージができるわけではありません。でも、それは就職した今だからこそいえることであって、あの頃の僕には想像もできませんでしたし、理解もできませんでした。それくらい何かに追い込まれていたんだろうと思います。

自分(障がいや病気)と向き合うことが怖かった

就職するため、継続的に働くためには、自分(障がいや病気など)と向き合う必要があります。これは健常者も障がい者も関係なく、就職を目指す人なら誰しも必要なことです。

それが短期退職や長期離職の僕であれば、他の人以上に必要なことは言うまでもありません。でも、当時の僕にとって自分と向き合うことは怖かったですし、不安でもありました。

というのも、自分と向き合うというのは、自分の良いところだけを見るわけではなく、むしろ悪いところやダメなところを見なくてはならないからです。あの頃の僕は自分の短所や苦手、悪いところを認めたくなかったんです。認めてしまえば「自分がダメになってしまうんじゃないか」って思っていましたから。

就労移行支援に通っていなければ、僕は一生自分の負の側面を見ることがなかったと思いますし、就職なんてできなかったと思います。そう考えると、就労移行支援に通うことで無理やりにでも自分と向き合う機会を創出したかったのかもしれません。

就職活動に言い訳をしないため

もし、就労移行支援に通っていなければ、就職活動がうまくいかないときに「病気や障がいがあるから…」「離職期間が長いから…」と言い訳をしていただろうと思います。

僕は言い訳をすることが嫌だったのではなくて、言い訳をよりどころに他の人に依存した生活を送ることが嫌だったんです。

もちろん就労移行支援に通ったからといって言い訳をしなくなるわけではありません。ですが、あの頃の僕にとって就労移行支援に通うことは、就職するための決意表明みたいなものだったんだと思います。「ここに通って就職するんだ!」と。

さいごに

僕が就労移行支援という選択をした理由についてざぁーっと書いてきました。

今振り返ると、あの頃の僕は「就労移行支援に通うこと」が目的になっていて、「通うことが大事だ!」みたいになっていたなーと恥ずかしく思います。でも、それくらい何かに追われ、切羽詰まった状態だったんだろうと思います。

でもあの頃、藁にもすがる気持ちで就労移行支援に助けを求め、言われるがままに行動したことは決して間違っていなかったと思います。あの頃があるから今の僕がありますし、これからの僕があるんだと思えるからです。

僕は就労移行支援に通う理由なんてなんでもいいんじゃないかって思います。なくてもいいのかもしれないとさえ思います。それは僕がそうだったからですし、理由なんて考えても前には進めないと思うからです。

もし今、就労移行支援に通う理由を探しているのであれば、まずは行動してみてください。行動していることでしか見えない世界はきっとあります。怖がらず、怯えず、一歩を踏み出してください。

ABOUTこの記事をかいた人

▼プロフィール:
就労移行支援を経て、大手電機メーカーに障害者として就職。診断名はADHD(注意欠陥多動障害)。吃音症と糖尿病も併せ持ちます。集中力のなさと、物忘れが多い半面、情報処理は異常に速い。言ってはいけないことを言ってしまい怒られることもしばしば。ミルマガジンでは、障害者として就職活動をしたこと、就職している実体験について主に書いています。