桁が大きな数字を瞬時に認識するために (前編)

重要な情報にも関わらず、桁数の多い数字を読み間違えたりする。
これは実際に、筆者がしばしば直面するトラブルです。なぜ桁数が大きい数字を読み間違えるのか。それは筆者が「抽象的な事象の認識」に時間を要し、且つ「識字障がい」を抱えているからです。ではこの2つの特性を踏まえて、筆者が日頃、どのように桁の多い数字を扱っているか。前編後編の2回に分けてご紹介します。

まず、前編のテーマは、「抽象的な事象を認識する術」です。

具体化できる事象は認識しやすい

「リンゴ1玉+リンゴ1玉は何玉?」「2玉」です。リンゴ1玉は視覚的に認識でき、実際にリンゴを2玉並べれば「リンゴ1玉+リンゴ1玉」の答えはわかります。
では、「リンゴ1玉+リンゴ⅓玉はリンゴ何玉分?」と質問されると、少し具体化しづらくなります。リンゴ1玉の隣に、1/3に切ったリンゴを並べても答えは出てきません。これは、1と1/3が異なる尺度で表記された数字だからです。「1+1/3」を計算するためには、「分母」という尺度を揃える必要があります。1を1/3という尺度で表現すると、1/3が3つ集まった3/3と表現できます。尺度を揃える事で、「1+1/3」は、「1/3に切ったリンゴが4切れある状態」ということが見えてきました。
このように、抽象的な事象でも、尺度を揃えると具体化しやすくなります。また、この「尺度」は「単位」とも考えることができます。

桁が大きな数字は抽象的で具体化しづらい


「10万5千円なのに、1万5千万円と言ってしまった」これは、筆者が実際に経験した言い間違えです。10万5千円というお金の価値は瞬時に認識できますが、数が膨大過ぎて具体的に認識する事はできません。となると、あとは意識して話すしかありませんが、言い間違えました。
それは具体的に認識出来ないが故に、言葉が意味を持たず、文字として発音し易い方が口に出たためです。この時、筆者はお金としての価値は認識しているにも関わらず、上手く言えずに大変辛い思いをしました。

「単位化」する事で具体的に認識し易くする

認識し辛いとはいえ、桁の大きな数字は日常的に使いますので、なんとか瞬時に認識する必要があります。そこで筆者はある方法を用いて、桁の大きな数字を瞬時に認識しています。それは「単位化」して「具体化」する事。例えば10万5千円であれば、10.5万円など。10万や5千という数字は大きすぎて認識できませんが、1万が1単位であると考えれば、5千は0.5万となります。100百万円など、金額で区切った表記は日常生活でもよく利用されていますが、大事なことは「10万」や「5千」は「1」が膨大に並んだ数字ではなく、10.5単位という固まりであると捉える事なのです。
モノの見方を変える事で全体像が見え、具体的に認識し易くなります。

単位化の実践例


さて、筆者は自身の体験を活かし、単位化を行っていますが、その中にはこんな失敗から学んだ事も。
以前、プライベートでベトナムを訪れた時の話です。ご存知の方も多いかと思いますが、ベトナムの通貨、「ドン」にはゼロがたくさん並びます。当時のレートは1ドンが0.0043円。100,000ドン (10万ドン) と聞くと、大金に聞こえますが、日本円に直すと500円程。桁が多いため、筆者も初めの内は扱いに苦労していました。
そんな中、現地でバイクタクシーを使う機会がありました。運転手と交渉の末、運賃100円と決まりましたので目的地へ。そして、いざ精算。この時、まだドンの感覚が身についていなかった筆者は、誤って10,000ドン (1万ドン、約50円)を出してしまいます。当然、運転手は首を横に振ります。時間がなかったこともあり、焦って200,000ドン(20万ドン、約1000円)を出すと、運転者は首を縦に振り、釣り銭として10万ドンを差し出してきました。そう、およそ500円。その後乗った高速バスも500円でしたので、手痛い出費となりました。

このままではいけないと、打開策を模索していたところ、現地の方々が下3桁を切り捨てて、1千ドン単位でお金のやり取りを行っている事に気づきます。そして1千ドンで約5円になり、計算しやすくなる事にも気づきます。それ以来、ドンをはじめ、桁の大きな外貨は単位化してやり取りするようになり、以降、扱いに困ったことはありません。

まとめ

今回は「抽象的な事象を認識する術、単位化」についてご紹介しました。
実は単位化とは、誰しも多かれ少なかれ無意識の内に行っているスキルなのです。「普段、1キロの道のりを15分で歩いているから、この道のりは何分くらいかかるだろう」とか、「走行距離は地球何周分」など、比較も単位化の一種といえるでしょう。そのため、物事を単位化して捉えると、その人だけでなく、周りの人たちも認識しやすくなります。ちょっと思考が引っかかった時、単位化することで新たな考えが浮かんでくるかもしれません。

ではまた次回、お会いしましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

野添 浩一郎 (阪和興業株式会社 大阪本社 人事部厚生課)

1989年生まれ。2015年末、ADHD(注意欠陥多動性障がい)と ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。その後、LD(学習障害)の特性がある事も判明する。それまで自身を健常者と見做して生活してきたが、生活の様々な場面で支障を来しており、それ以降、自身の障がい・特性を認めた上で活かすようになった。永らく、自身の特性から低い自己肯定感に苛まれていたが、大学院時代に知り合った留学生たちと、留学先の米国で自己肯定感を高めることになる。2016年末より現職。