最近、「ミルマガジン」をご覧いただいている読者の方から質問をいただく機会が増えてきました。障害者雇用に取組んでおられる熱心な企業担当者から見ていただけていると実感しております。ありがとうございます。
今回は、ご質問の回答として皆さんにも知っていただきたい事例をご紹介したいと思います。おそらく、同じような悩みを抱えておられる企業担当者様もいらっしゃると思いますので、是非ご参考にしていただければと思います。
Yさんは学生時代と違い社会人として働くようになってから今まで自覚してこなかった躓きを経験した結果、医療機関に掛かられたのではないかと推測します。
また、会社側としてもこれまで身体障がい者しか雇用の経験がないということですので非常に不安な状態だと感じます。特に、障がい者差別解消法の施行により、障がいを理由に会社都合での解雇は出来ませんので、雇用継続を前提とした対処を実施していくことが求められます。
今回のケースは、Yさんご自身の申し出から始まっています。会社に対して配慮を求めているのだと思います。
それでは、雇用継続を前提に会社側として必要なことは2点。
専門的な支援機関からのサポート
就職をしてから発達障がいの診断を受ける人が年々増加しているということですから、このYさんの事案は決して珍しいことではありません。概ね就職してから専門的な支援を受ける場合は、各都道府県に設置されている「障がい者就労・生活支援センター」への相談が考えられます。ネットで検索していただくと簡単に探し当てることができます。こちらでは、地域で障がいを持つ人たちを対象に就労や日常生活に関する相談の対応をしていただけます。例えば、定期的な面談の実施により本人が生活しやすいアドバイスをしていただけます。また、企業相談にも対応しています。
他に、職場における支援の場合は、ジョブコーチ制度と言われるものがあります。これも各都道府県にある「障がい者職業センター」に相談をすることで職場の場面での本人や会社側へのサポートやアドバイスをしていただけます。どちらもネット検索で簡単に探すことができます。
または、障がい者の職場定着をサービスとした人材会社やコンサルタント会社も増えてきていますので、より企業ニーズに合った支援をしていただくことも可能です。
医療機関との連携
次にYさんが受診された医療機関について。今回の場合、Yさんからの申し出がありましたので、会社側への協力要請というのも考えられます。改めて、Yさんの意向をしっかりと受ける形で共有する場面を設けてください。この時に注意してもらいたいことは、「話し合いの場面を複数回持つ」と「話し合いの内容を記録に残しお互いで共有する」点です。後々、言った言わないや意思の疎通が出来ていないということを防ぐ意味合いとなります。
その点を踏まえて、会社側として主治医の先生とのパイプを持つ提案をしてみてください。守秘義務は当然のこととして、職場での配慮や周囲からの協力を得るためには、医療的な診断をもとにしたジョブコーチからのアドバイスによる対処法を作ることが重要となります。そのため医療的な診断結果は大切な情報となってきます。
仮に体調不良などが見られた場合などにも、Yさんの了解のもと主治医と密に連絡を取ることができるのは雇用の安定化につながります。
このような対応を取ることで、今まで経験の少なかった障害者雇用の本格的な取組みへとつなげることができるのではないでしょうか。おそらく、従業員から障がい者に対する理解を得ることができるようにもなります。Yさんは改めて採用した人材ではなく、既存の従業員ですから、抵抗感も低い状態で障害者雇用の理解促進の働きとなります。
特に、今後は精神障がいや発達障がいを持つ人材が採用のターゲットとして取り組んでいくことが必要となってきますので、このようなケースを題材にネガティブにとらえるのではなく、ポジティブに受け止めて専門機関とのパイプ作りや経験値の蓄積として役立てるように考えてみてください。
今後も障害者雇用に関するご質問・ご相談をコラムで取り上げたいと思います。