障がい者雇用「週10時間以上20時間未満勤務の0.5カウント算定」制度の活用メリットについてご紹介

2024年4月1日から障害者雇用促進法が改正されました。
今回の法律改正では、法定雇用率2.3%が引き上げられた(2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%)ことにより企業における障がい者雇用の裾野がこれまで以上に広がることが期待されます。例えば、法定雇用率2.3%では障がい者の雇用義務は常用雇用労働者43.5人の企業が対象となっていましたが、引き上げられた雇用率に対して2.5%では常用雇用労働者40人に、2.7%では常用雇用労働者37.5人の企業規模へと雇用義務対象企業が拡大します。

企業における障がい者の雇用実績は20年連続で前年を上回り、令和5年では雇用障がい者数は64万2,178.0人、法定雇用率の達成企業の割合については50.1%となりました。これらの実績は、企業の障がい者雇用数は毎年右肩上がりに増加している一方で法定雇用率を達成している企業は半数あまりとなり、大企業を中心に雇用実績を伸ばす企業と雇用に取り組めていない中小企業(納付金対象外等)との二極化が特徴として見られます。
また、障がい者の雇用が置かれる環境下には様々な課題が散見され、近年特に言われている障がい者雇用のアウトソースに関連した「障がい者雇用ビジネス」では、それらを活用した企業による「法定雇用率の達成」には疑問の声が聞かれます。
とはいえ、企業によって抱える事情や課題には個別性が見られるため、一概にすべてを否定することもできないところが悩ましい点といえます。

多様性理解の風潮が強くなり、言葉だけではなく障がい者を含むマイノリティな存在に向けた「多様な人材との共生」「自分との違いへの理解・受容」が進んできました。
併せて、今後も障がい者を雇用する企業が増えてくると考えられますが、その組織の状況に適した雇用方法を検討することが重要です。そうすることで企業・従業員・障がい者の相互理解のもと、誰もが成長できる組織になると考えます。

今回改正された障害者雇用促進の中に従来では法定雇用率の算定に含まれなかった「週10時間以上20時間未満勤務の精神障がい者・重度身体障がい者・重度知的障がい者が0.5カウント」として算定されることが決まりました。
この制度によって今までの障がい者の求人・採用活動では進められなかった雇用の創出が考えられます。また、これまで障がい者雇用に踏み込めなかった企業にとって活用するメリットが挙げられます。

○採用ターゲット層の拡大


これまでの週30時間以上40時間勤務を基本にして雇用される障がい者ひとりあたり1カウント(重度身体障がい者及び重度知的障がい者は2カウント)、週20時間以上30時間未満勤務の障がい者ひとりあたり0.5カウント(精神障がい者の短時間労働者に関する算定方法の特例措置では1カウント)となる制度では、法定雇用率の算定対象とならない障がい者が就労を希望しても、企業から見た場合にはどうしても消極的な対応にならざるを得ませんでした。

しかしながら、今回の法改正により週10時間以上20時間未満勤務の精神障がい者・重度身体障がい者・重度知的障がい者が法定雇用率の算定対象となったことで、週の勤務時間は短いが就労意欲が高く、やる気のある人材を戦力として検討することができます。
これは、ライフステージの変化に伴い出産・子育て、介護・看護のある家族を持つ従業員から要望される声に等しく、従来の「企業に人材が合わせる雇用」から「企業が人材に合わせる雇用」へと変化していくことが、国内企業が課題として抱える生産年齢人口の減少問題を補う「人材確保」にもつながるのではないかと考えます。

○障がい者雇用“初心者”企業こそメリットのある制度

法改正により2026年7月の法定雇用率2.7%の引き上げでは常用雇用労働者37.5人の企業も障がい者の雇用義務対象となります。それに加え中小企業では障がい者の雇用義務があるにも関わらず、雇用数が0人(雇用ゼロ企業)のところが多く存在します。そのような企業の中には「本当は採用したいけれどひとり分の仕事がない」「最初は小さなスタートから始めたい」といった考えのところもあると思います。初めてに近い状態で障がい者の採用を進める場合、なるべく「準備を整え」ながら、「S・S(スモール・スタート)」させることが、十分な職場での理解と負担軽減につながる雇用実績にすることができます。

今回の「週10時間以上20時間未満勤務の0.5カウント算定」制度を企業が活用することにより、

  • 個々の障がいに関する理解のもと任せる業務を増やしていくことが可能
  • 職場の直接担当者に掛かる負担を最小限にできる
  • 障がい者本人の特性や要望に合わせた勤務体制を整えやすい
  • 十分な障がい理解が進んだのちにフルタイム雇用へ段階を進めることが考えられる

というようなメリットが考えられます。

○短時間雇用をゴールとされてしまうことに懸念


「週10時間以上20時間未満勤務」制度による障がい者の雇用は、企業の状況と当該障がい者の希望がマッチしたときに効果があると考えます。一般的な雇用をイメージしていただけると分かりやすいのですが、勤続年数に伴って身につけられる担当業務への習熟度や成長に合わせて雇用の待遇が変わります。
今回の短時間勤務により雇用される障がい者も勤続年数や成長に合わせて、本人への勤務時間の変更(20時間以上)の確認を実施した上で要望に応じて企業側が真摯が対応を行なってもらいたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム