ニューノーマルな時代にはリモートのよる障がい者雇用を進めたい理由(前編)

2020年、世界中に蔓延した新型コロナウイルスをきっかけに、これまであまり耳にしてこなかった言葉や新しいワード・文化がこの1年で我々の日常に浸透し、普段の生活が大きく変化することになりました。例えば、「3密」「ソーシャルディスタンス」「クラスター」といった言葉。これらが、メディアやネットを通じて日々得られる情報として目にしない日はないでしょう。

「ニューノーマル(「New(新しい)」と「Normal(標準・正常)」)」という言葉もそのひとつです。これまでは当たり前だと思っていたことが、時代や環境、発明などが原因で新しい生活様式やはたらき方が生まれ、それらを受け入れていくことを指しています。
少し前であれば、「インターネット」がそれにあたります。今では「インターネット」は我々の生活のあらゆる場面で不可欠な存在となり、それまでの標準から世界を一変させた「ニューノーマル」の代表だと言えます。

「インターネット」との大きな違いは、今回の新型コロナウイルスは我々が望んでいなかった世の中に変えた存在だということです。
しかしながら、悲観的なことに終始しているばかりではなく、我々に求められているのは、そのような世の中であっても生きていくために必要な新しい生活様式を作り上げて、実行していくことだと思います。また、国や自治体にも法律の改正や補助金・助成金などの制度により日常の暮らしや経済をサポートしてほしいと思います。

「はたらく」という場面も同様です。代表的なものを挙げるとするならば「テレワーク勤務」ではないでしょうか。
ご存知の通り、新型コロナウイルスの感染リスクを低減させる方法のひとつは人と人の接触機会を減らすことだと言われています。そのため、会社に出勤せずにはたらく形態として「テレワーク勤務」に注目が集まり、大企業を中心に導入が進みました。「テレワーク勤務」を経験している方々の感想は、これまでのイメージから、概ねが「はたらくことができる」というものに変わりました。
もちろん、すべての企業や業種で「テレワーク勤務」を導入することは困難ではありますが、多くの方がメリットを感じることができたと思います。そういう意味では「テレワーク勤務」は、これまでであれば本格的な導入はまだまだ先の話という印象を持っていましたが、新型コロナによる「ニューノーマル」な時代になった今であればはたらき方として十分な選択肢のひとつになったと感じる経営者や人事担当者も少なくなかったのではないでしょうか。

また、このような変化は従来からある会社の価値にも大きく影響を与えているようです。
〇パソナグループ:本社機能の一部を東京本社から淡路島へ移転(2020年)
〇電通グループ:東京汐留の本社ビルを売却予定(2021年)
〇富士通株式会社:「テレワーク勤務」を多様化。配属地以外の遠隔勤務を認め、単身赴任の解消など(2021年)

このことは、障がい者の雇用にも影響を与え、はたらく選択肢が増えたと言えるでしょう。
障がい者をテレワークで雇用することに対しては様々な意見があります。例えば、特例子会社の場合であっても、「障がい者を他の従業員と分けて雇用する会社ではないのか」というような批判の声が聞こえてくることもあります。当然のことですが、「100%の解決策」ではなく、あくまでもひとつの選択肢であり、それぞれにとっての最良を選べば良いわけです。テレワークであっても障がい者の採用時に受給できる助成金もあります。※要確認

それでは「テレワーク勤務」により採用する企業側とはたらく障がい者の双方にとって得られるメリットとポイントについてお話しますので、障がい者の雇用義務のある企業の人事担当者の参考になればと思います。

企業側メリット

〇採用競争が少ない

新型コロナウイルスによる影響は企業の求人・採用活動にも及んでいます。
障がい者の求人募集の件数もコロナ禍前より減少傾向にはありますが、想定していた以上に雇用義務のある企業は障がい者の採用を控えていないという印象を受けます。また、就労移行支援事業所のような支援福祉サービスも実習や雇用を検討している企業を探していますので、例えば法定雇用率が未達成で納付金(罰金)を支払っている企業であれば、近くの事業所に相談してみてはどうでしょうか

これまで、特に都心部での障がい者の採用は企業間の競争が激しく、東京の一部地域では就労移行支援事業所からの人材の紹介が追い付いていない状況が見られ、横浜などの周辺地域にある就労系支援福祉サービスが人材の紹介に対応しています。
一方で、地方在住の障がい者を採用の対象として見ることが難しかったために、早期から地方在住者をターゲットにした採用活動を行っていた企業にとってはたくさんの候補者から最適な人材を雇用することができています。都心部での採用活動に比べて競争が低いことが理由です。

しかしコロナ禍となった現在、「テレワーク勤務」が浸透してきたために障がい者の採用条件にも「テレワーク勤務」が記載されている求人情報が増えてきました。当然ですが、今後もその数は増加することが十分に考えられます。

〇通勤によるリスク(危険、事故)を回避

障がいの有無に限ったことではなく、移動には多少の危険があると日頃から感じています。都心部であれば、朝の通勤時間帯に人の移動が集中するため頻繁にトラブルが発生します。(東京都内では1日当たり約300万人が移動)

例えば、下記のようなことが想定されます。

  • 下肢障がい:多くの人が行きかう列車ホームや通路でぶつかるなどの事故。
  • 聴覚障がい:緊急のアナウンスや事故などの情報が得られにくい。
  • メンタル疾患:窮屈な車内、多くの乗降客との接触による心的負担。
  • 発達障がい:周囲の音やニオイに反応してしまいストレス過多(感覚過敏) など

また、そのような負担・負荷の掛かる通勤ラッシュは、出社後の業務成果への影響も大きくなると感じている人事担当者も多いと思います。
その点、「テレワーク勤務」の場合、自宅やサテライトではたらくことができる会社であれば、上記のようなリスクから人材を守り、仕事での成果にも良い効果を得ることができます。

後半へ続きます。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム