【Q&A】「障がい者が辞めない採用面接で注意すると良い3つのポイント

【Q】
私は昨年の4月から人事部に配属され、これから障がい者の求人・採用活動を始めることになりました。
当社の現状は、障がい者手帳を持った従業員が数名いますが、当社ではたらくようになってから病気や疾患が原因で手帳を取得した方ばかりのため、今回初めて求人を出すことになりました。
障がい者は採用してから職場に定着してもらうことが難しいと聞きます。長くはたらいてもらいたいと思っていますので、障がい者と面接で注意すれば良い点等、アドバイスをお願いします。
《食品メーカー、従業員数約300名、人事担当者》

【A】

ご相談ありがとうございます。
新たに障がい者を採用する際の面接は両者を知る大切な機会のひとつです。
採用側にとっては履歴書を含めたプロフィール書類だけでは分からない障がいの特性や本人から伝わってくる就職への意欲などを知る場面。障がい者にとっても面接官を通してどのような組織なのかを感じ、障がい者に対する理解度がどの程度なのかを計る貴重な経験となります。障がい者の採用面接では「障がいのことなどどこまで聞けばいいのか」「差別やハラスメントにならないか」という具合に、これから本格的に取り組む側にとっては戸惑うことも多いと感じます。
そこで今回は障がい者採用に向けた面接でここを注意して聞いておけば、離職率を抑えた雇用が実現できるポイントをお伝えしようと思います。

※最後に私が企業の障がい者採用面接に同席する際に使用する「ヒアリングシート」を参考資料として添付しています。

遠慮せずに聞く

最近では、新型コロナウイルスの影響もあり、リモートで面接を実施する企業も増えてきました。
採用の面接は、エントリーされた方のこれまでの経験を通して感じたことやこれからチャレンジしたい目標など、人となりを通して自社で活躍してもらえる人材かどうかといった“人を知る”ための接点の場です。
障がい者採用の面接の場合、

  • 障がい特性
  • 体の状態
  • できることと苦手なこと

のようなプライバシーに関わる部分の質問も必要になってきます。
これは、仮にご縁があって雇用することになった際、「その方の障がい特性に適した配慮や支援が提供できる組織なのかを確認しておくこと」がその後の定着に大きく影響してきます。
特に面接のタイミングというのは、両者が「採用したい」「ここではたらきたい」という意識が強くなる場面ですから、遠慮せずに聞くようにしましょう。

支援環境を聞く


年々障がい者への理解が進み、社会的な活動のひとつとして障がい者雇用に力を注ぐ企業も増えてきたように感じます。それに伴い、これまでの求人相談窓口としてはハローワークや障がい者特化型の人材会社の活用が多かった中、最近では就労移行支援事業所などの「就労系障がい福祉サービス」から採用するケースが多くなっています。

【参考】厚生労働省「障がい者の就労支援対策の状況」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html

これは、近年増加傾向にある精神障がい者・発達障がい者など、より専門性ある障がい理解が求められる職場において外部の支援機関との積極的関わりが重要であるという認識が広まった理由のひとつだと思います。
裏を返せば、仮に精神障がい者・発達障がい者の人材を採用する際に「就労系障がい福祉サービス」を利用しているかどうかというのは、採用後の職場定着の実現に大きく影響してくると考えます。

また、定期通院している医療機関・主治医との信頼関係もしっかりと結べている人材は採用側にとっても安心材料となります。
安定したプライベートな環境も心身の健康状態維持には欠かせない部分になります。ご家族が就職に対して応援する姿勢、本人の自立を後押ししてくれる環境であることが望ましい状態と言えます。

心身の状態を聞く


ひとは面接に挑むときというのは体調も準備も万全にします。障がい者採用の場合、面接での印象で判断するだけでなく、ここ最近の「体の調子」「生活リズム」といった雇用してから継続して安定状態を維持してもらうことをイメージし、長い目で見たときの状態も聞くようにします。
障がいの有無に関わらず心身の状態には波があります。体調にも症状が見られる程度に気分の落ち込みが見られるときに自分の状態を理解して、回復に努める工夫を取ったり、状態が悪くなる前に対処ができる人材は頼もしいと感じます。
対処例:週末も平日と同じ時間に起床・就寝するようにしている。
その日の自分の体調を記録している。(良い状態・悪い状態を比較)

ストレスを感じる場面や症状も個人差があります。特に精神障がい者・発達障がい者の中には日常によくある場面がストレスと認知してしまい、それが心身の状態に悪い影響を与えてしまう人も少なくありません。心身の状態の時と同じく、自分で対処する方法や工夫を身に着けているかが大きなポイントです。
日常の対処法を通して職場に求める配慮・支援として面接で伝えられる人材というのは、障がい特性による自己理解の深さと状態安定に対する意識の強い方だと判断します。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム