人事担当者は自社が取り組む障がい者の新規採用や雇用継続を後押ししてくれる法律や助成制度があることをご存知だと思います。その時に置かれた状況によって活用できるものとそうでないものがありますが、知っておいて損はありません。また、助成制度は中小企業にとっては特に活用メリットが高くなっています。
現在、新型コロナウイルスが経済活動や社会に大きな影響を与えている状況下でも、障がい者の求人・採用活動をおこなう企業の負担を少しでも軽減させるための制度変更がありましたので、ここでご紹介したいと思います。
1,障がい者のテレワーク雇用を推進!「障がい者トライアル雇用制度」を拡充
従来の「障がい者トライアル雇用制度(障がい者トライアルコース)」は、障がい者を原則3ヶ月間(精神障がい者は最大12ヶ月間)試行的に雇用することで、本人の適性や能力を見極め、継続雇用への移行を目的とした制度になります。
今回の新型コロナウイルスにより障がい者のはたらき方にもテレワークを推進させようという考えから、「障がい者トライアル雇用制度」の一部を拡充することになりました。
障がい者の中には、その特性が原因で通勤が困難であったり状態の安定を図るために在宅での勤務を希望する人など、テレワークの方が仕事で能力を発揮できるという方たちがいます。
最近は都心部の企業が出す障がい者求人で、テレワーク雇用を含めるものが目立ってきてるため、これまで企業の数が少なく就職につながりにくかった地方在住の障がい者にとっては選択肢が広がる可能性が出てきました。就労系障がい福祉サービスの支援者も情報を広く取っていただくと良いかもしれません。
【変更内容】
①テレワーク勤務による雇用の場合、原則3ヶ月間のトライアル雇用期間を最長6ヶ月まで延長が可能。
※精神障がい者は従来からトライアル雇用期間が最大12ヶ月間のため拡充による変更はありません。
②「テレワークによる勤務」とは、対象労働者の1週間の所定労働時間の2分の1以上、情報通信技術を活用して勤務していること。
※在宅またはサテライトオフィスで勤務を行うものに限ります。
③支給額の変更および期間延長分の支給はありません。
- 身体障がい者・知的障がい者を雇用する場合:月額最大4万円×最大3ヶ月
※テレワークによる勤務を行う者で3ヶ月を超えて障がい者トライアル雇用をする場合も、当該3ヶ月を超えた期間は支給対象期間となりません。
- 精神障がい者を雇用する場合:月額最大8万円(最大8万円×3ヶ月、その後4万円×3ヶ月)
※支給申請期間は、トライアル雇用期間が3ヶ月以下の場合は、トライアル雇用期間が終了した日、トライアル雇用期間が3ヶ月より長い場合は、トライアル雇用を開始してから3か月経過後又はトライアル雇用期間が終了した日から2ヶ月以内。
2,「特定求職者雇用開発助成金」の支給額を減額しない特例を実施
本来、特定求職者雇用開発助成金(障がい者初回雇用コースを除く)の対象となる労働者の実労働時間が一定の基準を下回った際、支給額が減額されることになっていました。今回の新型コロナウイルス感染症の影響が原因となる場合、「天災等やむを得ない理由がある場合」に該当するとして、減額を行わない特例を実施することになりました。(※令和2年1月24日以降に実労働時間が減少した場合を対象)
【変更内容】
①既に「特定求職者雇用開発助成金」が減額支給されている企業
→ 労働局にて差額分をお支払いします。
※ 労働局より休業等の理由についてお伺いする場合がございます。
②「特定求職者雇用開発助成金」が減額されることを見越して他の助成金を受給していたが、本特例の実施により既に受給している他の助成金から「特定求職者雇用開発助成金」に変更を希望する企業
→ 令和3年1月4日~3月31日までの間に、「特定求職者雇用開発助成金」を申請してください。その際、支給済の助成金を回収することについての同意書、実労働時間の減少が新型コロナウイルス感染症の影響であることについての疎明書を添付してください。
③これから助成金を申請する企業
→ 本特例を踏まえ、希望される助成金を申請ください。
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000678942.pdf
※上記「疎明書」の掲載例も添付されています。
3,「障がい者雇用安定助成金(障がい者職場適応援助コース)」の特例措置を実施
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、訪問型職場適応援助者、企業在籍型職場適応援助者が支援を実施する場合に、以下のとおり特例措置を実施します。
①ICT技術を活用した遠隔による支援の実施
新型コロナウイルス感染症の影響のために従来の対面による支援が困難である場合、ICT機器(※)を活用し、リモートなどの遠隔で支援を実施した場合に支給対象とします。
※支給対象として認められるICT機器というのは、Zoomなどの顔や声、動作が確認できるツールになります。
- 新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の解除後も当分の間は本特例を適用。
- 対面による支援が困難でない場合は、対面による支援のみが支給対象となりますのでご注意ください。
②支援計画の変更手続きの簡素化
新型コロナウイルス感染症の影響により支援計画に沿った支援ができずに支援内容を変更する場合、地域障がい者職業センターに対して支援計画書の変更手続きを行う必要があります。事前に地域障がい者職業センターと相談・協議し、了承を得ていれば、了承を得た日より変更されたものとみなします。
- 事前の相談・協議はメールやFAXなど、後日地域障がい者職業センターの了承日が確認できる方法による必要があります。
- 支給申請時には、地域障がい者職業センターの承認印が押印された変更後の支援計画書の提出が必要です。
- 新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の解除後も当分の間は本特例を適用します。
③職場適応援助者養成研修受講料助成に関する特例
新型コロナウイルス感染症の影響のために、研修終了後早期に支援を行うことができない場合を考慮し、緊急事態宣言の末日の翌日から6ヶ月以内に初めての支援を行った場合は、研修終了日から6ヶ月以内に初めての支援をおこなったことと同様とします。
- 研修修了日が令和元年8月1日から緊急事態宣言の末日までの研修が対象。
④「担当者等の印/サイン方法」の簡素化 <訪問型のみ>
事業所を訪問せずに支援を行った場合の支援対象労働者名簿(様式第9号)の「担当者等の印/サイン欄」について、新型コロナウイルス感染症の影響のために事業所による印又はサインを支援当日に行うことが困難なときは、後日、事業所を訪問した際や郵送により、印またはサインをもらうこと、支給申請時に事業所担当者が印またはサインした様式第9号をPDF化し、印刷したものを添付書類として提出することも可とします。
- 事業所を訪問せずに支援を行う場合であっても、支援日の調整や支援内容の報告、雇用管理上の助言は事業所に対して行う必要があります。
- 新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の解除後も当分の間は本特例を適用します。
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000630729.pdf
上記のいずれも、地域管轄のハローワークに確認をしてください。